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夏の図書館

この町にも、夏がやってきて。

にゃごは、ほとんど

おばあちゃんの猫、みたいに(笑)


めぐが、学校行ってる間とか

おばあちゃんが、畑に行くと


とことこ。見に来たり。



にゃごは、あんまり見かけない

キジトラ柄の、茶色猫。



細身で、しっぽの長い

かわいいにゃんこ。


畑歩くときとか、つま先で優雅に歩くのは

土がちょっとニガテらしい。





でも、きょうは


畑に来ない。



「あついからねぇ」と、おばあちゃんは

早起きして、畑に出たら



お日様が出る頃、農作業小屋に戻って


すこし、おやすみ。




「にゃごはどこいったのかねぇ」麦藁帽子を取って。




「にゃごー、ごはんよー」と、おばあちゃん



かすかに、にゃごの声が

お風呂のほうから。




おばあちゃんは、とっとこと、と

あるいて。



お風呂の小屋に行くと




「にゃご」





にゃごは、お風呂場のタイルに


お魚の干物みたいに、伸びてた。




「暑いからねぇ」おばあちゃんは、風通しの良い

タイルに伸びている、毛皮のにゃごをみて

にこにこ。




「シャワー嫌いよね」と、おばあちゃんは

お水を掛けて冷やしてあげようかと(笑)



でもふつう、にゃんこは嫌いかしら....。




前に飼ってたにゃんこは、お風呂で洗ってあげたっけ。





「あとで、めぐに聞いてみようか」






のんびりと時間が流れる、夏の午後。


夏休みも、もうすぐ。



「ただいまーぁ、おばあちゃん。」めぐは、快活だ。

夏、爽やかな季節なので

気分も最高。



「ああ、おかえりめぐ、あのね、にゃごのね」と

おばあちゃんは、農機具小屋で

クワスを飲みながら、のんびり。


にゃごを、おふろに入れていいかしら、と

めぐに聞こうと思って。



でも、きょうのめぐは、ちょっとお元気過ぎて


「あー、暑いな、シャワーするね」と、おばあちゃんの

前を通って、お風呂の小屋へ。


ドアが渋いので、思いっきり開いて。

閉じて。



かばんを置いて。



だーれも見てないから。


ひょいひょい、と

夏服を脱いで。


ちょっと、おてんばさん(笑)





お風呂場のガラス扉、片板硝子の

重厚なそれだけれども。



いまでも、ルーフィが

お風呂に入ってきた(笑)事を思い出すと

頬が紅潮するめぐ、だった。


結局見られてはいないものの(笑)そんなものだ。




からから、と

意外と軽快な音を立てて扉は開く。




「にゃご」




さっきのまま、にゃごは

でろーん、と

お風呂場のタイルにノビている(笑)




「そっか、暑いもんね」と、めぐは

にゃごにお水がかからないように。



バスタブ、と言うより

大きな風呂桶なのだけれど、そこで

シャワーする事にした。



それも、ほんとは

しちゃいけないんだけど。



きょうは、仕方ない。


「にゃご、お風呂好きかな。」



そんな事をひとりで言いながら。



めぐは、おーるぬーど(笑)で


お風呂場に入った。





にゃごは、まだノビている(笑)




冷たいお水の栓を捻って、シャワー。


「きゃぁ」めぐ、思ったより冷たいお水にびっくり。



髪から肩から、冷たい刺激が心地よい。



夏の楽しみ、かしら。



そんな事をめぐは思いながら。

右手で、アイヴォリーのシャワーヘッド。

左手で、お水に触れて。


透明な刺激、スパークリング。



シャボンを立てて、海綿でふわふわ。


柔らかくて、ふにゃふにゃ。

ちょっと、気持ちいい。


お水がにゃごにはねたのかしら....



にゃごが、ちょっと濡れてるみたい。



「にゃご、シャワーしよっか?」と、めぐは

しゃぼんをにゃごにつけようとすると



物憂げに、にゃごは

のそのそと、お風呂場の硝子を

ひっかいて。

開こうとした。



「だーめよ、爪立てちゃ」と、めぐは

シャボンだらけのまま、にゃごを抱いて。(笑)



それっ。



瞬く間に、にゃごはシャボンだらけ(笑)




でも、ちゃーんとおミミに掛からないように。



しゃごしゃご、って

洗ってあげると結構、にゃごも

気持ちよさそう。




「.....図書館に来る、にゃんこさんやわんこさんが

居るところがあるといいかも」




そういえば、ペットは入れないので

車の中とか、外の並木にお散歩ひもを

留めてあったり。


ちょっと淋しそうだったっけ。



お風呂、はムリにしても


お庭の裏の、噴水のとこで

水浴びとか、涼しそうでいいかなー。


めぐの、夢はふくらんで


シャボン玉みたい。



シャワーといっしょに、ふーわふわ。



「ちっちゃい頃、おじいちゃんが作ってくれたっけ、

おっきなシャボン玉」



なんとなく、思い出して

おじいちゃんがいなくなっちゃったので

ちょっと、淋しくもなったりもした。



「ずっと、長生きしてくれたら良かったのに。」




ちょっと、おじいちゃんに逢いたくなっちゃったな....





