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神の審判

「よかったね、デート」と、わたしはめぐに言った。

ほんとうは、感想を聞きたかったけど


でも、ルーフィもいるので


それは、めぐの気持ちを考えて(笑)控えた。



だって、めぐはルーフィが好き。

でも、誘われるのは

それなりに楽しい。

と、思う。



それは、自然な感情。

恋愛、とかじゃなくっても

映画見るくらいは、別にいいんじゃないかしら。


でも、ルーフィの前で

それを言うのは、ちょっと妙かな?

なんて。


ライバルをやっつける、意地悪さん

みたい(w)だもん。


当のルーフィも、平然としているから

そんなに、気にすることもないけど。



めぐは、聞かれたことには答えなかったけど


でも、ちょっと恥ずかしそうだった。



「こんど、いつ?」なんて

ルーフィは、ふつうに言うので


ちょっと、めぐはかわいそうだったけど。




「でも、きょうのにゃご、すごかったよね:」と

わたしが言うと、めぐははっ、と

気づいたように

「あれ、やっぱりにゃごだったのかしら。」



そうだと思うけど、って

わたしは、めぐに答えると


ルーフィも「うん、そうじゃないかなぁ」なんて。



どうして、そういう事になるのかは

まだ、めぐには話してなかったので


ただ、不思議な子猫ちゃん、って


感じで見てるんだろうけど。




それで、ルーフィは「にゃごは、この世界でいい事をしたいんだよ」と

和やかな言葉で、そういうと



「そうなんですね.....。」と

めぐは、解ったような、そうでないような

曖昧な微笑みで答えた。



なんとなく、その、半疑問の表情はかわいくて素敵って

わたしは思う。



わたしも、3年前は

あんなだったのかな?



