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天使クリスタさん

にゃごも、天使さんも

人間ではないので、男でも女でもない。


それは人間でもそうで、心に

男も女もないのだ。



美人猫さんの不幸は、その

にゃごの出自を知らないので


他の猫たちと同じ外観で、にゃごの気持ちを考えてしまう、そんなところだった。



なので、「美人なわたしに

どうしてつれないのかしら」



なんて、可愛く美人猫さんは

思ったり(笑)。


それは単なる誤解だけれども(笑)。



にゃごは、寡黙だ。


それは、相手が

気持ちを満たすのに十分だったりもする。


美人猫さんは、本当は

静かに暮らしたかった。

でも、見た目が整っているせい

寄ってくるのは、中身のない連中ばかりで

ウンザリしていた(笑)。


にゃごに、中身があるか否かは不明であるが

寡黙であるが故、美人猫さんの

夢を壊さずに済むのである。(笑)




そんな訳で、美人猫さんは

心の拠り所をにゃごに求めた。



人間よりも、ある意味

切実な願いである。



人間は暇だし、恋の季節感もないけれど


猫には、それがある。



短い季節に相手を定めないとならない。



人間のように、恋を楽しむゆとりも

そんなにはなかった。



それが故に真摯である。




にゃご自身にも、美人猫さんが

寄り添う事を避ける理由もなかったから


それは、美人猫さんにとっても幸せな事だった。










もちろん、猫同士にコトバはないから


声にニュアンスと、フィーリングでつたわるものが


ことば、である。



犬もそうだし、霊長類の隣人もそうで


京都大学霊長類研究所(当時)の

1980年代の文献を読むと「観察の為に、ゴリラたちの言葉を

覚えて、交流を図った」とあるl。


ゴリラくらいになると、言葉がある。それでも

雰囲気が主、だったりもして


この研究者の論文は、当時西洋の学者には受け入れ難かったらしい。


しかし、例えばハワイで「アロハ」と言うコトバが

ニュアンスで様々な意味を持つ、と言う

飛行機会社のコマーシャルのように(笑)。



人間でもニュアンスが大切なのである。


犬もそうだし。


まして、猫は当然そうであった。





しかし。


にゃごは、もちろん猫であるが

転生した過去を持っている。



それは、割と有難くない過去であったから

悪魔くんになる前、人間であった頃


生まれてすぐ、両親の都合が優先されるような

環境で育っていて、心を痛めた。



だから、人を信じなかったし、女、特に母親のようなタイプには

心を許せなかった。



勝手な都合で、可愛がりたい時だけ可愛がって。

子供の気持なんて考えていない。


ぬいぐるみじゃないんだから。



そんな、気持がどこかにあった。


けれど、天使さんに出会って、その気持は変わった。



それは、天使さんが生き物ではなくって、心だけ、魂だけの存在なので


天使さん自らの主張もなければ、自分を際立たせたい、なんて欲もない。


そういう天使さんは、至上の存在だと思って


魔界を捨て、いまはにゃご、猫になって暮らしている。



それで、美人猫さんが寄り添ってくれているけれど


にゃご、彼にとっては

どことなく、やっぱり「生き物」としての限界を感じてしまう


にゃご、だった。



その寄り添う好意に、生命としての摂理があり

故に排他的であるあたりに、母親を連想させて

ちょっと心が冷めてしまう、そんな彼だった。



もちろん、今はにゃご自身が猫なので


心だけでは生きていけないのだけれども。




いつか、転生して.....。


その時、はじめて自由になれるのだろう。

それでも、にゃごは

なんとなく、美人猫さんが

寄り添ってくれる、それが

なんとなく、物足りないな、なんて

思ったり。


見かけが美しいって、それも

結構だけれども。



ただ、それだけかな、

見かけはいくらでも繕えるし。

(笑)