そう思った瞬間、めぐは

体が揺らいだような気がして。




めまいかしら、と

思ったけれど

気持ちははっきり。



「病気じゃなさそう...地震かしら?」




めぐ自身、気付いていないけれど


図書館で、時間を逆転させたのは

強く願ったから。



今は、なんとなく思っただけ。


こんどは、めぐ自身が

おじいちゃんの所へ飛びそうになった、みたい。









天使さんは、めぐの能力の変化を

感じ取っていた。


もちろん、それは喜ばしい変化なのだろう。

パフォーマンスとして持っていたものが顕在するのは。


でも。



それは、天使さんの持つ天界の者の雰囲気とは

やや異質な。


ルーフィの魔法、に近いような

魔界に近い異質なエネルギーを呼び寄せている、そういう感じだった。



いま、天使さんはめぐに宿っているけれど

その、魔法をめぐが使う事で


異質なエネルギーの雰囲気に、ちょっと困っていた。


音楽で喩えるとすれば、天界の雰囲気が

バロック音楽のような、理論的に美しい響きを

数学的に割り切れる、キレイな波....。

バッハの「バディネリ」のように収斂するものだとすれば


めぐの使った能力は、もっとエモーショナルな、ロック・ミュージックのように

ビートを含む波、だった。


それは激しさをも内包する、まさに魔法と呼べるような。

やや淋しさをも含む、例えばLed Zeppelinの「Stairway to heaven」の

ような、荒々しさを持つものだった。


快活な、今のめぐの気分でそうなるのだろうけれど

そうした違和感は、宿っている天使さんとしては

ちょっと気になるところ、だった。



不協和なエネルギーがこのまま目覚めると、共生するのは

難しくなる。




人間でもそうだけど、一緒に居続けるのは

相性がないと難しい。



気になるところがあると、無駄なエネルギーを費やすからだ。


「にゃごー、だいじょーぶ?」

めぐは、それでもちょっとぐったりしてみえる

にゃご、を気にした。


毛皮ふわふわなのが、水に濡れて

ちょっと疲れてるみたい。


にゃんこは、だいたいそうらしい。



でも、夏場になると

にゃんこだって暑いでしょって

人間はそう思うので(笑)



毛皮はちょっと暑く見えるし。




おふろでさっぱり。



大きなバスタオルでふんわり。

にゃごを拭いてあげると、いつもの感じに

ちょっと戻ったかも。




ドライヤーは嫌がるので(笑)。


そのままにした。



扇風機は好きみたいだけど。





お風呂にある、お父さんが置いた扇風機に

にゃご、をあてて。



風で、ふわふわ。

毛皮が、すこしづつ。



いつものにゃご、に戻ってくると


やっぱり暑いのか、のそのそ、ぐったり。



夏のにゃんこは、もの憂げだ。






にゃごは、もともと悪魔くんの転生だけど

どうやら、過去の記憶は覚えていないようだ。


もっとも、覚えていたとしても

動物さんと言葉を交わすことは、めぐ、にはできないし


めぐも、悪魔くんの事は知らないので

お話できる事もない。




「そういえば、前、にゃんこ、いたんだっけ。」



めぐは、遠い記憶を思い出す。

キジトラにゃんこで、おばあちゃんが貰ってきた子猫。

ミー子、だった。


雄なのに、なぜか「ミー子」なの(笑)は

おばあちゃんが、めぐ、位の頃に

飼ってたにゃんこの名前なので。



でも、みーこ、って呼ぶと返事したので

それで、みーこ、ってみんなで呼んでた。




結構長生きのにゃんこだったけど

ある朝、いなくなってしまって。


おばあちゃんは、「猫は、死ぬ所を見せないものなの」って

ちょっと淋しそうな事を言った。



それっきり、ミー子は姿を見せなかった。




そんなことを、ふと、めぐは

思い出した。


悲しかったけど。でも、いつか、楽しかった思い出だけが

残った。


死んじゃったところを見なかったから、かも

知れなかった。




「いつか....。」



にゃご、にも

そんな日が来るのか、って思うと

ちょっと怖くなる。



それは、めぐ自身も生きているから。



別れる事はとっても淋しい....。




「ずーっと、生きていけたらいいのに。」








めぐは、ほんとにそう思った。



「転生」の事を知らないから、もある。

天使さんは、とても寿命が長いし

悪魔くんも、もともとそうだった。



けれども、悪魔くんは転生したから

いつか、猫からまた転生するかもしれないし

そのまま猫、だったりするかもしれない。


そんな、途方も無い時間を

天使さんは、過ごそうとしている。


ずっと、生きられたらいいのに、と

めぐは、なんとなく思うのは


おじいちゃんの事を思い出したりしたから、かな?