とか思って、過去にタイムトラベル

してきたんだけど。




ちょっとした間違いで

長旅になっちゃった。


お母さんが、のんびりと

赤ちゃんを可愛がっていられて。


おとうさんも、お世話ができて。


そういう時の、お父さんの匂いとか

お母さんの雰囲気、を

朧げに覚えてて。

後になって、恋する時に

好き嫌い、のどこかに

それを忍ばせたり。


たまたま、めぐ、は

お父さんが優しかったから


お父さん、みたいなパターンを

優しい、って感じるのかもしれない。





もちろん、お父さん嫌いって子もいるけど

心の底から言ってる子って、そんなにいなくて。



ふつう、娘を可愛がらないお父さんは少ないし

めぐは女子高だから、男の子から嫌な事をされる事も

学校では無かったりする。


なので、クラスメートでお父さん嫌い、な子って

めぐのお友達にはいなかったよう、である。





好悪の感情は、単純なシステムで

電気で決まっている。


と言うと、不思議に思うけど

理科の実験で、小学校の時に

塩水を電気分解したような、あんな単純な仕掛けで

決まっている、と思うと

だいたいアタリ(笑)。


塩水の濃さが変わると、電気分解される気体の量も変わる。


ある量に達すると、「好き」とか、そう感じるように出来ている。

好き・嫌いって、そんな程度のもので


その量が「閾値」。thretholdだ。




コンピューターは、これを真似て作られたけど

気持、そのものをコンピュータが真似できないのは


記憶を、一杯ならべて連想する仕掛けが

スーパーコンピュータでも、まだ出来ないから、だ。



その、大切な記憶は膨大で、それが人柄、とかを形成している。



なので、神様が「めぐの人生をリセットする」と言い出した時

天使さんは、それを思い直してもらうように、考えた。


経験が変われば、別の人になってしまうし

今、ルーフィを想っている、その大切な時間も

訪れないかもしれないから、だ。



時間。

誰にでも平等なのは、3次元の場合で


ルーフィは、魔法でそれを乗り越えたりできる。


4次元の時間軸を持っているのである。





Megも、ルーフィに付随する事はできる。



もちろん、めぐも

Megの3年前(笑)だから素質はあって。



能力の兆しが見え始めている。



きちんと、能力を使いこなせれば

神が、めぐの人生をリセットする必然は無くなるのだけれど


今、気づいているのは、天使さんくらい、だ。





「つぎのデートはさ、どっか美味しいものでも食べてさ」と

ルーフィが言うと、めぐはちょっと淋しそうな表情になって。



「はしたないわよ、ルーフィ」と、わたしはそう言って嗜める振りをして

ルーフィの無神経さを諌めた(笑)。



ルーフィも気づいて「そっか、レディのする事じゃないよね」と。



「にゃごー、ごはんよぉ」って

おばあちゃんは、いつもにこにこして

にゃごに、ごはんをあげている。


ごはんを作って、食べさせる。

食べているのを見てるのも、なんとなく、嬉しい。



生き物と一緒に暮らすって、それがとても

楽しかったりする。



おばあちゃんになって。

まだ、めぐ、が

ひ孫を産むまでは、しばらくあるだろうから(笑)。



にゃごに、ご飯をあげて

おいしそうに食べているのを見るのが、なんとなく楽しかったり。



それが、言ってみれば家族。


他の個体と、関わりを持つ事で

生きている実感を感じて、生き物としての

自分の在り処を感じる。


めぐのように、お父さん、お母さんのほかに

おじいちゃん、おばあちゃんが居る子は


例えば、お父さん、お母さんが


めぐを支配しようとしても、

おじいちゃん、おばあちゃんが

助けてくれたりするので


そういう、怖い事にはならずに済む。



なので、客観性、社会性のある子に育つ。


ひとつの考えを妄信しないから、である。





つまり、人間に家族が大切なのは

そんなことにも現れている。





そういう記憶、それは

いろんな出来事の積み重ねだから



過ぎてきた、一瞬が

とても大切だったり。





「にゃご」


おばあちゃんは、ごはんをたべているにゃご、を


にこにこしながら呼んでみた。



いっぱい食べてね。



猫に言葉は分からないけれども、そんな気持で。





猫は、すくすくと育つから。





ルーフィの魔法で、政治家たちの

いま、は

変えることはできた。

それでも、過去までは

変えることはできないから

過去に、いろいろな事があって

たとえば、

傷ついたひとの心を変える事までは、できなかったりする。


それで、彼は神経回路を抑える、

そんな手段を使った。


とりあえず、神が

めぐの命を救ってくれるまで。



それは、半ば成功した。

でも、天使さんに悪魔くんが恋してしまって


解決が長引いてしまった。


それに、神はめぐの人生を

はじめからやり直させようとしている。



いつまで、ルーフィの魔法が持つか?


それに、この国の政治家の異変を見て

外国のギャンブラーたちが

政治家を通して、妙な圧力を

かけてこないとも限らなかった。


「そうなる前に、なんとかしないと」

と、ルーフィは思った。



アメリカンの、ルーフィのご主人様が

こちらの世界でも、同じところにいる

保障はないから

支援を求める事も、できない。



「いきなり行ってみる、てのもね」


少し、ルーフィは考えていた。


いい方法はないかな......








