表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】MOBILE FORMULA 2101 -スターライガ-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
スペシャルエピソード+オマケ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/75

紅の翼(前編)

今回の話は本編40~41話「GUS BUSTERS」と同時期の時間軸にあたります。

オリエント連邦において最も国際便の発着数が多いラッツェンベルグ国際空港。

今、この場所は混乱状態に陥っていた。

「利用者の皆様は空港職員の指示に従い、落ち着いて避難を行ってください! 繰り返します―」

隣接するラッツェンベルグ空軍基地から「所属不明機の飛来多数」という緊急連絡を受け、空港側は利用客たちの避難誘導を開始した。

歴史上幾度となく本土決戦を経験してきたオリエント連邦は有事における避難場所の確保を重要視しており、空港のような公共施設にはシェルターが設置されている。

職員たちは日頃から行ってきた避難訓練の成果を活かし、利用客たちを次々とシェルターへ押し込んでいた。

「あなたたちは2番シェルターの中でお客様を守りなさい!」

「先輩はどうするんですか!?」

「私は4番シェルターの方に行くわ。大丈夫、軍隊の人たちが何とかしてくれるわよ」

心配する後輩たちにそう告げると、先輩職員の女性は別のシェルターへ向かうのだった。


同じ頃、空港周辺空域も管制塔から着陸中止を命じられた民間機でごった返していた。

「こちらAOL919便、今ニアミスしたのは所属不明機か!?」

B-787を運航するエア・オリエント919便のすぐ近くを6機編隊のスターブレイズが通り過ぎる。

「いや、それは空軍のMFだ。彼女らや他の便と空中衝突しないよう慎重に飛行せよ」

「クソっ、どうせ所属不明機とやらは空軍基地を狙っているんでしょ!」

そして、スターライガ本部があるヴワル市を出発したレガリア、メイヤ、ルミアの3人も戦闘空域へ到着していた。

「スターライガから防空司令部へ、我々はどのポイントの敵部隊を排除すればいい?」

スターライガ小隊の指揮を引き受けたレガリアが代表として国防空軍へ指示を仰ぐ。

防空司令部と遣り取りする彼女の姿は現役時代そのものだ。

「ポイントD2―ハークレイン自然公園上空の部隊を迎撃してほしい。貴女たちの技量なら心配は無いと思うが……」

「了解、ラッツェンベルグへ土足で踏み込んできたことを後悔させてあげないとね」

通信が終わったのを見計らい、ルミアはレガリアへ話し掛ける。

「どうやら、ルドヴィレの方もヤバいらしいな」

「ええ、神経ガスが市街地でばら撒かれたってね……あっちは国防軍とライガたちに任せるしかない」

ラッツェンベルグ空港周辺に所属不明機が現れたのとほぼ同時刻、ヴワル市北部のルドヴィレ区にて化学兵器テロが発生。

スターライガはこちらにも戦力を派遣しており、ライガの率いる小隊が現地へ赴いているはずだ。

彼らの機体に毒ガスを中和できる装備は無いのだが、そこはライガの判断に期待しよう。

「……今は目の前のミッションに集中するか」

「そうね、各機は方位0-9-2で針路を維持。攻撃可能距離まで入り次第交戦を許可します」

「スパイラル04、了解」

メインスラスターのノズルが大きく開かれ、夕暮れの空を3機のMFが翔けていくのだった。


「首都にまで侵入を許すとは……我が国の防空網は飾りなのか!?」

その頃、スクランブル発進の指示を受け愛機スラッガーフェイスのコックピットに滑り込んだエレナは怒りに震えていた。

過去の戦争の教訓を基に構築されているはずの防空網が容易く隙を突かれ、よりによって首都ラッツェンベルグの中心部に敵機が現れたのだ。

