第25話
「ありがとう……薬が効いてきたかも……」
「ぷぷっ!さっき飲んだばかりじゃん♪そんなにすぐ効果は出ないよ!」
百合ちゃんは、薬を飲んだ事で気分的に落ち着いてきたみたいだ。
「後はゆっくり寝るだけだから……今日は本当にありがとう……」
「じゃ、百合ちゃんが寝たら帰るね!」
「えっ?」
お?焦ってる!焦ってる♪寝顔を見られるって思ってるのかも♪
「だ、だって、鍵をかけないといけないし……」
「ドアに鍵を掛けたら、新聞受けに入れておくよ!」
「でも……」
「でもは無し!病人は遠慮しないの!」
「わ、わかった……」
「じゃ、ゆっくり寝てね♪」
布団を少しだけ捲って、百合ちゃんを寝るように促す。百合ちゃんはおずおずと布団に潜り込んだ。
「よしっ!目を閉じて♪」
「そ、その……そんなにじっと見られると、寝れないかも……」
「そんな可愛い事を言ってると、キスしちゃうよ~♪」
「ごめん……反応も出来ない……」
「そこまでキツいなら、早く寝ないと!」
「う、うん……じゃぁ遠慮無く……」
「おやすみ♪」
「おやすみ……」
百合ちゃんは目を閉じてすぐに、小さな寝息を立て始めた。
身体、かなりキツいんだろうな……もう一枚布団を掛けるか……
静かに立ち上がり、そっと押し入れを開ける。
「……って、何も無いじゃん!」
襖を開けたまま、固まった。
布団どころか、毛布も無い……服が少しと掃除機があるだけだ。
「マジでどうしよう……」
百合ちゃんは寒そうに少し震えながら布団にくるまっている。
何か温めるものは……
「……」
これは不可抗力だ……仕方が無い事だ……
「失礼しま~す……」
百合ちゃんの隣へ横になり、温めるよう布団ごと抱き締めた。
『人としてか、女としてか……』
寝ている百合ちゃんの顔を見ている時、シュウに言われた言葉が頭を過った。
百合ちゃんを抱けるかどうかと言われれば、抱ける。傍に居たいし、抱きついてキスもしたい……その一方で、強引に事を運んで百合ちゃんを傷付けたく無いし、居心地の良い今の関係を壊したくないとも思う……
「……」
まぁ、いっか!人としても女としても、どっちにしろ傍に居たいと思うくらい、百合ちゃんの事が好きなのは一緒だしな♪
「早く良くなってね♪」
チュッ……
百合ちゃんの額に軽く口付けて、身体を温めるよう抱き締めた。
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《百合子目線》
チュン、チュン……
……ん……朝かしら……何だか温かい……
熱が下がったのか、身体のだるさが抜けている。でも、重い……
「……」
ん……?重い?ま、まさか……
恐る恐る目を開けて、状況確認をしてみる。すると、目の前には翼くんの寝顔が!
って、やっぱり!!ど、どうして?!
ふと冷静になってみると、翼くんは布団ごと私を抱き締めているのがわかった。まるで私を温めるように……
温めてくれていたのね……
得する事なんて無いのに、何で翼くんはこんなに優しくしてくれるのかしら……
何の下心さえも……
「……」
し、下心も無いわよね……これだけ歳が離れているし……時々スキンシップが過剰なのは、小悪魔であって……
それにしても肌が綺麗……若いからなのか、テレビに出るから気を遣っているのか……
思わず翼くんの顔をマジマジと見ていると、パチッ!と目が開いた。
「お、起きてたの?」
「百合ちゃん!そんなに見られると、恥ずかしいんだけど♪」
「ご、ごめん……」
「ふふ!何かいいな~♪こ~ゆ~の!」
「こ~ゆ~のって?」
「朝起きて一番に百合ちゃんの顔が見られるって事♪」
「そ、そう……」
冗談だとわかっていても、照れてしまいそう……
「マジで幸せ~♪」
翼くんは、更にギュッ!と抱き締めてくる。
うわわっ!いつもに増して、スキンシップが激しいっ!
「つ、翼くん!仕事はいいの?」
「そうだった!直接現場へ行くから、シャワー借りてもいい?」
「どうぞ……」
「一緒に入る?」
「む、無理っ!狭いし物理的にも無理だから!」
そそくさと起き上がり、翼くんにタオルを渡した。
はぁ……あのスキンシップは心臓に悪い……今の若い子ってみんなあんな感じなのかしら……
シャワーの音を聞きながら、発熱後とは違う疲れを感じている。
それに、いくらキツかったとはいえ、一回りも下の男の子に看病して貰うなんて……
「百合ちゃん?」
「……」
「百合ちゃん、何してるの?」
「うわっ!」
いきなり後ろから話しかけられ、朝ごはんを作る溶き卵を落としそうになる。
「び、ビックリさせないで!」
「何回か話しかけたんだけど……何を作ってるの?」
「簡単だけど朝ごは……」
翼くんの方へ目を向けて、言葉が止まった!
上半身裸のまま無造作に頭をタオルで拭き、引き締まった胸元が男の子ではなく男性だと物語っている。
「な、何か着てよっ!」
「ん?男の裸くらい見慣れてるよね♪」
「む、無理っ!」
サッ!と目線を反らして背を向けると、ガバッ!と後ろから抱き付かれてきた!
「ぷぷっ!百合ちゃん、可愛い~♪」
「も、もうっ!朝ごはんが作れないじゃないっ!」
「ん~!もう少しこうしていたいけど、百合ちゃんのご飯も食べたいから、服を着てくるね♪」
翼くんは、チュッ♪と私の耳にリップノイズを立てたキスを落として離れていった。
こ、この小悪魔め……
朝から翻弄されてぐったりと疲れた事に、歳を感じる今日この頃……