そんなふうにも思ったけど



だからと言って、美人猫さんを

拒絶する理由にもならなかった。



心の愛。


それからすると、どこか

幼稚な感じもしたけれど


それは猫だから、当然である(笑)。




猫には生があるのだ。


限られた期間に、恋をする必然があったり。



それはもちろん、自然の摂理であり

食べ物の潤沢な、温暖な季節に

子猫を育てられるように、そういう

自然な習慣をもった猫が生き延びた、


そう、進化生物学では考えられている。



人間の場合は、そういう制約が

社会のせいで、なくなった。


いつでも食べ物があって、家があるから

寒さ暑さには、あまり関係なく

子育てができる、それで


恋の季節感が無くなった。



それで、恋というものを

楽しみのひとつ、そんなふうに

思うひとも居たりする。




それは、結構罪深い事でもあった。



ギャンブラーたちが、悪い世の中を

作っていた頃、生きる希望を失ったひとたちが、恋、でさえも

遊び、そんなふうに考えたり。



そのせいで、にゃご、は

猫に転生する前、悪魔くんになるその前の

人間だった頃、母親が家庭を

捨て、別の恋に向かったり。



そのせいで、深く心を傷つけた。


それも、恋と言うものをはきちがえたひとの、愚かしい行為で

そのせいで、子供が悲しむなど

省みなかった親の、幼稚な

行動のせいである。




そんなせいで、猫としての恋にも

慎重な、にゃご、を



訳わからない、って


思っている美人猫さん(笑)



その、のどかな気持ちが


にゃご、の心の奥にあった

そんな気持ちを、和らげてくれたりもする。





木の上でのんびりしている、にゃごと美人猫さんは

それでも、幸せそうなカップルに見える。



猫の場合は家族が無いし、恋の季節だけの関わりだから

それは気楽で、楽しいだけ、で済む。


子猫が生まれても、すぐに自立できるから

お母さん猫も、楽しい事を我慢しなくていい。




猫のお母さんも、子猫が巣立てば

別の恋もできる。



そのくらい、自由なら

人間の子も傷つかずに済むだろう.....。




「にゃごー、ごはんよ」と

おばあちゃんは、にこにこしながら

にゃごのごはんを作ってきた。


おさかな、あじの干物を

焼いて、骨をきれいにとってあげて。



「そうそう、めぐにもよく、こうして

あげたっけ」



おばあちゃんは思い出す。


幼い頃のめぐは、あじの干物とか

あんまり好きじゃなかったみたいで


(まあ、子供はそうだけど)