まともな軍人……いや、常識人であれば祖国に不法侵入されたら当然頭にくるだろう。

「レム、出撃準備中に聞いた噂なんだけどさ……」

「何? 駄弁っていると隊長に怒られるよ」

ハンガーから滑走路までタキシングしている間、マルキとレムリーズは「気になる噂」について話していた。

マルキには防空システムの管制官を務める友人がいるのだが、彼女によるとラッツェンベルグ市外縁部の防空網が外部から破壊された痕跡が見つかったという。

つまり、防空網の隙を突かれたというより、敵勢力は最初から防空網を切り崩しての侵入を狙っていたと思われる。

それにしても、オリエント国防空軍が誇る世界最高レベルの防空システムを打ち破るとは……敵のクラッカーは相当のやり手に違いない。

「オリオン隊、離陸を許可する」

滑走路へ進入した3機のスラッガーフェイスはもう一度停止し、メインスラスターの推力をある程度のラインまで上げる。

垂直離着陸が可能なMFは原理的にいうと滑走は不要だが、同じ高度まで上昇する場合は飛行機のように滑走して速度を付けたほうが推進剤を節約できるからだ。

「了解。オリオン1、エレナ・トムツェック……発進する!」

脚部裏面に付いているローラーのブレーキを解除すると、滑走路の中ほどまで加速したところでスラッガーフェイスの機体が浮き上がり、夕暮れの空へ飛び立っていく。

隊長機に続いてレムリーズたちもスロットルペダルを踏み込み、滑走路から機体を離陸させる。

「オリオン各機、我々の任務は基地及び空港の防衛だ。突破されたら終わりだと思え!」

「「了解!」」

オリオン座のトライスターを思わせる綺麗なフォーメーションを組んだ3機は、他の部隊と共に周辺警戒任務へ就くのだった。


「スパイラル07から……レガリア、お前が乗っている新型の名前は何だ?」

レガリアはライガの話を聞いてからすぐに出撃命令を出したため、ルミアたちには必要最低限の情報しか伝えていない。

機体名は出撃してから教えれば良いと考えていたが、情報収集を行っているうちにすっかり失念していた。

「シュピールベルクよ。敵機は6機……1人2機ずつ落とせば平等ね」

「そっちでも捕捉できているか。んじゃ、機動力の高いお前の機体が切り込み役をやってくれよ」

可変機構のおかげで巡航能力に優れるファイター形態へ変形可能なシュピールベルクに対し、2機のスパイラルはフライングスイーパーに乗らなければ追従できない。

足が遅い味方機に合わせるとせっかくの高機動力を活かせないので、ルミアの提案は至極当然と言える。

「了解、あなたたちが来るまでに自分の分は食べ終わるわよ」

「お嬢様、新型機とはいえ無理を為さらないように……」

心配してくれるメイヤの気遣いに対し機体を振って答えると、レガリアはスロットルペダルを踏み込み最大加速。

小隊から突出し敵編隊の中央目掛けてシュピールベルクを突っ込ませた。


「シュピールベルク、交戦!」

まずは様子見のために攻撃は行わず、編隊のど真ん中を通過することで敵方の動きを探ってみる。

レーザーやマイクロミサイルの濃密な弾幕が迫って来るが、レガリアはミサイルアラートの警告音を聞きながら冷静な操縦で回避運動を行う。

すれ違う瞬間、敵機―ユーケディウムのドライバーと一瞬だけ視線が合った。

敵編隊の後方へ抜けたシュピールベルクは一気に高度を上げ、空戦で有利とされる敵機より高い位置を奪うことに成功する。

機動力が高い機体に乗る場合、速度性能を活かして素早くポジショニングするのが勝利の鍵である。

「(なるほど……追い縋って来るのは軽装備の2機だけか。ということは残る4機が『爆撃機』というワケね)」

可変機は空気抵抗低減を目的にファイター形態時のコックピットをカウルで覆う機構が組み込まれている。

元々狭い状態でカウリングされると更に窮屈になるが、機体各部のセンサーから送られる外部情報をカウル内側へ投影することで、ノーマル形態と変わらない視界をドライバーに提供できるのだ。

