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【ギャグ満載の本格推理】瀬川歩の事件簿  作者: 瀬川歩
【問題編】鳥籠の姫君
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第12話 関係者の証言(前編)

~被害者の弟 御堂章吾の証言(その他の兄弟と同旨)~

晩餐会が終わった後、

兄さんが親睦を深めるために茶会を開催しようと

突然言い出しました。


私達兄弟は驚きましたよ。


兄弟とはいえ、今は相続争いの真っ只中ですからね。


それが親睦を深めようだなんて……、

信じられるわけがありません。


ただ、兄さんの提案を断ることも出来なかったので、

兄弟は皆茶会に参加することにしました。


紅茶が届けられるのを待っていると、

兄さんが自らポットを持ってくると言い、

調理室に向かいました。


少しして、兄さんが調理室からポットを持ってきて、

給仕係の方はトレイに紅茶のコップを載せて運んできました。


そして、給仕係の方が私達の前にカップを置き、

兄さんが一人一人のカップに紅茶を注いだのです。


そして、最後に自分のカップに紅茶を注ぎ、

ポットをダイニングテーブルの中央に置きました。


兄さんの簡単な挨拶の後、

茶会が始まりましたが、

参加者の私達兄弟は誰一人として、

紅茶に口を付けようとしませんでした。


そりゃそうでしょう? 兄さんの行動は怪しすぎます。


そして、脅迫状が我々の家に届いている。


紅茶に毒が入っているんじゃないのかと、

一族の誰もが疑っていました。


そんな様子を見かねた兄さんが、

『おいおい、もしや、私が紅茶に毒を入れたと疑っているんじゃないだろうね。

わかった。それなら私が最初に一口目を飲もうではないか。

もし、ポットに毒が入っていたのなら、

最後に紅茶を注がれた私は間違いなく死ぬだろう。

毒見を兼ね、私が最初に飲むことで、

この紅茶に毒が含まれていないことを証明しようではないか』と、

言いました。


そして、兄さんは紅茶を仰ぎ、倒れました。


私達兄弟は唖然とするばかりです。


突然開催された茶会に、兄さんの不審な気配り、

大げさな前口上、不謹慎かもしれませんが

――なんだこの茶番は……、

というのが私達兄弟の感想です



~使用人 近藤陽子の証言~

私は半年前から御堂家の屋敷で仕えています。


それまでは小さな料亭で女将として働いていたのですが、

経営が苦しくなり、店を閉めることになりました。


そんな時、当時たまに店に来られていた旦那様から誘いを受け、

この御堂家で使用人として働くことになりました。


御堂家では給仕係を担当しており、

日々の食事は私が作っています。


晩餐会で調理を担当していた私は、

晩餐会が閉会し、仕事が終わったので、

調理室を片付けていました。


片付けている最中、旦那様の命を受けた、使用人の一人に

紅茶を沸かすように言われました。


突然の命令に少し驚きましたが、

言われた通り、私はお鍋でお湯を沸かし始め、

沸騰したところに茶葉を入れて煮出しました。


御堂家では紅茶を入れる際はいつもそうしています。


茶葉は特に指示がなかったので、

アッサムを使いました。


アッサム紅茶はストレートでもミルクを入れても

美味しく頂けます。


旦那様のご兄弟の好みの飲み方がわからないので、

癖がないアッサム紅茶を選択しました。


そして、紅茶をお鍋から、

白い陶器のポットに移したところで、

旦那様が調理室に入って来られました。


そして、ポットをご自分で食事室までお運びになると仰るので、

私はカップ、ミルク、砂糖をトレイに載せ、

旦那様に付いて食事室へ参りました。


その後、旦那様はご自分でポットから

ご兄弟の方々のカップに紅茶を注がれました。


毒がポットの紅茶の中から検出されたと聞いて、驚きました。


――信じてもらえないかもしれませんが、

私がポットに毒を入れたのではありません。


確かに、ポットに触れることができたのは、

私と旦那様だけなのは間違いありません。


他の人にはポットに近付く機会すらなかったでしょう。


しかし、私は旦那様を殺していません。」



~探偵 飛鳥翔子の証言~

私は死んだ御堂権蔵氏のボディーガードとして雇われ、

一ヶ月前から屋敷に滞在していました。


自分の役割を果たすために、

晩餐会当日も権蔵氏の身の回りを警戒し、

不審な行動を取る人物はいないか注意していました。


晩餐会では、何者かが料理に毒を仕込む可能性を警戒し、

私は常に調理室に待機していました。


料理を食事室に運ぶ時は必ず二人以上で運ぶように指示し、

食事室にも常に二人以上を配置するようにしました。


つつがなく晩餐会が終了した直後、私は権蔵氏に呼ばれ、

『娘の春香の体調が悪いので部屋まで送り、

その後は春香が落ち着くまで付き添うように言われました。


私はボディーガードとして、

権蔵氏の側を離れることに抵抗を感じましたが、

晩餐会終了後の予定は特に聞かされていなかったので、

解散するものと思い込み、

気が緩んでいたかもしれません。


念のため、食事室を辞す時に、

権蔵氏に小声で、『くれぐれも軽はずみな行動を取らぬように』と進言しました。


そして、私は春香とともに食事室を去り、

権蔵氏が亡くなるまで春香と部屋にいました。


そして、悲鳴を聞き、

急いで食事室に駆け付け、

権蔵氏の死体を目にしました。


――茶会が開催されたと聞いた時は驚きました。


脅迫状が届いて以来、

私は権蔵氏に毒殺を警戒するように

常々申し上げておりました。


晩餐会の会場を去る時の忠告でも

そのことを言い含めたつもりです。


しかし、実際には茶会が開催され、

権蔵氏は――迂闊にも紅茶を飲み、毒殺された。


権蔵氏が私の警告を無視して、

何故茶会を開催したのか、

今でも不思議でなりません。

本小説は毎日22時に更新する予定です。

少しでも気に入って頂けたら感想・レビュー頂けますと嬉しいです。

皆様のお声が励みになります! よろしくお願いします!

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