おじいちゃんは、優しかった。

大きくて、物静かで。

にこにこしてて。


おじいちゃんに、喜んでほしい、

そんな風に思ったし


いつか、優しいおじいちゃんの

真似をしてたような、そんな気もする。



おばあちゃんも、そんな感じかしら。


おばあちゃんは、のんびりさんで

しっかりしてて。


いつも、いろんな事を

教えてくれる。




お父さん、お母さんも


そうだけど、ちょっと口に出すのは

恥ずかしいから(笑)


言わない。




いつか、年を取ったら

お話をしたいな、と思ってる。



頑張って、わたしを

育ててくれたんだもの。



めぐは、優しい子。


猫を飼ったり、犬を飼ったりしてたから

世話が大変、ってことも分かったし

お金かかる事も(笑)


死んじゃったら悲しい事も。




そういう人生の記憶を持って、人は生きている。




天使さんは、そんなめぐ、を傍観していて

少し、羨ましいって思ったりした。


天使には、家族は無かったりするし

それなので、恋、って感覚も

ちょっと、人間とは違う、そんな気もした。



それなので、ルーフィにめぐが

恋してる、その感覚は分かるけど


天使さんの感じかたとは違うのかな、と

思ったりもした。

例えば、恋したとしても

天使さんは、競ったり

争ったりする事は無い。


もともと、それは

家族を作る為の、人間の行為なので

子供を生まない天使には、そういうものは

必要ない。


ただ、恋した人の幸せを願い、お手伝いをする。


それが、天使さんの愛である。


憎んだり、怒ったりする事もない。



争いがなければ、起きない事である。




なので、悪魔くんの感覚は、天使さんには

分からないから


いつか、天界に昇る必要があるのだけれど。



そのために。いま

にゃごになっている。



ずっと、良い事をして

次は人間に転生しなくては、ならないけれど

それは、果てしない旅になりそうだ。





「それでね、図書館のお庭のお池を、プールにして

わんこさんに泳いで貰ったら、いいと思うの」と

めぐは、アイデアを楽しそうに話した。


図書館の裏手には、ちょっとした池があって

普段は水が入っていない。

大雨の時とかに、水を貯めるように出来ているので

栓をしておけば、自然にお水が貯まる。



「いいわね」と、わたし。



「いいんじゃない」と、ルーフィ。


夏向きで、楽しそうなイベントだ、と思う。


大人の視点だと、いろいろ、心配はあるけれど

でも、今は夢、だもの。



楽しくすごそうね。


と、わたしはめぐに、心の中でつぶやいた。



「主任さんに聞いてみよっよ」めぐは、楽しそう。




それで、図書館はお休みだったけど

司書主任さん、ふくよかなおじさんだけど

とっても優しくて、いい人。


電話番号は、連絡網で知っている(笑)ので

お休みだけど、たぶん、図書館にいるだろうと思って

電話してみた、めぐ。


ちょっと、ご迷惑かな....。と

思ったりもしたけれど、でも、優しい主任さんだったら。

許してくれると思う、女の子のわがまま(笑)。


でもまあ、許されるうちが花である(笑)。



許されるうちに控えないと、そのうち自然に許されなくなる(笑)

それも、人間としての自然な心である。


わがままが許されるのは、見た目が愛らしいからではなく

慈しみの心を持って扱ってくれるから、で


そうでない男は、危険な存在である(笑)と、おばあちゃんは

教えてくれる。



もっとも、めぐの場合図書館しか行かないので

危険な男など、知り合える筈もないのだが(笑)女子校だし。




「あー....ああ、君か。なに?」

と、のどかな声で、主任さんは答えた。



めぐは、アイデアを伝える。



「うん、お水を張っておくだけなら大丈夫だと思うな。」と、

主任さんは言ったので、めぐは嬉しくなった。



図書館の前で、暑い夏の日に

わんこさんが待ってたり。


ちょっと、かわいそうに思ってたから....。



涼しい日陰の、お池のそばなら、わんこさんも

うれしいんじゃないかしら。




めぐは、うきうきしてたけど、主任さんの言葉に

ちょっと、どっきり。


「あのね...その...言い難いんだけど。

うちの甥がね...今度の、試写会に...その...。

いかがですか...。と」

主任さんは、まるで自分がデートに誘っているくらいに

緊張して、たどたどしく言葉を選んだ。




めぐは、返事をどう、していいかわからなかった。



そういう誘いを、受けたことがなかったから。



男の子に、会ったことなんてなかったし...。



試写会と言うのは、図書館の3階ホールで

個人映画作家の作品を時々上映している催し、の事。




司書主任さんの甥御さんは、映画作家を目指している方、と

伺った事がある、と

めぐは思った。




どんな方か分からないけど....。でも、主任さんの甥御さんなら...。




そうは思ったけど、めぐの心には、ルーフィが居て。

はっきりはしないけれど。





どうしようかな.....。

「はい、わかりました。でも、その日はアルバイトがある

日だと思います」と、めぐ。



断るのも悪いし、主任さんの甥御さんなら

悪い人じゃないだろうし。



映画を図書館で見るって変なデートかしら(笑)


でも、安全でいいかな。





そんなふうに、めぐは

いろいろ考えた。



オトメゴコロはフクザツだ(笑)。



ルーフィさんが好きです。



その気持ちは、変わらない。




わんこさんやにゃんこさんは、すぐに

赤ちゃんが歩けるので


一度に、5匹も6匹も産めて

かわいいのだけど。



でも、人間は確かに大変そうだ。




そういう訳で、誠実なダンナさんがひとり。

そういう家族が、理想らしい。



そんな事は、教わる事もないけれど

自然に、そうなっていくものだし。



ダンナさんとて、あちこちに奥さんがいて

赤ちゃんがいたら、忙しくて大変だ(笑)