おばあちゃんは、骨を取って、

きれいに身だけを取って



めぐに食べさせて。




残った骨と頭は、飼っていたにゃんこ、みーこにあげるのだけど


みーこも、頭とかだと

文句を言ったりして。


もちろん、猫の言葉で言うのだけど(笑)。




駄々をこねる猫を、可愛がっている

おばあちゃんだった。


いま、にゃごをかわいがる

おばあちゃんは、しあわせそうだ。





「めぐも、ついこないだ

赤ちゃんだったのにねー」と


おばあちゃんがにこにこしてると



めぐは、ちょっと恥ずかしそうに


微笑んだり。



「もうすぐ、めぐもお嫁さんよね」とか


言うと、めぐは、なんとなくどっきりしてしまったり(笑)。




ずっと先だもん(笑)。。


なんて、こころのなかでつぶやいて。




そう、めぐはルーフィが好き。


ルーフィには、「向こうの時空」から一緒に旅してきた

Meg、つまりめぐの3年後、と言う

ややこしい彼女(笑)が居るのだった。




不思議トライアングル。


それは、いつか解消する。

たぶん、元の時空に彼らが帰ってしまえば

もう、会えなくなる。



めぐは能力者だから、時空を旅すれば

「向こうの時空」に行く能力はあるけれど



その能力は、魔法だから

魔界に近い雰囲気を持っていて


めぐに宿っている天使さんの、天界の雰囲気と相反するエネルギー。

なので、天使さんが疲弊してしまうから

めぐの、能力者としての意識は

自らを封印したのだった。



もちろん、人間としてのめぐは

魔界との関わりがあった記憶を忘れるために

一度、時間を逆転させて

再度、記憶を積み重ねた。



能力があった事は、覚えていない。

けれども、それを思い出すかもしれないし


天使さんが、そういうめぐを

自由にしてあげたい、そう思っている....。








「きょうは暑かったわぁ」と、おばあちゃんは

にこにこしながら。



夕方になると、丘に建っているこの家は

草原を渡る風が、さわやか。




にゃごも、のんびり。



涼しいところを探して、ごろり、と

横になった。



それから、美人猫さんは

、おかあさんになった。



かわいい子猫が、3匹。


お母さん似の男の子2匹と、お父さん似の女の子。



とてもかわいくて、にゃごも

子猫を眺めているだけで

幸せだった。



生まれて少しして、ヨチヨチ歩けるようになると、美人猫さんや、にゃごの後をついてきて。




美人猫さんは、お母さんになると

遊んで歩く事もなく、かわいい子猫と遊ぶ事を楽しむようになった。


にゃごも、おさんぽを子猫たちと楽しんだり。





小さな子猫をつれて、家に帰ってくると、めぐも

おばあちゃんもとっても

喜んだ。



お母さんも、お父さんも。






子猫にとっては、にゃごがお父さんだから



やっぱり、にゃごも

子猫を見守ったり。



階段を昇れないで、上を見上げてる男の子。

お母さん似で、かわいい子猫、真っ白でふわふわ。


外をおさんぽしたい、って窓の向こうを見ている女の子は、にゃごに似ていて

トラちゃん、だけど

しなやかな白い。



とにかく、猫お父さんになってしまったにゃごは


面倒見のいい、お父さんだった。


まだ、お兄ちゃんくらいの年なんだけど((笑))


仕方ない、美人猫さんも

悲しませる訳にもいかない。





もちろん、天使さんも

子猫を愛しげに見守った。



そうして、幸せににゃごが暮らす事は

良い転生ができる理由に

なったりもするから、で



天使さんの、そんな気持ちは

いまは、にゃごに宿っている

元悪魔くんの心にも、伝わって。



良い雰囲気になった。

にゃごでなくても、子猫のかわいさは

誰にでもわかるもので


男の子どうしで、じゃれあったり。

毛糸玉みたいに、ころころしたり。


不思議に、お母さん似の男の子は

優美で凛々しかったから


いずれ、モテモテ猫ちゃんになるだろう(笑)。


お父さん似の女の子は、愛らしい中に聡明なところを感じさせて

気品のある、お母さんとは違う魅力を見せ


それは、美人猫さんのお母さんが

わが娘ながら、嫉妬を覚える(笑)


ような女の子に、いずれなるであろうか、と思った。


お母さん猫としては、にゃご、恋した彼に似ている娘、を

微笑ましく、愛しく思って。

知る事のない、生まれた頃の

彼の姿は、こんなだったのかしら?