そして、レガリアは投影された外界の様子から敵機が役割分担していることに気付いていた。

反転して自機を追いかけて来るのが護衛機、それ以外が空軍基地を攻撃する本命なのだろう。

「ルミア、メイヤ! あなたたちは重装備の敵機をお願い! 残りの2機は私が仕留める!」

撃墜する順番としては対地兵装を搭載する4機を優先したいが、対MF戦重視と思われる護衛機の存在も無視できない。

「おう! 任せておけ!」

「了解、スパイラル04交戦します!」

結局、「爆撃機」の処理はルミアたちに任せることに決め、レガリアは自分と戦うつもりでいる2機を相手取ることにするのだった。


敵機の上方を陣取っていたシュピールベルクはクルリと機体を反転させ急降下、重力を活かした大気圏内ならではの加速方法で猛禽類の如く襲い掛かる。

機体上面―ノーマル形態における腰部後方ハードポイントに装備されたレーザーライフルを連射するが、この攻撃はかわされてしまう。

戦闘空域の真下の市街地まで危険が及ばないよう早めに機体姿勢を安定させ、レガリアは次の一手を考える。

ここまで間合いが近付いているのならノーマル形態での格闘戦に持ち込んでも良いが、可能ならばリスクの低い一撃離脱戦法で対処したい。

だが、彼女は可変用スイッチへ手を伸ばし接近戦を挑むことを決断する。

重戦闘機のような姿から四肢が展開され、紅いMFは人型へその形を変化させていく。

同時にコックピットを覆っていたカウルが移動し、コックピット内に外気が流れ込んできた。

「(射撃しながら突っ込んでくるか……ならば!)」

レーザーアサルトライフルを連射しながらユーケディウムが接近してくるのを確認すると、右腰ハードポイントからビームソードを抜刀し攻撃に備える。

そして、敵機がリロードを始めたタイミングでシュピールベルクのほうから逆に間合いを詰めていく。

手際よくリロードを済ませたユーケディウムは銃撃を再開するが、シールドを構えたまま突撃して来るシュピールベルクは全く意に介していなかった。

「ここは……私の距離よ!」

次の瞬間、武器を持ち替えようとしていた白いMFはシールドごと一刀両断されるのだった。


「(まずは1機! 次の敵は!?)」

撃墜確認もそこそこにレガリアは周囲を見渡し状況を整理する。

ルミアたちが健闘しているのはここからでも分かるが、自分が倒すべき敵機の位置が肉眼では捉えられない。

MFのコックピット構造の都合上、最も死角になりやすいのは真下である。

2050年代頃の機体からは股関部分に付いたカメラで確認できるようになっているが、それでも咄嗟にHISの映像へ視線を移すのは難しい。

だが、これまでの索敵と長年の経験からレガリアは「敵機が自分より低い高度にいる」と確信していた。

「(下から来るのは分かっている! あとはタイミングの問題ね!)」

その予想通り、下方から飛んで来るレーザーの光弾がシュピールベルクを襲う。

全てのスラスターを駆使した回避運動で攻撃をかわしつつ、レガリアは可変用スイッチを操作し再び機体を変形させる。

先程の工程を逆からなぞるように四肢が移動し、コックピットはカウルによって覆われた。

ファイター形態の機動力を活かして敵機を振り切りたいが、ここで一つの問題が浮上する。

「(市街地の上だとさすがにプレッシャーを感じるわね……)」

そう、戦闘空域の下にはラッツェンベルグ市の街並みが広がっている。

万が一の誤射は勿論、撃墜した敵機の残骸の落下や高速飛行で発生する騒音にも注意を払わなければならない。

あまりに低い高度で最高速を出すと、ソニックブームが地上へ被害を及ぼす可能性がある。

敵戦力の撃滅は確かに最優先目標だが、だからといって非戦闘員を巻き込んで良いという理屈は通用しないのだ。

民間人への配慮から機動力を引き出せないシュピールベルクを嘲笑うかのようにユーケディウムが距離を詰め、後方から攻撃を仕掛けてくる。

選択肢は2つ。

高高度まで逃げるか、ノーマル形態で応戦するか。

レガリアが下した決断は……。