お金もかかるし。




なので、合理的に出来ているのが

人間の家族、である。




天使さんや悪魔くんのように、機能がなくて

心だけで恋する、のも

自由でいいけれど。



人間としては、物足りないような気もしないでも、ない。


真剣に、ひとりの人を思ったり、思われたり。


ひとりの人を思いあったり。


そういう思い出も、あってもいいものだ。



失った恋も、美しい思い出になったり。








次の日、学校が終わるのを待ちきれなかったので

主任さんに、お池の栓をしておいてもらった。



お水がたまるまで、しばらくの辛抱(笑)



雨、降るかなー......。










その日の朝も、普通に目覚めたわたし。

きょうは、土曜なので

めぐの学校も、おやすみ。



だけど、図書館は開いてるので

午後から、司書の仕事に

めぐは、向かう。


土日は、休んでもいい事になっている。

めぐは、学生だし

図書館は月曜休みだから


そうしないと、一日休める日、が

なくなっちゃうから、って

主任さんが、計らってくれるから。


でも、たいていめぐは

土日、図書館が忙しいから


お手伝いに行っていた。



それで、今日は「デート」だからって(笑)

主任さんが、休みでいいよ、と言うのに

めぐは、仕事をします、と言った。


ちょっと、デート、なんて

言葉が恥ずかしかったのもあるから

お仕事、と言う事で

図書館に行きたい、そういう気持ちも

あったりもした。



やっぱり、ルーフィの事が

好きだったので


本当は、断りたいと

そう思ってたけど。


でも、断るのも悪いし、ただ、映画見てくださいと

言われるだけなら、断らなくてもいいかな(笑)


なーんて。


そんな、まあ

フクザツな気持ちで(笑)

きょう、を

迎えためぐだった。





その話を、聞いたわたしは

「モテるわねぇ」と冷やかしたりして

自分の分身(笑)が

モテるのは、悪い気はしない。



そのうち、ルーフィは

いなくなっちゃうんだし。



それなら、こっちの世界で

いい人を見つけてくれた方が

安心、な



そんな気もした。



その話を、ルーフィにもしたけど



「そうだねぇ。それはいいかもしれないね。」と

返事しながら、ルーフィは別の事を考えていた。


天使さんの、元悪魔くんとのおつきあい(笑)には

時間が掛かる。


その間、神様が待ってくれるだろうか。


神は気紛れな一面もある。



それに....


めぐに、魔法を使う能力が芽生えてくる、のは

当然である。


今のMegと同じ血統なのだから。



それで、天使さんが

めぐと一体で居づらくなるのは、当然で


別離する事になったら、神は

それを好機として

めぐの人生のリセットを提案し、天使の帰還を

命ずるのではないか?






しかし、もし、「リセット」が行われなければ

めぐの記憶、それと

おばあちゃんの記憶に


異次元からの来訪者、つまり

ルーフィとMegの事、とかが

残る事になり


神様としては、それを消去したいと

思う事だろう。


それが、後々のめぐの

人生に影響を与えると、問題になる。




と、ルーフィは推測した。

しかし、めぐが魔法使いとして

時空を旅する能力を持つ、となると

リセットする意味はなくなる。


なぜなら、自身が異次元を旅する存在になるから、でもあるし

魔法使いは、魔界に近い存在である。

天界の盟主であろうと、一存だけで

魔法使いの人生を左右する事は出来なくなるから、だ。



その魔法使いの世界、などと言うものは存在せず

どこにも属さない異端の者、と言う事になる。


その雰囲気が、天使さんに相容れない物であることもまた、事実である....。


いつか、めぐ、と

天使さんは別れる事になる。


めぐ、の気持次第だけれども.....。


魔法使いとしての人生を進むなら、天使さんとは別離。

たぶん、天使さんは天に戻る事になり、にゃごの転生を

見守る事もできなくなる。


でも、そうでないなら

神様は、めぐの時間軸を逆転させて

赤ちゃんの時から、人生をリセットさせて

初めから無かった事、にするだろう。


そうすれば、天使さんと悪魔くんの出会いも無かった事になる。

少なくとも、元悪魔くんは、そのまま悪魔くんで....

魔界から出る事もないだろう。




そんなことを、めぐが考えているかどうかはわからない(笑)。


きょうは、とりあえず、楽しい初デート(?)