などと想像して、楽しくなったりもする。




めぐは、どの子猫も

とっても可愛がった。



おうちに遊びに来ると、ミルクをあげたり。




ふにゃふにゃの子猫たちと遊んで、和んだりもした。



「向こうは、大丈夫かな」わたしは

思いの他長旅になった、自分の世界の事を、ふと気にした。



思いつきで飛んできてしまった、3年前の世界、に

似た、めぐのいる

こちらがわの異世界。



めぐ、と言う

わたしの過去生、3年前の彼女は

生まれたばかりの時に

魔物にさらわれて、怖い思いをして。


それは、魔物が往来する異なる、この次元の歪んだ世界のせい。


そのせいで、めぐ、は

天使さんに護られて

限られた時間を生きていて。


いつか、助けてもらえる事を

願っていた。




ルーフィは、困難なその願いを

叶えてあげた。


神様と契約をし、果たした。



それで、めぐは

ふつうの女の子、の

人生を歩めること、になって・・・・。




いま、思うと

たぶん、おばあちゃんの願いが

わたしとルーフィに届いたんだろうと

思うけど。



みんなしあわせになって良かった。


そう思うと、わたしは

急に、自分の世界が気になってしまって。




ルーフィは「ああ、いつかみたいに

向こうの世界では、ほんの一瞬の出来事、なんだよ。

4次元、って時間軸が伸び縮みするから。」


って、微笑んでる。



ふつうの次元は、3次元。


たて、よこ、たかさ。で

形が決まって。


時間軸は動かせない。



4次元、は

時間軸も、たて、よこ、たかさ、も

伸び縮みできる。



夢の中で、思い出を一瞬に

呼び出したり。


遠くに突然飛べたり。



それが4次元ー。




「でも、エネルギーの総和は同じだから、限界はあるね」とルーフィは真面目な表情をした。



つまり、向こうの世界での、わたしたちは


とてもちいさくなって、存在しているのだろう。エネルギー体として。





「いずれは、戻るべきだろうね」と、ルーフィは言った。





そっか・・・・・・。


楽しい長旅だった。




いろんなことがあったな。



わたしは、旅の思い出に浸った。



うれしいこと、たのしいこと。


つらいこともあったけど。


でも、みんな、いい思い出。





それなので、わたしたちは

天使さんに、お話をして。


「そろそろ、戻ろうかと思うのです」



と、言うと、天使さんは


「淋しくなりますね、でも、いつでも

遊びに来てくださいね」と

水晶のように微笑むのでした。



めぐは、そろそろ夏休み。

ハイスクールの休みは長くて

秋までを、ゆっくりとバケーション。


わたしの記憶だと、スイスのお山とか


涼しいところに出掛けたりした。



めぐも、そうするのかな・・・。







おばあちゃんに、帰る話をすると



「ずっと、いらしてくれていいんですよ」と

にこにこしながら。



そーいえば、ごはん一杯食べてたし(笑)と

ルーフィは、わたしをつっつく。



「なによ、あんただって。おいしいおいしい、って

パスタ3さらも、魔法使いのくせに」




と、言ってしまって。


あっ、と、気づいた。



おばあちゃんは、神様の粛清で

魔物の記憶を忘れているはず・・・。



「いいんですよ、わたしは。」と

おばあちゃんは穏やかに微笑んだ。



「わたしは、ずっと、覚えているんです・・・そう、わたしがめぐ、くらいの頃から。

わたしのおばあちゃんから、受け継いだ能力・・・・なの。」


ずっとずっと昔から、ときどき

うちの家系には、魔法使いになれる女の子が生まれると

おばあちゃんは、静かに告げた。




それが、めぐ。



つまり、わたしの世界で言うと

それはわたし、と言う事になるけど


そんなはなし、聞いたことないわ(笑)。




「すべて、ご存知だったんですね」と

ルーフィ。




おばあちゃんは静かに頷き、「未来には、魔法使いの時代が再び訪れるはず・・・・」と、にこにこして。




「ルーフィさん、あなたの世界で3年後のめぐ、を大切にしてあげてくださいね」と、面白い事を言った(笑)。




それは、つまりわたしの事になるけど(笑)。




「予言では、魔法使いのお婿さんが来ることになってるの」と

おばあちゃんは楽しそうに笑った。




あれ?



それは、どっちの世界の事?



お婿さんって、ルーフィ?



どっちの世界でお婿さんになるのー?



