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【ギャグ満載の本格推理】瀬川歩の事件簿  作者: 瀬川歩
【解決編】鳥籠の姫君
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第18話 事件の真相

「御堂春香――君は権蔵氏の殺人計画を乗っとったんだ。

君のしたことは唯一つ。

それは……、毒をすり替えたことだ」


ついに翔子は春香の犯行に焦点を当てる。


「偶然聞いたのかはわからないが、

権蔵氏と山本さんの計画を知っていた君は、

権蔵氏が持つ鳥籠ウイルスの入ったスポイトを

農薬の入ったスポイトにすり替えることにより、

間接的に権蔵氏を殺害したんだ」


翔子の追求に、春香はしばし無言で翔子を見つめる。


そして、犯人と指摘されたものの義務として、反論を試みる。


「何を言っているんですか、翔子さん。

鳥籠ウイルスの入ったスポイトを取り替えることなんて、

私にはできません。


スポイトと一口に言っても、

形は千差万別です。


父が犯行に使用するはずだったスポイトの種類と型、

さらに保管場所がわからない私には

スポイトを取り替えるなんてことは不可能ですよ」


「それはわかっている。

君にスポイトを取り替えることを不可能だ」


「じゃあ……」


「だから、君は――山本さんを共犯者に抱え込んだんだ」


「山本さんを……、

山本さんは父の共犯者ではなかったのですか?」


「彼の立場こそ、この事件における特異点だ。


彼は、権蔵氏が弟達を殺害する共犯者であると同時に、

君が父親を殺害する共犯者でもあった。

彼はいわば、二重共犯者だったんだ」


「二重共犯者……、

今まで多くの推理小説を読みましたが、

初めて聞く単語ですね」


春香は感心するように口にする。


「私も初めて言ったよ。

見事だ、春香。君が演出した事件は実に出来がいい。

御堂家の内情を知らなければ、

私も騙されていたかもしれない程にね」


対決の最中にも関わらず、

一瞬だけ、二人は何かを誇るように笑い合う。


しかし、すぐに真剣な表情に戻り、対決を再開した。


「確かに、山本さんならスポイトを取り替えることは簡単ですね。


鳥籠ウイルスの入ったスポイトの種類も保管場所もご存知でしょう。


それにしても、翔子さんの言う通りだとしたら、

何故山本さんは父を裏切り、

私の味方になったのですか?」


「山本さんは君を娘のように想っていた。


君の人生を少しでも幸せなものにするために、

これまで必死の想いで鳥籠病を研究していた。


君はその想いを利用したんだ。


『自分の言う通りにしなければ、自殺する』とでも

彼に宣言したのだろう。


そもそも、彼と権蔵氏は

君の病気の研究費を捻出するために

他の相続人の殺害を計画した。


計画を完遂しても、

君が死ねば、そもそもの計画自体が無駄になる。


君の死だけは山本さんは何としてでも避けたかったはずだ。


だからこそ、自らの命を楯にした要求を

彼は拒むことが出来なかった」


「確かに、そう言えば間違いなく山本さんは

私の味方になってくれるでしょうね。


それに、私を生かすことは

父の想いを叶えることにもなる。


たとえ父が死のうとも、

父のためにも私の脅迫を受け入れるしか、

山本さんには選択肢がなかったでしょう」


ここにきて、ようやく攻守が交代する。


これまでは翔子が春香を責めるように

彼女の犯行を立証しようとしたが、

今度は春香が翔子に反撃を試みる。


「翔子さん、確かにあなたの意見は筋が通っています。


祖父が亡くなってから父の奇妙な体調の崩し方、

不自然な茶会の開催と父の行動、

これらを論理的に説明しようとするためには、

あなたの推理に従う他はないでしょう。


――ただ、私が犯人であり

、毒のすり替えの首謀者であるということの立証は

まだ不充分です。


山本さんが単独で父を裏切り殺害した、

その可能性もあるのではありませんか。


私が山本さんの共犯者であることを示すもの

――証拠を提示してもらえませんか?」


自らが犯行に関わっている証拠の要求、

これこそが春香の切り札だった。


そんなものあるはずがない。


春香は微笑を浮かべるだけだったが、

内心は自信に溢れていた。


「それが――あるんだよ、春香。


君が権蔵氏殺害の共犯者であることを示す証拠がね。


そして、それを今、私は持っている」


「えっ……」

本小説は毎日22時に更新する予定です。

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