ルーフィとは、いつも一緒なので

それをデート、なんて思う事はなかったけれど。



改めて誘われるのは、なんとなく緊張も感じたり。



図書館へは、お昼少し前に着くように

めぐは考えた。

几帳面な性格なので、遅刻をした事はない。


そういう所は、司書向きである。




着るものとかにあまり、深い拘りもなく

簡素で綺麗なもの、愛らしいものを好んだけれど

そういうところも、じつは、図書館のアルバイトに採用されるには

大切な部分だったりする。


文化的な場所なので、相応の身だしなみができる人が向いている訳、だ。




今朝も、デートに誘われたとは言え、いつもの服装で望む。


別段、その方に失礼でなければ良い。

もともと、ルーフィが心にあるので


誘われたとしても、その人と恋愛になることは無い、と

めぐは思っていた。




クロワッサンド、めぐのお母さんの発明した

楽しい朝食を、みんなで楽しく頂いた。



「めぐちゃん、かわいいものね。いいなぁデート」なんてわたしが言うと


めぐは、ちょっと恥ずかしそうにうつむき加減になった(笑)。


クラスメートと話してるみたいで、わたしは楽しい。


わたしのハイスクールだった頃、ってデートなんて

なかったなぁ(笑)。



とか思いながら。


やっぱり、天使さんが宿っているせいかしら、と

わたしは思ったりもする。

めぐは、それでも楽しそう。

まあ、女の子だから

誘われる、って事は

ないよりあった方がいい、のだろう。


映画を見てください、という程度の

軽いお誘いなら、気楽に答えられるから


気遣いのある、良いひとね、と

わたしは思った。



みんなで、ひさしぶりに

一緒に図書館に行った。



「いつも、一緒だと楽しいね」と、わたし。


「そうだね」と、ルーフィ。



めぐも、楽しそう。


いつもみたいに、ルーフィと、わたし。


めぐ。




図書館は、いつもと変わらないけど

お昼前だと、空いていて静か。



ちょっと、裏のお庭に回ってみると

きれいなお水がいっぱい。


「わぁ、きれい!これなら、わんこさんも喜ぶね」と、めぐ。

きょうも暑くなりそうだ。



地下駐車場で、クーラーを掛けた車の中で

待っているのも、わんこにとっては辛いと思うし。



ガソリンがもったいない(笑)。



それを言うとルーフィは「うーん、主婦っぽーい」と

ユーモアで答えた。



おばさんっぽいかしら(笑)。

でも、地下駐車場の空気も悪くなるし。暑いし。



それなら、お池に。




お水を張ってあると、自然に、みんな

お水のそばに集まってくる。

わんこも、にゃんこも。


おとなしいにゃんこは、おもしろいけど

首輪にリード、なんて子も居る。



そのうち、わんこの中から

お水好きな子が、泳ぎだしたりして。

いぬかき、かしら。




シュナウザー、レトリバー、ラブラ、フレンチ。


気持ち良さそう。



その、わんこたちの

気持ちよさそうな泳ぎを見ていると

涼しそうで、わたしも泳ぎたくなっちゃった。



「泳ぐ?」と、ルーフィはにこにこ。



「ばーか」と、わたしはあごをつきだして(笑)。



水着持ってないもん(笑)。








めぐは、いつものように

ロッカールームに行って

黒いエプロン、オレンジの文字で

としょかん


と、書いてある

いつもの服装で

アルバイトに臨んだ。


きょうは、映画を見るのだけど

それも、アルバイトにしていいと

主任さんは言ってくれた。


でも、それはちょっと

悪いから。


アルバイトは、途中で抜ける事にした。


そろそろ、映画の試写会が

始まる頃。

アンデパンダン、という

フランス語でインデペンデンスを意味するらしい

言葉で、独立した作家の催し、を

意味しているらしい。

芸術家っぽい雰囲気、ちょっとおしゃれかな、と

めぐは、なんとなく思っていた。



そんな時、裏のお池の方でひとの叫び声が

あがった。


なにかしら?と

めぐは、声のする方向へと

裏手の通路から、お池の方へと向かい

ドアを明けた。



「あっ。」と

めぐも、ちょっと声をあげてしまう。



お池に入っていたわんこたちを追って

かわいいこいぬが、お水に入ってしまって


驚いて、溺れてしまいそうになっている。





次の瞬間。



湖面が揺らいだ、と

思うと


何かが、その

溺れている子犬を、ひょい、と

くわえて

浅瀬に跳び去ったように見えた。




一瞬だったので、よく見えなかったけれど

それは、おうちで

お留守番をしている、にゃご、に

似ていた。



「にゃご?」



めぐは、その光景に

びっくりした。




ふつうのこねこ、なのに....。






その、にゃごの活躍を

池の畔にいた、ルーフィとわたしも


見ていた。



「あれって、にゃごだよね」と、わたしは

ちょっとびっくり。



「そうだね、魔力を持っている筈は

ないけれど」と、ルーフィ。



転生して、猫として生きているのだから

悪魔くんだった時分の記憶は、忘れている筈だけど

もともと、寡黙だった彼が

いま、ただの猫として生きているのか?


もし、そうでないとすると....





その瞬間の雰囲気を、ルーフィは感じ取っていたけれど

魔力を持つ者の雰囲気はなかったようだった。






「うーん」ルーフィは考える。




まさか、だけれども

天使さんが、にゃごを促して

助力したのかもしれない。




にゃごが、いいことをすれば

神様だって、転生を認めてくれるかもしれない。




そんな、天使さんの願いが

通じたのかな?



天使さんの幸せは、みんな、が

幸せになってくれる事。




そのため.....?