と、思ったけど、ルーフィは

「それ聞いたらつまんないでしょ」


と、わたしを引きずって(笑)



その場を離れた。





2階のテラスで、風にあたっていためぐ、にも


わたしたちは、旅の終わりを告げた。




めぐは、悲しそう。



「もっと、ずっと、いてくださっていいのに」




って、おばあちゃんに似た言い方をするので



ちょっと微笑ましかった。




めぐは、とってもいい子。



淋しいよね。



だって、好きなひとが

遠くに行っちゃうんだもん。


でも、取り乱したりしたら

好きなひとが困る。



そう思って、おとなしくして。



いい子だけど、それ、無神経ルーフィに伝わるかな・・・・(笑)なんて、わたしは思った。




そういう、奥ゆかしい子が

ほんとにいい子なんだけど


男の子には、いまいち伝わらなくて

泣いたりする、わがままな子の方が


男の子には、わかりやすいから

恋もうまく行ったりする。


でも、、感情で動く子って

あとで、扱いにくかったり、

浮気だったり(笑)




だから、めぐみたいな子が


いいのに。


この、鈍感イギリス人!(笑)。





わたしは、なぜか

そんな風に思ったりして。








でも、めぐは

「わたしが、魔法使いさんになれたら

ルーフィさんのところへ、行けますか?」




「めぐ・・・・覚えてたの?」と

わたしはびっくり。



「めぐちゃん・・・・。来れるよ、来れるさ!」


と、ルーフィ。


神様は、魔物は

最初から来なかった、と

時間を巻き戻して、めぐの

生まれたばかりから

世界全ての時間をやりなおした。



けれど、ルーフィが来た事や

過ごした時間は


魔物と、関係ないから(笑)


そのまま、に。



なるほど・・・(笑)流石は神様。





もちろん、今は

天使さんを思って、魔法使いの能力は封印している、めぐ。



でも、いつか・・・にゃごが転生して

天使さんと共に、暮らせるようになったら。




めぐは、魔法使いになれるんだわ。






それが、いつなのかは

わからない。





わたしたちは、それでも

希望を持って。



テラスで風に吹かれて。


それから、2階に戻ったら


吹き抜けに、にゃごが寝そべっていて。




「待て」


寡黙な彼は、初めてルーフィに

口を開いた。



静かで、澄んだ低い声だった。

それは、おそらく

元悪魔くん、今はにゃごに

宿っている彼のこころの

声だった。




ルーフィは、少し驚いたけど

「何?」と。


飄々と答えた。



にゃごは「それでいいのか?」と。

だけ。



めぐの気持ちに、ルーフィが

答えていない、その事を

言っているのだろう。


男らしい、きっぱりとした言い方だった。




ルーフィは、少し考えて


「僕には、Megがいる。それは、めぐちゃんの3年後の姿だから

どちらかを選ぶ事など、できない。」



わたしは、思った。


ルーフィは、こっちの世界に

残ろうとすれば、残れるんだわ・・・

もともと、時間旅行でわたしと

偶然出逢ったんだもの。




さらに、ルーフィは語る。


「めぐちゃんも、3年経つ間に

理論的には、誰かと出逢うはずなんだ。それが、僕かどうかはわからないけどね。

だから、これから3年の間に

決めればいいんじゃないかなぁ。

僕は、帰るけど、でも

ここに二度と来れない訳じゃないんだ。


めぐちゃんも、封印している能力を解けば

時間旅行くらいはできるだろうさ。」と


ルーフィは、そこまで言って


ちょっと失敗かな、と、思った。



めぐが封印している能力は、天使さんのため。



つまりは、にゃご自身のしあわせの

為、だった。


それを、にゃごが

どう思うか・・・・・?




