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第76話

 今日は夜からの撮影だ。DNAの鑑定結果が出たとの事で、夕方、シュウがマンションへやってきた。そらには早めの風呂に入って貰い、大人三人で顔を付き合わせる。


「鑑定だけど、0%って判定はほぼ無い。同時に、100%も無い。それを踏まえて、結果を見てくれ。」

「わかった。」


シュウから封筒を渡して貰い、ドキドキしながら開封する。取り出した書類を広げて、目を走らせた。


《親子の可能性……5%》


「これって……」

「あぁ、ほぼ間違いなく、赤の他人だろう。」

「そっか……」


ホッとひと安心すると同時に、そらの事が心配になってくる。


「そらはどうするか?親が見つからないし、警察へ通報して、児童相談所に預かって貰うか?」


それも一つの手か……赤の他人とわかった以上、百合ちゃんに迷惑を掛ける訳にはいかない……


そう考えていると、百合ちゃんがおずおずと口を開いた。


「あの……もう少し待ってみない?」

「百合ちゃん、いいの?」

「まだそらくんの親の手掛かりも見つかって無いし、児童相談所へ連れていくのは、親から事情を聞いた後でもいいかな……」

「そっか……ありがとう。」


正直なところ、そらを再び知らない大人ばかりのところへ連れていくのは、気が引けていた。まったく迎えに来ない親に、俺たちまで見放したら、一生消えない心の傷がつくと思ったからだ。


そこへ、そらが風呂から上がってきた。


「あっ!しゅうがいる!」

「相変わらず生意気なガキだな……」


シュウもそら相手では、苦笑いするしか無いようだ。ふと、そらの側へ行った百合ちゃんが何かに気付いた。


「ふふっ!そらくん、頭にまだ泡が残ってるわよ。」

「えっ?マジ?」

「お風呂場で流してあげるから、もう一回パジャマを脱ごうね。」

「おれ、ひとりでできるっ!」

「いいから、遠慮しないの♪」


百合ちゃんが強引にそらのパジャマに手を伸ばして、脱がせる。その瞬間、その場にいた全員が凍りついた。そらの背中には、無数の傷跡があったからだ。


「そ、それ……」


ガバッ!と百合ちゃんがそらの背中を隠すように、そらを抱き締めた。そらは今にも泣き出しそうな顔をしている。


「そら……その傷、誰にやられた?」

「……」


そらは口を固く閉じて、何も答えようとはしない。そらの側へ行き、目線を合わせるように膝をついて、もう一度尋ねてみる。


「お母さんか?」


今度はぶんぶんと顔を横に振っている。


「お父さんか?」


そらはまたしても、固く口を閉した。


沈黙は肯定……閉ざした口が何よりもそうだと答えているようなもんだ。


「お母さんも、同じ事をされているのか?」


頭を横に振って否定している。


って事は、子供だけか……


「この事は、お母さんは知ってるのか?」


また頭を横に振って答えている。


「どうしてお母さんに言わなかったんだ?」


そらは再び、口を閉ざしてしまった。こんな時に親子関係を告げるのは酷かもしれない。だけど、いつかは伝えないといけない事だ。


「そら……お前と俺は親子じゃぁ無い。」

「えっ?」

「それが証明されたんだ……」

「……」


そらは俯いて、百合ちゃんの肩に顔を埋めた。


「だけどな、お前を守ってやる。お前にそんな事をしたヤツをやっつけてやるから。」


少し迷いながらも、そらは顔を上げて俺を見た。


「ほんとうに?」

「あぁ、約束だ。だから教えてくれないか?お父さんにやられたのか?」

「……いっしょにすんでたおじさん……」

「何で、お母さんに言わなかったんだ?」

「だって……」


そらの目に、じわっと涙が貯まってくる。


「だってぇ、いったらママにもおなじことをするっていうんだもん!」


腑に落ちなかった違和感が、理解出来た。だから、ガラスのコップを割った時、異常なくらい俺に怯えていたんだ……だから、お風呂や着替えは必ず自分でやって、百合ちゃんにも肌を見せなかったんだ……


そらの頭を撫でて、怖がらせないように微笑みかける。


「偉かったな。お前はママを守ってたんだな。」

「……」

「よく頑張ったな。」

「うっ……うぅ……うわ~ん!」


そらは声を上げて、百合ちゃんにしがみつきながら泣き出した。今まで泣きたくても泣けなかったのかもしれない。我慢していた分も取り戻すように、大声を上げて泣き続けた。




 そらから母親の名前を聞き出した後、母親はすぐに見つかった。6年前くらいに遊んでたシュウの連れで、テルってヤツの元カノだ。その時はリンって名乗ってたから、聞き覚えが無かったみたいだ。


鈴子だから、リンか……そういえば酔っ払った勢いで、一回寝た記憶が……


過去の自分を反省しつつ、待ち合わせのカラオケボックスで、シュウと一緒にリンを待つ。百合ちゃんとそらは、違うフロアの部屋でカラオケを楽しんで貰っている。


「シュウ。そらはテルってヤツの子供か?」

「さぁ、彼氏がいながらお前とも寝る母親だし、誰の子供かわからないかもな。」

「それを言われるとキツいものが……」


うっ……シュウに弱味を握られた気分……


「百合さん、子供服を買いに行った時、すげぇ落ち込んでたぞ。」

「やっぱりそっか……俺とそらの前では、まったくそんな素振りを見せなかったけどな……」

「そりゃそうだろ。片付いたら、しっかりとフォローしてやれよ。」

「言われなくてもそうするよ。」


はぁ……反省じゃぁ足りないな……猛省だ……


「そういえば、テルってヤツは今、何してんだ?」

「あいつは丁度6年前に、傷害で捕まったんだ。今は出所して、実家の工務店を継いでる。」

「傷害?」

「あぁ。連れが絡まれて、その応戦に行ってな。相手を半殺しにしたらしい。」

「もし、テルってヤツの子供だとして、テルにそらの存在を知られたらまた……」

「大丈夫だろ。意味なく手を上げるヤツじゃぁね~し。」

「そっか……」


それから暫くして、見覚えのある女が現れた。


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