元悪魔くんの幸せ、は

天使さんのそばにいること、だけど



いま、にゃごになっている彼が

それを、感じ取れているか、は

わからない。




人間に、運良く転生できても

前世の記憶を持っているかは

わからない。




それでも、悪魔くんは

魔力をすてて


転生を選んだ。



天使さんは、彼に

幸せになってもらおう、と。



無償の愛は、美しい。博愛と呼ぶべきだろうか。







「じゃ、そろそろ」司書主任さんは

カウンター業務についているめぐ、に


映画の試写会に行くように、促す。



「すまないねぇ、迷惑じゃなかったかな」と

主任さんは、甥のわがままを詫びる。




「いえ、迷惑だなんて....」と、めぐは言う。


迷惑ではないけれども

はじめて、知らない人に会うのは

あんまり好きじゃないめぐ、だった。





....そういえば、なぜ、ルーフィさんを想いはじめたのか

わからない。


めぐは

そんなふうに回想しながら

3階へ、エレベータでなく

吹き抜けにある、まわり階段を歩いていった。


中央部が大きな吹き抜けになっていて、重厚な階段の手摺りは、オーク。

ステップには、消音のためにクッションが敷かれている。


近代建築の粋を凝らしたようなデザインの図書館を、めぐは

気に入っていた。



ずっと、ここで働けたらいいな。



そう想ったけれど、それは、現実ではなくて

めぐのイメージの中の、そう、4次元のものだ。


時間軸・空間軸が伸縮自在なイメージ。

だけど、全体でエネルギーの総和は保たれている。

例えば、空間軸を縮めれば、時間軸は自由に伸縮できる。

その反対もそうだ。


なので、思い出の空間は記憶の中にしか存在できない。

その代わり、時間軸を自由に、つまり

遠い過去の記憶を一瞬に呼び出せるのは、ほとんど0次元のイメージでしかない

空間だから、無限大に近い時間軸の中を自由に動けるのである。



司書主任さんの甥御さんが作られている映画、は

それを、2次元の平面に展開したようなものだ。


そこに、作り手のイメージを変換していく。


ロー・テクノロジーなメディアだけれど、それ故に面白い。




ただ、3次元の時間軸に固定され、つまり

長い時間座って居なければならないのは、今日的でなかったので

短編映画が今の主流だった。





3階への階段を昇りながら、めぐは

それでも、ちょっと楽しそう。


新しい出会いがあるのは、それはそれで

女の子にとっては、うれしい事だ。




ミニ・シアターには

お客さんはまばら。




大きなテレ・ヴィジョンで鑑賞するので、明るいところが

どことなく救われる(笑)。




「はじめまして、お呼び立てして申し訳ありません」と

その、主任さんの甥御さんは


爽やかに告げた。

すらりと長身で、細身。

和やかな雰囲気は、どことなく

あの、主任さんに似ていた。



映画作家と言うと、気むずかしそうな


おじさん、をイメージしてしまうけど(笑)



映写技師、と言うとぴったりくるような

さっぱりした人だった。



めぐも、定型的な挨拶をして


とりあえず、salute。




映画そのものに、格別の主張を持っているような

そういうタイプでもないらしい。


映画作りが楽しくてしている、そういうタイプに見えた。



映画そのものは、めぐにとっては

よくわからないものだったけれど(笑)


意外に、好青年だった事で

めぐも安堵した。


あの、司書主任さんの親戚なら

まあ、大丈夫だとは思うけど(笑)



気質は、遺伝するので

甥御さんだと、遺伝情報も似ている。

気質は近いもの、かもしれなかった。




ルーフィに、めぐが惹かれたのも

そんな理由があるのかもしれなかった。


ルーフィとMegは、同じ魔法使いとして

遠い先祖が近しいらしい。


それなので、こちらの世界のめぐ、と

近しい事も十分考えられた。




もっとも、魔法使いだと

めぐが決まった訳でもないのだけれども。






映画は、めぐには

なんだかよく分からないものだった(笑)


でも、楽しんで作っている事は

なんとなく伝わってきた。



本を読んできて、分かった事に

書き手の気持ちが伝わる、って事があったっけ。


そう、めぐは思った。


書き手が楽しんで書いているものは、

それが、難しい理論でも

楽しさが伝わってくる。



書いている人の、書き方に

自由な発想とか、喜んでる気持ちとか。


文章で出てくる。


理論的な本なら、例えば

いろいろな推論をしても、アクティヴに、肯定的に

明るく推論をしていたりする。



そういう姿勢は、例えば時間に追われていたら

できないだろうし

3次元の時間軸に縛られる生き方って

大変なんだろうな、と

めぐも思ったりした。



めぐ自身は、ルーフィに出逢って

時間旅行をする人、を

なんとなく憧れを持って見たから


そんな風に思うのかもしれないけれど。



映画が終わって。

でも、明るいミニシアターだから

映画の世界から戻る、なんて

感じじゃなくって。



司書主任の甥御さんは、映写を終えて


「ありがとうございます、おつきあい頂いて」

と、だけ言って、片づけに入ったので


めぐは、なんとなくホッとした。



連絡先とか聞かれたりしたら、ちょっと困ってた

ところだったので(笑)



ご挨拶だけ済ませて、1階に戻って

仕事をしようと思っていたら、司書主任さん、

いつもみたいににこにこして

「やあ、ムリいって済まなかったね、映画、どうだった?」



と、聞くのでめぐは

「芸術的ですね」と、よく分からなくて

感想に困ったので(笑)