男らしい彼が。


転生、それは

人間界では、死を意味したりする。

でも、転生をする前の記憶を

もし、忘れなければ


死を恐れることはなにもない。


ただ、転生を通じて

意識を持ち続けるのは、

能力のある者だけだ。


なので、ふつうはそれを恐れる。

もっとも、時間旅行をする旅人たちには

あまり関係ないのだけれども。



でも、にゃごには葛藤があった。


自分の為に、めぐと天使さんが

しあわせを失うかもしれない。



そんなことはなくて、天使さんもめぐも


お互いに、しあわせなのだけれど。


男らしい彼は、そう思ったり。


自分が転生すれば、めぐは

封印を解いて、魔法使いの修業をすることもできる。


何しろ、天使さんが地上にいるのは

自分の為、そして

天使のまま、地上にいる為に

めぐというあの娘に宿っている。



そのせいで、めぐは魔法を封印している。





ただ、彼自身にも猫の世界で

美人猫さん、それと子猫がいて。



突然、姿を消す訳にもいかない。


せめて、子猫が巣立つまで・・・



と、彼は思慮した。





「わたしは、地上に生きようと思います」

天使さんも、ルーフィたちの旅立ちを知らされ


決意を胸に、神様にお話をしていた。




「なに?天使を辞めるというのか?」



神様は驚愕した。


志願者はいくらでもいるが

滅多になることのできない天使、である。



それを、悪魔ひとりの為に

我が身を捨て、人間界に・・・・





否、元悪魔と言うべきだろうか。


神様は、怒りのせいで

少し冷静さを欠いたらしい。



「お許し下さい」


天使さんは、大胆にも

そんな事を告げた。




神様は、沈黙し

ただ、思考した。




・・・・それほどまでに。


元悪魔、とはいえ

今は、転生して

猫になっている。



その猫の為に、天使である自分を捨てようと言うのか?