天使さんは、ルーフィのつぶやきを聞いて


思う。



神様が、めぐさんの人生を

最初からやりなおしてもらいたい

と思うには、たぶん、わけがあるから。




恐ろしい魔物の記憶が、心の

どこかに残っていると


健やかになれない。

それに、めぐさんの記憶に

異なる世界の事が残っていると


そこに、次元の歪みの記憶があって。



ゆくゆく、後の世代に受け継がれて

いくと、

いつか、それが

異なる世界につながる事になったり。




そういう事を心配して、の事。



そうなのかしら。




もし、そうなら。



天使さんは、その夜


めぐや、ルーフィたちが

眠りについてから、神様にお伺いを立てた。


静かな草原、めぐの家の西側に広がっている

なだらかな斜面。

月明かりが照らし、緑の細い草を

つややかに輝かせていて。


時折、群雲がながれ

蒼い影を作る空間に

透明な翼で、飛翔い。



神は、寡黙にして。しかし、天使さんの

告げたい事を理解しているようだった。



「その娘は、能力を持つ、と言う訳か。」


天使さんは、微笑みながらうなづいた。




そうなると、結局魔界に関わりを持つ事になるから

次元の歪みについて隠す事は

なくなる。


時間旅行をすると言う事は、

自ら異なる世界に向かう事だから。



「しかし、そうなれば

お前の宿れる相手にはなれまい。」

と、神は憂慮した。


魔法、つまり魔なる世界の法典に

基づく能力を持つ者と

天界の者が共存できない、それは

当然だった。



そうすると、元悪魔くんの願いは

途中であったとしても

成就を見届ける事なく、天使は

天に戻る事になってしまう。


あくまで、めぐの

人間としての幸せを思って

神は、裁定を猶予したのだから。


「役目を終えたら、戻るのが定めであろう、天使よ」と

神様は、荘厳に。



「いえ、わたしは天使ですが

天には戻らないで、ここで

めぐさんと、にゃごさんと

共に暮らして行きたいと思います」



と、天使さんは、凛々しく、しかし柔和な表情でそう言った。





「なんと」神は絶句した。


天使としての永遠を捨てても

めぐ、とにゃご、の幸せのために

限りある生命を選ぶ、と言う

天使の思いは、神様にも

ちょっと不可解な言葉。


でも、ひとのしあわせを願うのが

本来、天使の勤めなのだ。



摂理である。









「まってくださいますか」と

涼やかな声がする。


風に吹かれて、丘に佇んでいるのは....