そんな風に答えた。


司書主任さんは「ははは、君は正直だなぁ。

私も、時々見るけど、よくわからないんだ」と。

丸顔でにっこり。


ひとのよさそうな司書主任さんは、でも

恋人とか、いらっしゃらないのかしら、と

めぐは、ちょっとおもしろい想像をした。



甥御さんは、姿のいい青年だけれども

めぐは、見た目にそれほど惹かれないタイプみたいで

安心できる、司書主任さんタイプの方が

なんとなく疲れないな、と


そんな気持ちを持った。






やっぱり、いきなり

見ず知らずの人から

誘われると、身構えちゃうのがホントの気持ち

だと思う。



そういう時に、気楽につき合えるタイプじゃない。

めぐは、そういう子だった。


ルーフィも、司書主任も。


めぐを守ってくれるような、お兄さんタイプだから

安心できて。



映写技師さんも、人はいいのかもしれないけれど

どことなく、若者らしいアグレッシブな雰囲気を

感じて。


それが、もし、自分に向けられたら怖い、と

思ったりもするのだった。









それはそれで、楽しい出来事が

あるのかもしれないけれど。

でも、今のめぐにとっては

いまの気持ちは、自然なものだったから

特別に、変えなくても

いい。

そういう、素敵な季節を

生きている。


その時は、気づかないけれども

後になって、振り返ると

そう思う。

そんなことが、誰にでもあるものだ。


「じゃあ、ありがとう、本当に。」

司書主任さんは、いつもの

のんびりした表情で。


すこし、忙しかったからか

汗の

浮かんだ額で、そう告げた。


その、汗の感じを

めぐのクラスメートたちは、

ちょっと嫌ってしまうような、そんな季節だったりもするけれど。

めぐは、そんな風には思わなかった。


お父さんみたい。


そんな感じにおもうだけ、だったり。めぐのお父さんは、優しいから

幼い頃、いつも一緒にいて

守ってくれる、神様みたい。


そんな存在に感じていた。



それも、ファンタジーなんだろうけれども

でも、少年期にはよくある


現実と夢想の

合間を、曖昧に漂っているような

いまの感じを、めぐは好きだった。


幼い頃から、ずっとそれは続いていて。


その世界が、本の世界に

つながっているようにおもっていたりもした。



そんなふうに、お父さんが

優しかったので、めぐは

お父さんを嫌いにならなくてすんで

よかた、と思っている。

お父さんに、怒られた記憶が

ほとんどないからだ。

それは、やっぱり

お父さんが、めぐのことを

可愛がっていてくれたから、

なんだろうな、って

いま、すこーしだけ

大人にちかづいて

めぐは、そんなふうに思う。



図書館で、小さな子が

泣いているのを見かけて、

お母さんに叱られて、泣いてる。


そんな情景を見かける時、

かわいそう、って思うことが多かったりする。


それは、子供の気持ちが

なんとなく、想像できるからで

思いのまま、気のむくままに

遊んでいたい、って思ってて。



そんな時、お母さんは

3次元的な、日常のスケジュールに追われて。


それで、子供の自由な感覚、4次元的なそれを

3次元に合わせようとして、

いらいらしたり。



そんな構造が、おぼろげに

わかってきたのも

めぐが、ルーフィと会って

時間旅行のお話を聞くようになって。


物理学、を

勉強するようになったから、かな?