しかし。天使故に無欲なのも

また、天使足る所以である。



天使の身分、などと言うものよりも

愛他的であることは、実は天使らしい行動だと、神様は思った。


「・・・うむ。」



天使が、そもそも身分だの、階級だのと

制度にこだわるはずはない。


それは、人間の書いた物語の中の

はなしだろう。



そう、神様は思った。


本当の天使は、やはりあんな存在なのだろう。


悪魔が、いつも悪い者ではないように。




天界で、そんなやりとりがあった事など

誰も知らずに


それぞれに、旅愁とか、別れの寂しさとか。


いろいろなものを感じていた。



中でも、にゃごの気持はとても複雑なものだった。


なにせ、自分の幸せの為を思って


誰かが幸せを失うかもしれない、と言うのだから。



元々、人に傷つけられて魔界にまで落ちた彼にとって

それは、耐えられるものではなかった。



幸薄かった人ほど、他の人の幸せを奪ったりできないものだから。




しかし、子供の幸せを思うと.....。



忸怩たる思いで、ルーフィたちの旅立ちを見守ろうとしたが....。






ふと、にゃごは気づく。


天使がいない。




「どこに行ってるんだろう.....。」こんな時に。


訳分からないけれど、なんとなく気になる。





まさか.....。








そこに、透明な翼で空を切り

天使は舞い降りてきた。


すでに夜闇、天使が飛翔するには似つかわしくない時間である。




静かに、にゃごを見つけた天使さんは、微笑みながら着地。




「どこへ?」彼は、予感を振り払うように。




天使さんは、静かに...「天界へ行って参りました」



やっぱり。と、彼は確信した。

天使は、自身を捨て去るつもりに相違ない。




「そんな事をするくらいなら、俺が転生する」と、彼は決意を告げる。



しかし天使さんは、静かにかぶりを振り

「子猫ちゃんたちの事を考えると、それは.......。」



それを聞き、彼は愛らしい子猫の事を思った。



そうすると、転生する気持も薄れてくる。


愛とは、そういうものだ。



守るべき者があるからこその愛である。





「.....。」彼もまた、沈黙した。





子猫が巣立った後にしても、あまりに早い転生は

やはり子猫たちが悲しむに違いない。



能力者でもない子猫たちにとって、転生した後の自分は

父親には思えないだろう。






「それで、こうするのが一番だとわたしは.....。」天使さんは

透明な翼を収め、人間の姿になった。





「.....。」無言で、彼はそれを見詰めた。

もう、時間を戻す事はできない。






「どうするつもりだ」と、彼は尋ねる。



天使さんは、綺麗に澄んだ声で「あなたと共に、暮らして行きましょう。

幾度も転生して。幾度も出会って。

いつかは、一緒に天に召される時が来るでしょう.....。その時まで。」




彼は、何故そこまで、と聞きたかった、が...。


それが天使と言うものなのだ。




周りのしあわせのために。







みんながしあわせになって

しあわせな気持ちになれる。


それが、天使さん。


「みんなに、しあわせになって

いただきたいのです」



と、天使さん、今は人間の姿をしているけれど。


こころは、天使さんのまま。




「自分はどうするんだ?天から落ちたってことだろ」と、にゃごは

猫の姿のまま。




天使さんは、静かに微笑む。

「わたしは、じゅうぶんしあわせです。




めぐさんが、あなたが。

それでしあわせになってくださるのなら。」




にゃごは、沈黙した。



人間の姿になっても、天使は天使だな。


そんな風に思った。


見た目は、あの、めぐ、って娘に

似てるが(笑)。

ちょっと、浮世離れしてるあたりは

やっぱ天使だな、なんて

にゃごは、自分が

猫の姿をしている元悪魔くんだ、って事を

忘れている(笑)。








そんないきさつを知らない、わたしたちは



ルーフィの屋根裏部屋から降りてきて。


彼女、元天使さんに遭遇。




穏やかに微笑む、元天使さんは

「こんばんは」。


わたしも、ルーフィもどっきり。



「驚いたわー、めぐかと思った。」




「転生なさったのですか?」と、ルーフィ。



天使さんは、いいえ、と

かぶりを振り「天使を辞めた、と

神様にはお伝えしました。

でも、お許しは頂いておりませんから・・・・・天使でもなく、人間でもない、

そんなところでしょうか。


めぐに似ているのは、ずっと、めぐに宿っていたせいもあるかも。



経験してきたことで、人間って変わるものだし。




わたしは、めぐの3年後だけれども

違う世界に生きているから

やっぱり、なんとなく違う。


そんな風に、わたしは、ちょっと

天使さんと、めぐの境遇を羨んだ。


神様が粛清してくださるなんて。




天使さん・・・・あ、そうだ。



「天使さん、お名前はなんておっしゃるの?」と、わたしは

初めてその事に気づいた(笑)



「あ、そうですね・・・・crysta、と

呼んでくださいますか?」


ふんわりとした表情で、そう告げられると



ほんとうは、天使さんって

長ーい名前があるんだろうな、

なんて。


美術館でみた、レンブラントの絵画を



わたしは連想した。





「めぐ」



2階の吹き抜けでお話してたら

お部屋から、めぐが出てきて。


天使さんの姿を見て、また、びっくり。



雰囲気は天使さんだけど、だって

めぐにそっくりだもん(笑)。




「いままで、ごめんなさい・・・・・と言っても、ご存知ないかしら。

わたしは、あなたのrular、です」



めぐは、それにまた驚いて




「ルーラー、って、星占いだと守護星の事だけど・・・あなたが、わたしの守護神さん?」



こないだまで、星占いの本を読んでたから(笑)。



はい、と

天使さんは、にっこり。



ステキだー、って

めぐは、天使さん、いまはクリスタさんに駆け寄って。手を取った。


並んでると、少しだけ

クリスタさんは、めぐよりお姉さんみたい。


髪型もふんわりで、さっぱりショートカットのめぐとは、ちょっと違う。




でも、なんとなく似てる。




「いいなぁ。ステキなルーラーがいて」って、わたしはため息(笑)。




「僕もそう思う」って、ルーフィ(笑)。


わたしにも、いるの?ルーラー、って。





めぐは、とても楽しそう。



淋しがりだから、わたしが帰ったあと


ちょっと心配だったりした。


でも、クリスタさんがいれば・・・・



めぐは、元気に「おばあちゃん、おばあちゃんー」と

スリッパで階段を駆け降りてって(笑)