格闘戦の間合いに入った敵機がビームブレードへ持ち替えているのを確認すると、シュピールベルクは機体前方のサブスラスターを用いて急減速。

オーバーシュートによるポジション逆転を狙う。

しかし、ユーケディウムも器用に速度を合わせることで対応し、両者の位置関係は変わらない。

このままでは自分のほうが不利になると判断したレガリアは「奥の手」の利用を試みるべく、左操縦桿の多目的ボタンを押した。

「(本当は姿勢回復用の装備だけど……こういう使い方もあるのよ!)」

その時、シュピールベルクの後部からパラシュートのような物が展開される。

これは「ドラッグシュート」と呼ばれる装備の一つで、本来はファイター形態で操縦不能となった際の姿勢回復や着陸距離の短縮に使用する物である。

スターライガ初の可変機ということで安全性を重視した結果、重量増加は覚悟のうえでバックパックに標準装備しているのだ。

ところが、レガリアほどのエースドライバーを以ってすればドラッグシュートも戦闘を有利に運ぶためのツールとして利用できる。

サブスラスター単独の時よりも強い勢いで減速したシュピールベルクはすぐに失速し、傘の部分を上に向けた状態でゆっくりと降下していく。

予想外の行動にさすがのバイオロイドも対応できなかったのか、ユーケディウムは減速し切れず敵機を追い越してしまう。

それを確認したレガリアはドラッグシュートを切り離すと同時に機体を変形させ、すかさず右手でレーザーライフルを構える。

「あなたの負けね……墜ちなさい!」

敵機のコックピットへ狙いを定めると、彼女は躊躇無く右操縦桿のトリガーを引いた。

ライフルから放たれた蒼い光線はユーケディウムのコックピットをドライバーごと貫き、操縦者を喪った機体は射ち落とされた野鳥のように力無く墜ちていく。

バックパックには当たらなかったため完全に破壊することができなかったのだ。

このままでは市街地へ墜落してしまう可能性がある。

「(死体蹴りはあまりやりたくないけど……悪く思わないでね)」

オリエント人の価値観では嫌悪されがちな「死体蹴り」だが、民間人への被害は最小限……いや、ゼロに食い止める努力をするべきだ。

レガリアは再びレーザーライフルの擬似スコープを覗き込み、今度は複数回に分けてトリガーを引く。

3発のレーザーが敵機を掠めた後、最後の1発が見事バックパックを撃ち抜き白いMFは爆発四散したのだった。


「(うーん、思っていた以上に射撃の腕が鈍っていたわね。ライガなら一発必中だろうけど)」

精密射撃が上手くいかなかったのはレガリアの腕というより、細かな調整が済んでいない機体側の問題である。

それはともかく、戦闘内容を振り返りながらルミアたちとの合流を目指していると、そちらの方も既に決着が付いていたらしい。

「へッ、重装備の機体なんざ私たちの前じゃ七面鳥同然だな!」

「ルミア、粋がるのはいいけど足元を掬われないようにね」

「分かってるって。こういう時こそ気を引き締めろってことだろ?」

レガリアは仲間が調子に乗らないよう窘めていたが、他の空域でも戦闘はほぼ終結へ向かっている。

事実、レーダーに映っている機影は国防空軍機と民間機ばかりであり、敵機を示す赤い光点は国防空軍の緑の光点に包囲されていた。

しかし……何かおかしい。

バイオロイドはかなりの機数で飛来してきたうえ、その中には対地攻撃目的と思われる重装備の機体も少なくなかった。

……せっかく国防空軍の強固な防空網を打ち破ったのに、貴重なチャンスを放棄して撤退する必要があるのだろうか?


「……あれ? IFFの故障かな? 空港敷地内に敵の反応があるんだけど」

無線通信で偶然耳に入ってきた国防空軍ドライバーの一言。

それを聞いたレガリアはハッと閃き、声の主―レムリーズへ質問をぶつける。

「そこの君……IFFの故障を疑っていた貴女よ。ちょっと空港の駐機場を見て頂けない?」

オリエント人なら知らぬ者はいない有名人からの名指しに驚いたレムリーズであったが、レガリアの指示通り彼女は空港上空をフライパスする時に地上の駐機場をチラリと見やった。

