超ショートコメディ 隣の席の田中君(後編)
すみません、昨日22時に投稿予定でしたが、設定ミスで投稿できていませんでした。
超ショートコメディ 隣の席の田中君(前編)の続きはこちらです。お楽しみください。
※前編を未読の方は、ぜひ前編を先にお読みください。
▼超ショートコメディ 隣の席の田中君(前編)
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珠姫「えっと……どこからだっけ?」
歩「英語の授業に田中君がうっかり魔導書を読んでしまい、古代の悪魔を召喚するところからだよ」
珠姫「そうだったわね、ちなみに、歩、これは何小説?」
歩「推理小説の番外編のショートコメディだよ」
桂「ああ、決して異世界ものじゃないぜ」
珠姫「そうよね……たまにやる番外編もあくまでも現実の笑いだもんね。安心したわ。どうせ何も起きないんでしょ?」
歩/桂「……」
珠姫「何か言ってよ!?」
歩「まぁ、とにかく続けるね」
歩「田中君が英語の教科書と間違え、魔導書を読んだ直後、突然空間が割れ、異界から悪魔が現れた」
珠姫「いやめちゃめちゃ悪魔出てきてる!!」
桜「その場にいた人間は凍りついた。さっきまで英語の授業を受けていたはずなのに、黒板の前には英語の先生ではなく、悪魔が立っていたのだから」
歩「一部の生徒は目の前の事態についていけてなかった。『あれ? 英語の先生の皮膚って紫だったっけ。それに肌がゴツゴツしてる。体調でも悪いのかな……』と心配していたぐらいだった」
珠姫「ついていけないにもほどがある……」
桂「田中君の次の席は横山だった。横山の心配は目の前の悪魔にはなかった。ただ、英語の問題を田中の次に自分が当てられることを恐れていた。実際に席順で当てられるなら、次は横山が当たる可能性が高かった」
珠姫「悪魔よりもそっちが心配!? どんだけ英語に自信がないのよ……」
歩「クラス全員が驚愕するなか、英語の担任の澤田だけは意識をすぐに取り戻し、勇気を振り絞り、悪魔に問うた。『あの……保護者の方ですか……?』」
珠姫「誰の保護者と思ったのよ……。めちゃめちゃ気が動転してるじゃない」
歩「悪魔はその愚かな問いに答えた。『我ハ保護者デハナイ。破壊神ダ』と」
珠姫「あら、中身はともかく返事してくれたのね……」
桂「悪魔は続けて話した。『我ヲ召喚セ人物ハ貴様カ』と田中に聞いた」
歩「だが、田中君もどうやら悪魔を召喚したのは初めてで慌てていた。だから、こう言ってしまった。『僕ではありません。隣の横山君です』と……」
珠姫「田中君の責任転嫁力すごいわね! 横山君かわいそう……」
桂「名前を出された横山はようやく何が起こってるか気がついた。そして自分の目の前にいるのは本物の悪魔だと。だが、横山は機転を利かせ、こう答えた。『私ではありません。隣の山田君です』と……」
珠姫「いや横山の答え!!!」
歩「山田君も隣の生徒が召喚したと言い張り、その後、どんどん悪魔はたらい回しになり、クラス全員が当たり、その度パスし、ついに3周した」
珠姫「あんたらのクラスすごいわね……。誰一人身を挺して仲間を守ろうとしない……」
歩「悪魔もこの異様な事態にしびれを切らした。そしてこう言った……『モウ帰ルワ……
ソンナ適当二召喚サレタラタマランデ』と……」
珠姫「帰っちゃった!!!」
歩「その後、僕らは授業に戻った」
桂「結局、横山は当てられて答えられなかった」
珠姫「横山……」
歩「ということが今日あったんだ」
桂「なかなか刺激的な一日だったぜ」
珠姫「あっそ……、つっこみ過ぎて疲れたわ。ーー翔子、聞いてたんならあんたも何か言いなさい」
歩「翔子、いたんだ」
桂「隅っこで、ずっと本を読んでないでこっち来いよ。お前には昨日あった『クラスメイトの父親が竜騎士に転職し、子供も勧誘されている』話を聞かせてやるぜ」
珠姫「あんたのクラス濃いわね……」
翔子は重たい口を開いた。
翔子「君たちは相変わらず暇そうだな。私は予定があるので失礼するよ」
歩「帰っちゃった。翔子はちゃんと毎日部室に来て、無言で1時間ぐらい本を読んだら帰るね。何をしにてるんだろう……」
珠姫「いいのよ、あの子はあれで。私と約束してるのよ。できる限り毎日部室に来て同じ時間を過ごすって」
歩「よくそんな約束を翔子とできたね」
珠姫「まぁ、強引に取り付けたんだけどね。翔子は私との約束なんて簡単に破れるのに、律儀に守ってるのよ。本当に嫌なら来ないわ。翔子は気づいていないかもしれないけど、きっとあの子にとって、ここにただ座って、私達のしょうもない話を聞く時間は必要なのよ」
桂「だといいな。俺はいつか翔子を笑わせてみせるぜ……。俺の力で……。歩、これから漫才の特訓だ!!!」
歩「いいよ! やるぞ~、お~!」
珠姫「こいつら全然将棋しないわね……」