なんて、思ったりも、した。



めぐのお父さんは、幼いめぐに

いらいらしたりしなかったのかなー

なんて、思ったりしたけど



いつも、にこにこしていて

のんびりしているおとうさんは


おばあちゃんに似てるのかなー、

なんて、そんなふうに思う。



おばあちゃんは、おとうさんのことを

「やんちゃな子だったのよ」

って、お庭のおおきな木に登って

おりて来ないで、夕陽を見てた事、

2階から、トランジスターラジオを

落として。

ラジオがかわいそう、って

ずっと撫でて、ごめんね、って

泣いてて。


それがきっかけで、ラジオを修理する事を覚えた、こと。




いろんな思い出を、話してくれたけど


いまのお父さんからは、想像できない

優しくて、行動的な少年、どことなく

ルーフィに近いのかしら。



そんな事を思うと、ルーフィがいつか

お父さんみたいにまんまるに

なちゃうのかな(笑)なんて


その絵を想像して、おかしくなっちゃって

笑ったりしたり。



ひとりで、笑ってると


だれかがみたら、変、かしらってちょっと恥ずかしいけど。



それも、めぐの心が

自由に、4次元的に飛翔していて

それは、ちいさな子供の心が

自由なのと、そんなに

かわらないような。



そんな気がして、それもまたちょっと

はずかしくなっちゃう、めぐ、だったりした。



お父さんもそうなのかしら?w




お父さんは、お母さんと

どんな恋をしたんだろう、なんて

中学生の頃に、聞いたっけ。

めぐは、なつかしく

思い出に浸ったり。



そんなことを思うのも、

恋って気持ちがちょっと不思議だった

そんなせいもあるのだけれど。


とつぜん、だれかが気になって。

いつも、その人の事を

考えたり。


それって不思議だな、って。


めぐにとって、ルーフィは

別世界の人だから、いつかは

お別れすることになるんだろうけど。

でも、好きな気持ちは

計算してするんじゃないもの。



そんなふうにも、めぐは思った。



それは、にゃご、いまは

にゃごになっている、元悪魔くんも

同じだった。


本当なら、魔力を手に入れていたのに


それを捨てて転生した、悪魔くんも

やっぱり、好き、と言う気持ちのままに

行動している、のだろう。



もちろんその事を、めぐは

たぶん知らない。


なので、図書館のお池で

にゃごが大活躍した意味も

どうして、子猫が

そんな事ができるのか?も

わからなかった。


とりあえず、めぐのそばにいる

にゃご、は


ふつーの子猫にしか見えないから

「見間違いなのかなー」


なんて、にこにこしながら思ったり。




土曜日の図書館も、そろそろ

終わり。



いろいろあったなぁ、と

すてきだった一日を、思い返しながら。



映写技師さんも、思ったよりは

怖くなくって、よかったし。


でも、改めてデート、は

ちょっとご遠慮したかった。


やっぱり、ルーフィが好きだもん。



心のなかで、でも「ルーフィ」って

さん、なしに呼んでみると

どきどきした。



恋人になったみたいな、そんな気がして。



それは、ファンタジー、なんだけれど、

そういう時間って、楽しくて

いつまでも、心のなかのルーフィと

恋していたかった。



不運なことに、(笑)

ルーフィは、いつもそばにいるので

本物を目の前にしていると

やっぱり、夢想には浸れないので



ひとりで恋してるのも、いいかしら。



そんなふうに思う、めぐには

なので、映写技師さんみたいな

現実のおつきあい、は

まただちょっと早いのかな。?




そんな感じかもしれなかったり。



曖昧な、そんな季節は

駆け足で過ぎていってしまう。


めぐ自身が、そう思えば

いつでも、その季節は

過ぎていってしまう。




なので、「のんびりでいいの」と

めぐは思ったし、司書主任さんも

そんな、めぐを

大切にしてくれていた。



その、いろいろあった土曜日も

なんとか、終わり。

図書館は、帰るひとで賑わうように

エントランス・ホールをノイズが包む。

アート・オブ・ノイズなんて

気取るつもりはないけれど

めぐには、そんな都会の喧騒も

楽しむ気持ちが、あったりもした。


めぐのお母さんも、楽しいひとで

ジャズ音楽を聞いたり、ダンスをしたりと

毎日を楽しく暮らすひとだったから

そのせいも、あったりもするかもしれないな、と

めぐ自身は、思っていたりもして。


幼い頃の思い出に

縁側にあった、ラジオ、脚のついた

ステレオから

英語の放送と、ジャズ音楽が

いつも、ながれていた。


そんな記憶が、めぐ、には

朧げにあったりもする。


大きな木があって、お風呂場が

外にあって。


やっぱり、桧のお風呂だった。


いまのお家、じゃなくって。

前に住んでいた、公園のそばの

おうちだったっけ。



その公園にも、大きなお池があって。


いつも、杭の上で

カメさんがお昼寝してたっけ。。


どうやって、杭に登るのか

不思議に思っていたけど


めぐが、お散歩で近くに行くと

カメさんは、ぽちょん、って

お水に飛び込んじゃうので

ついに、わからずじまい。



「いつか、あの公園のそばのお家をたずねてみたいな」


なんて、めぐは思うのだけれど。



お池、と言うと。


めぐは、思い出した。



お池にお水を入れて、わんちゃんが

泳いだりして。


それで、困ったりしたことは、なかったかしら。



主任さんは「べつに、かわったことはなかったね」


と、おっしゃってくださっていたけど。



わんこさんも、泳いだりまま


おうちに帰るのも、ちょっと大変かもしれないわ。



そんな風にも、思って。



「わんこの美容院さん、来るといいですね」と

主任さんに言ったり。



「そうだね、おおモテかもしれないね」


と、主任さんは、いつもみたいに

にこにこしながら、答えたりして。


夕暮れの図書館は、のんびりと

時間が過ぎていくようで。


そのことも、めぐを

ご機嫌にする理由だったりもした。




時間って、自然に

淡々と過ぎていくものだけど

それは、いま、わたしたちが

住んでいる、この地球が

太陽の回りを、とんでいる。


それで、時間の単位が決まって。


一日が24時間で、って

割り切れない数字になったりして。


不思議におもったりもする、そんな

時間、ってものだったり。


それとは別に、時間の感覚は

ひとりひとりにあったりして。


生物学の本を見ると、お魚の

背中にある器官で

光を感じて、メラトニン、という

ホルモンが分泌され



それで、人間も時間を感じる、という


面白い話を、みたことも、あって。




でも、その感覚は25時間で

一周なので


おひさまに、朝、おはよう、って

当たるのも大切で



そうしないと、時間感覚が

わからなくなって、いらいらしたりする。


そんなことも、書いてあったりして。



それで、いつか、児童図書館で見た


いらいらしている、若いお母さんと

坊や、そんな情景を

思い出したりもして。


いろんなことが、科学と時間に

結び付いていて。



時間を旅するって、結構

大変な魔法なんだ、って

いまさら実感する、変なめぐ、だった。


めぐ自身は、その能力が

目覚めている実感はないけれど。






とりとめなく、考えていると


ルーフィとMegが、5階から

降りてきて。


めぐの楽しい空想も、終わる。。


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