別に特段異常は……いや、よく見ると本来なら空軍基地に置かれるべき戦略輸送機「C-5N ハイパーギャラクシー」が数機止まっている。

曲がりなりにも軍事機密が詰まっている輸送機を民間空港の目立つ場所に駐機するなど、普通ならあり得ないことだ。

「ギャラクシーが3機……? 隊長、輸送機を空港側に駐機するという話を聞きましたか?」

「いや、それらしい噂は知らないな。オリオン1から防空司令部へ、空港にギャラクシーを停めているのは上層部の判断か?」

これまで地上に注目する機会が無かったので気付かなかったが、よくよく考えたら確かに妙な状況である。

不審に思ったエレナは防空司令部を問い詰めてみるが……。

「こちら防空司令部、貴官の言うC-5は本来オーバーホール作業中の機体のはず―」

空軍基地の管制官が返答していたその時、空港側で中規模な爆発が連続して発生する。

同時にC-5Nの機首が持ち上がり、貨物室から数両の戦闘車両と歩兵が現れる。

彼女らの矛先は空港側の施設に向けられていた。


「ゆ、輸送機から敵が出てきた! 空港のターミナルを攻撃しているぞ!?」

運悪く離陸直前に足止めを食らっていた超音速旅客機「コンコルド」のパイロットが悲鳴のような声を上げる。

「管制塔から駐機中の全機及び作業員へ告ぐ! 今すぐ安全な施設内へ避難せよ! ただし、搭乗手続きを済ませている機体は乗客の避難を最優先しろ!」

空港の管制官は予想外の事態に面食らっていたが、すぐに冷静さを取り戻し的確な指示と誘導を開始した。

「おい、レガリア! 今の聞いたか!?」

「ええ……どうやら、本隊と見せかけた陽動部隊に嵌められたみたいね」

「バイオロイドの狙いは初めから民間空港の破壊だったということですか……」

スターライガの面々も突然の出来事に互いの顔を見合わせている。

もっとも、これでようやく全てが繋がった。

重装備のユーケディウムが仮に防衛線を突破していた場合、C-5Nに潜んでいた陸上戦力と共同で空港施設攻撃を行うつもりだったのだろう。

装備で騙されてしまったが航空部隊はあくまでも陽動であり、本隊となる陸上戦力が健在の限り戦闘はまだ終わらない。

そう……バイオロイドの目的は政治的なダメージで世界情勢を混乱させることだったのだ。


「クソッ、ヒトじゃないのなら人道から逸れても良いっていうのかよ!」

ヒトならざる者が起こした暴挙に激昂し、声を荒げるルミア。

「人間の愚かささえ模倣するとは……随分と完成度の高いお人形さんね」

それに対してレガリアは冷静に小隊を動かすタイミングを待つ。

「こちら防空司令部、戦闘続行可能な機体は全て空港内の敵戦力掃討に―待て! 複数の方角より飛来する新たな敵機影を捕捉! 遠方の部隊は敵機の迎撃を優先せよ!」

レーダーディスプレイを見ると確かに先程よりも赤い光点が増えており、比較的大きな編隊が形成されていた。

「オリオン1より空港周辺の味方機へ、敵戦力は多数! 繰り返す、敵戦力は多数!」

「パシオン隊各機、これより攻撃を開始する。民間施設への誤射に注意しろ!」

「ギャラクシーは破壊していいのか?」

国防空軍の通信からは状況の混乱ぶりがよく伝わってくる。

回線をオープンチャンネルに変更しながら大きく息を吸うと、レガリアは空軍の後輩たちを一喝するのだった。


「冷静に自分たちの任務をこなせッ!! 民間人を守るのが職業軍人の役目であることを忘れるなッ!!」


しばしの沈黙の(のち)、各空域から「了解!」という力強い応答が届く。

「……戦闘空域外縁部の部隊は敵機迎撃、空港周辺の部隊は陸上戦力の掃討にあたれ! 我々にはスターライガがついている……何としてでも民間人を守り抜け!」

レガリアの一言が国防空軍の混乱を収め、戦線を更に強固なモノへ変貌させた。

軍隊の歯車として動く兵士、数多くの従業員を抱える実業家―。

双方の立場を経験してきた人間だからこそ為せる業である。

そして、バイオロイドの暴挙に対して一番怒っていたのは他でもない彼女だった。

「スターライガ各機、空軍と共同で民間空港を防衛するわよ! 気を引き締めて掛かりなさい!」

「ああ! スパイラル07、了解!」

「こちらスパイラル04、人々を護る剣として全力を尽くします!」

ラッツェンベルグ国際空港の上空へ集結するMFの大群。

彼女らの銃口は民間空港を蹂躙するバイオロイドたちに向けられていた。

エア・オリエント

オリエント連邦最大の航空会社にして同国のフラッグキャリア。通称はAOL。

6大陸全ての都市に国際便を就航させており、ボー○ングやエア○スの機材を運用する。


ハークレイン自然公園

ラッツェンベルグ市東部に広がる国内最大の自然公園。

家族連れで楽しめる区域と野生動植物のための区域に分けられており、前者には元々自然公園の土地を所有していたハークレイン家の旧宅が残されている。


コンコルド

現実世界でイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機。

作中世界においても一度退役したが、技術進歩によって欠点を克服した改良型をオリエント連邦の航空会社が再就役させており、ラッツェンベルグ-羽田間の名物機材となっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