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【ギャグ満載の本格推理】瀬川歩の事件簿  作者: 瀬川歩
【解決編】鳥籠の姫君
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第15話 誰が毒を盛ったのか

「まずは、事件の整理をしよう。


四十日程前、御堂権蔵氏を始めとする、

御堂家一族に殺害を仄めかす脅迫状が送付された。


その一週間後、権蔵氏に雇われて、

私はこの屋敷にやってきた。


そして、一ヶ月後、

つまり今から十日前に御堂一族がこの屋敷に集まり、

先代当主の遺産の分割方法について、

話し合いが行われた。


出席者は現当主である権蔵氏に加え、

権蔵氏の三人の兄弟。


話し合いは午後五時に終わり、

午後六時から晩餐会が開催された。


晩餐会には相続会議に出席していた御堂兄弟に加え、

君も参加した。


晩餐会は午後九時頃終わり、

私は晩餐会終了後に、

体調の優れない君を部屋に送った」


これまでは事件の概要を整理しているに過ぎないので、

犯人と指摘された春香も口を挟まずに静かに聞いている。


「私が晩餐会の会場である食事室を離れた直後、

権蔵氏によって茶会が開催された。


そして、権蔵氏は毒の入った紅茶を飲み息絶えた。


警察の捜査によれば、

権蔵氏の殺害に利用された毒は農薬。


毒は紅茶が入っていたポットから検出された。


つまり、何者かがポットの紅茶に毒物を混入し、

ポットから注がれた紅茶を飲んだために、

権蔵氏は亡くなった。


ここまで反論はないね?」


「ええ、続きをどうぞ」


「ポットに毒を入れる機会があった人間は二人、

一人は調理室でポットに紅茶を注いだ給仕係の近藤さん。


そして、もう一人はポットを調理室から

食事室に自ら運んだ被害者の権蔵氏。


死んだ権蔵氏がポットに毒を入れたとは考えられず、

警察は近藤さんを逮捕し、現在も勾留されている」


「近藤さんには父を恨む所以があったと

警察の方から聞きました。


何でも、祖父が昔営んでいた貸金業の取り立てが原因で

近藤さんのお父様が自殺したと」


「そう、そして犯行に使用された農薬は

屋敷に保管されているものと同じだった。


つまり、近藤さんには犯行動機、犯行機会、

犯行手段の全てが揃っていた。


警察が彼女を逮捕したのは至極妥当だろう」


「しかし……、翔子さんはそのことに疑問をもった。

近藤さんが父を殺したわけがないと」


「そうだ、そして私は犯人は君だと思っている。

今からその理由を説明しよう」


そして、いよいよ翔子は自分が感じた、

事件の不可解な点を口にする。


「権蔵氏の死に関して、

私が第一に奇妙に思ったことは、

そもそも何故あの茶会が開催されたのかということだ。


晩餐会当日、私は毒殺を最も警戒し

キッチンで調理過程を見張っていた。


毒殺ならば、御堂一族を同時に殺害することが可能だからだ。


そのことは権蔵氏にも何度も忠告をしていた。


そして、つつがなく晩餐会が終了し、

君を部屋に送る直前も私は権蔵氏に

『くれぐれも軽はずみな行動をとりませんように』と

忠告してから食事室を去った。


それにもかかわらず、権蔵氏は自ら茶会を開催し、

軽はずみにも毒が混入された紅茶を口にした。


何故、彼は私の警告を無視したのか、

私の疑問はここから始まった」


「きっと紅茶に毒が入っているわけがないと

高をくくっていたのでしょう」


「その可能性もある。

だが、私は別の可能性もあると思っている」


「別の可能性? 一体何のことでしょうか?」


春香は惚けた口調で翔子に問う。


「毒を混入したのが権蔵氏本人だった場合さ。

つまり、権蔵氏は紅茶に毒が入っていることを

知っていながら口にした」


「まあ!つまり父の死は自殺だったということですか?」


春香がわざとらしく口を開けて驚く。


「そうではない。

権蔵氏に自殺する動機がない以上、

それはあり得ないだろう。


権蔵氏は君を守るために

今後も生きる必要があるのだから」


「……それでは、翔子さんの言うとおり、

ポットに毒を混入したのが父だとして、

どうして父は毒の入った紅茶を飲んだのですか?」


「――権蔵氏がポットに毒を混入した理由、

それこそがこの事件を紐解く鍵となる。

その理由は――」


ついに、翔子は事件の核心に触れる。


「毒殺を実行しようとしたのは権蔵氏本人だったからさ」


「……」


翔子の、関係者なら誰でも衝撃を受けるような発言に、

春香は驚く様子もなく、口をつぐむ。

本小説は毎日22時に更新する予定です。

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