めぐの意識であろうか。


眠っているはずの

めぐの、能力者としての意識が


天使さんに、ついてきたのだろうか。



もちろん、めぐ自身は眠っているから

不思議な夢を見てる、けど

たぶん、めざめると

覚えていない・・・・


そんな感じだろう。





「お話しは、伺いました。神様、それでは裁定をお願い致します。」


めぐの、能力者としての意識は

潔く、凛々しく言い切る。



神は、また驚愕した。


「なんと・・・お前は、能力者としての自分を封殺するとな」



いま、裁定を要求するのは

つまり、目覚め掛けている

能力を停める、そういうことだ。



能力が無ければ、神の意思に沿い

零歳から人生をやりなおす。

それで、この世界が元通り、平和な

世の中になって。



でも、これまであった事は

全部、霧散してしまう。


ひょっとしたら、17年後に

であうかもしれないけれど。




天使さんは、穏やかに微笑みながら

「それで、いいの?ルーフィさんと・・・。」



めぐは、頷き「はい。元通りの世界になれば、いつか、わたしとルーフィさんは出逢うかもしれません。

そうならないかもしれないけれど。

でも、それはもう、いいんです。

ルーフィさんには、決まった方がいらっしゃるのだし。

天使さんに、しあわせになってもらいたいし。

いままで、18年もお世話になっていたのですから。

あたしも、お返しをしたいんです」




そう言って、めぐの、能力者としての意識は

神に裁定を迫った。







「よいのだな。」神は、確かめるように

最後通告をした。


めぐは、無言で頷いた。


「待ってくれ」と、丘に

登ってきたのは、ルーフィだった。


屋根裏の、ルーフィの部屋から

飛び出して来たのだろう、

スマートな彼にしては、裸足のまま。


「めぐちゃん・・・」ルーフィは

そこまで言って。


でも、めぐの決意が

読み取れたのか


そこまで言って、黙った。



めぐは、俯いたまま、静か。


でも、ルーフィの姿を見て


透明な涙滴、さらり。




神様を見る。



神様は、意思を感じ取り


左の指で、天を差した。



満月の夜だった。

けれど、一瞬、月明かりは陰り・・・



その場の空気が揺らいだ。



眠っていためぐの意識は

一瞬にして18年戻り・・・



そして、一瞬で18年を経験した。

ただ、魔物と異なる次元の記憶を

失って・・・。







4次元の旅だから、時間旅行は

一瞬に過ぎる。


夢を見ているのと、ほとんど同じような感じだから、夢だと思うひとも多い。


その中に、時間旅行の体験があたとしても何の不思議もなくて

いわゆる既視感、も

その一部はこんな感じだったり。


めぐは、赤ちゃんの時に

魔物にさらわれて。

それで、天使さんが助けてくれたのだけれども


そういう、魔物とか、異なる次元の記憶とかは勿論、経験しない。


次元の歪みはなかったことにされたから、である。



つまり、同時に

魔物のせいでこの世界のひとが

無用に争いを好むようになった時代、それらについても

同様に、無かったことになるわけである。



世界中のあちこちで、この一晩で

歴史が変わっていた。


この国では、国会が銀行を保護し続け


国内企業の負債に関しては国家が監督したから


大手の会社同士の合併なども、国家主導で行われたりしたので


経営者は、国の意見を尊重したし

労働者は、国、社会を大切にした。

隣人はみな、友人になり

争う事もなくなった。


ルーフィのしたような、薬学的対処療法と効果は似ているが

神様にしかできない、大規模な治療である。



そう言う事で、世界中に平和を喜ぶ気風があふれ


生活は楽しいものに変わった。




その環境で、めぐは

健やかに育って。


魔物が争いを人間界に齎せていた頃は、どこか臆病なところもあったのだけれども


無用に闇を恐れるところのない少女に育った。


その17年間を、一瞬に経験して



「おはよー、おばあちゃん」


「はい、おはよ、めぐ」


何事も無かったように、明くる朝が来る。



ひとつだけ、気がかりなのは

ルーフィへの気持ちは、どうなってしまうのか、と言う事だ・・・けれど。

「おはよ、めぐちゃん」と、ルーフィは

にこにこ。

すべてを知っている、ルーフィにしてみれば

ちょっと、その涙を知る者として

はずかしかったりするけれど。w



もちろん、いまのめぐは、それを知らない。


夕べ、落涙したのは、能力者としてたの意識、だから


めぐ本人は、のんびりお休み中だったし。



ただの夜が、一晩すぎただけ。


もともと、魔法を使える事など

めぐ自身の望んだ事ではないし

むしろ、爽やかな事であるかもしれない。



幼い頃、魔物に襲われたせいで

少しだけ、臆病なところもあっためぐ、は

その経験がなくなったぶん、より

健やかで元気な女の子になった、みたい。


「おはようございます!」


真っすぐに微笑むめぐは、ちょっと

ルーフィから見ても、眩しいくらいの

女の子になったりして。




「どうしたの?」と、Megが

ルーフィの様子を見て。



なんでもないさ、、と笑って。


いつものような、ふつうの朝が

始まる。




ルーフィは、でも思う。


・・・・元気になると、ほんとに

ふたりはそっくりだなあ。(笑)





「にゃご」



にゃごも、何も知らないかのように

のんびりとあくびをしながら。

昨夜は、でてこなかったので


自身が、めぐに救われたと言う事が

解っているのかどうか?は不明(笑)




神様は、計らってくれていたようで何となく、めぐは

ルーフィへの思いを、覚えているかのようだし

なぜか、ルーフィもそのまま

この世界に留まっている。


もし、この世界の救世が目的であるならば

それはもう、終わったはずだし

神様が自身でするならば、何も

ルーフィに頼み、代償として

めぐの命を授ける、などと

ややこしい事をしなくても良かったはずなのに。



そして、記憶をリセットするなどと

言った割には、何も変わらなかったり(笑)。



この世界の神様は、ずいぶんと

ユーモアとウィットを理解するんだな、と

ルーフィは、微笑んだ。




とにかく、良かった。



そう思うルーフィだった、



ちょっと気がかりなのは、

めぐ自身が封印してしまった能力と

その理由の、にゃごの転生と


それを見守る天使さんの関係、だった。



天使さんは、あれから

飛翔しないようになったところを見ると


ずっと、めぐと一緒にいるのだろう。


めぐは人間だから、天使さんよりは

寿命が短い。

その一生を終える前に、天使さんの目的が果たせるといいのだけど。




ルーフィ自身としては、めぐの能力を封印したままなのは

残念、なんだけれども。


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