みんな、にこにこ。



おばあちゃんが、2階に上がるのは大変かしら、と


わたしたちは、階段を下りようとした。


おっとりタイプのクリスタさん、スリッパ履いてなかった(笑)。ので、わたしはスリッパを持ってきて。


クリスタさんは、天使さんだから

スリッパなんて久しぶりなのかしら(笑)。



歩くのが難しそう(笑)。


階段を降りようとして、スカートの裾をスリッパで引っかけ。




転びそうになったのを


ルーフィが、後ろから支えた(笑)



「す、すみません」って

恥ずかしそうなクリスタさんは

レディなのに、なんだかかわいい。




「ルーフィ、めぐの時はさ、なんで

後ろから支えなかったのよ」と

わたしはルーフィに(笑)。




「なんでかなー、あれは咄嗟だったから」と、ルーフィは口笛(笑)。




「さわりたかったからだろー、このH魔法使い、こら!」



と、ルーフィを叩くふり。



ルーフィは、よけながら

「ごめんごめん、だって天使の胸なんて、触ったら地獄行きだよ、きっと」

と、ルーフィは笑う。



クリスタさんは、楽しそうに笑い


「今は天使ではありませんから、罰はありませんわ」と。



ルーフィは「失敗したかなー(笑)」

なんて。


魔法使いは人間っぽい(笑)。





「天使さんに触れたら、どんな罰があるんですか?」と、ルーフィはお気楽に。




クリスタさんは「神様がお怒りになると、どんな事が起こるかわかりません・・・史実では、魔物にされた、地獄に落とされた、消滅した・・」


と、怖い話を(笑)


ルーフィは、危ない危ない、と

肩を竦めた(笑)。




なら、神様は

いまのクリスタさんと、にゃご、を

お怒りではないのね。



と、わたしは思った。





それはそうかもしれない。



にゃご、元々は

人間界で、辛い事があって

魔界に落ちて。


それも、救いを求めてもがいていたから。



彼が、天使さんに出逢って

その彼を、天使さんは愛して。



彼は、猫になってまで

転生を望んだ。



それを支える天使さんは、ステキだわ・・・・・。



愛よね。



そんなふうに、わたしは思う。



わたしたちって、人間。

やっぱり、自分を捨ててまで

誰かの為に、なんて

ちょっとできないもの。



できることならするけど。




クリスタさんが転ばないように

ゆっくり階段を降りて。


わたしは、めぐ、の声がした

おばあちゃんのお部屋へ。




おばあちゃんは「まあまあ、ようこそ、めぐがお世話になって」と。


クリスタさんは「いいえ、わたしの力足らずで・・・・・」と言った。



でも、それはもう

神様の粛清で、元に戻って。


知っているのは、天使さんと

おばあちゃんくらい。



めぐは「なんのこと?」と。


魔物の事は、経験していないので

覚えていない、と言うか


知らない話。(笑)。




でも、どうしてルーフィとわたしの記憶を消さなかったんだろう、神様は。




クリスタさんと、にゃご、を見ていて


わたしは、なんとなく思った。



めぐに、もう少しだけ

天使さんと一緒でいてほしかったのかな?


なーんて(笑)。





おばあちゃんは、喜んで

「じゃあ、クリスタさんはMegさんの代わりに、うちに居て貰って。

めぐのお姉さん代わりに。


そうだ!、めぐ、夏休みだから。

ルーフィさんのところへ、旅行してくれば?」


と、おばあちゃんは、神様よりも大胆だ(笑)。




「嬉しいっ!行きたいっ!、あ、でも、図書館もあるし・・・・」

と、めぐは、賢い子(笑)。




クリスタさんは「あ、図書館のお仕事は、わたしが・・・・」と。

ふんわり、にっこり(笑)。



「でもルーフィ、時間旅行って4次元だから、こっちは一瞬、旅先は時間旅行・・・・って?」と

ルーフィに聞いた。



ルーフィは、それもあるけど、って言って



「まあ、そういう方法もあるし、入れ替わりになるってやり方もあるさ。

こちらがわが3次元のまま、向こうも、って。



それに、異世界で女の子が仕事持って働く、ってお約束だし(笑)」




・・・・・なるほど(笑)。











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