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【完結済み】MOBILE FORMULA 2101 -スターライガ-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
第2部

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【55】孤島の幽閉者(後編)

「状況を確認!」

サニーズ率いる小隊とオリエント国防空軍による臨時編成部隊がバイオロイドたちの前に立ちはだかる。

「こちらエクスタミネーター、相手は最低でも10機以上だ」

「そうか……少しは楽しませてくれるといいんだがな!」

ルミアの報告を受けたサニーズは不敵な笑みを浮かべる。

「各機、彼我の戦力差は約2倍だ。常に2機以上に包囲されていると思え」

「「了解!」」

臨時編成部隊の指揮系統は決めていなかったのだが、いつの間にかサニーズが最高指揮官として扱われていた。

「よし、全機散開! バイオロイドどもを喰らい尽くしてやれ!」

彼女の号令と共に寄せ集め軍団の戦いが始まった。


最大推力で敵部隊の中へ突っ込んだ国家戦略室は撹乱を行いつつ敵機にドッグファイトを仕掛ける。

高いステルス性と運動性を両立したシャドウブラッタはドッグファイトで真価を発揮するのだ。

「ファファファ、拙者の心眼センサーの前では雲隠れしても無駄!」

ドラオガ機は2本のヒートダートを雲の中に向かって投擲した。

一見すると無意味な攻撃のように見えたが、その直後に細い黒煙を上げたユーケディウムが飛び出してくる。

獲物は逃さんと言わんばかりにスロットルペダルを踏み込み敵機との距離を詰める。

アサルトライフルで反撃を試みているが、もう遅い。

弾幕を掻い潜った漆黒の一閃がユーケディウムを切り裂いていく。

「隊長、後方から捕捉されています!」

直後、ドレイクの警告とほぼ同時に別のユーケディウムがマイクロミサイルを発射した。

マルチロックオン機能により複数方向へ分かれて飛翔するが、大半のミサイルはドラオガを狙っていた。

しかし、彼女は余裕の表情を崩さない。

機体後方から迫る多数のミサイルを確認しながら急上昇。

厚い雲を突き抜けるほどの高度まで上がった後、そこからヴェイパーが発生するほどの急旋回でミサイルを放った敵機へと向かう。

ドラオガの技量を以ってすれば防御兵装無しでも回避できるのだ。

「フェンケ、ドレイク! 連携で決めるでござるよ!」

「「了解!」」

まず、目標の敵機を把握しているドレイクがヒートダートで接近戦を仕掛ける。

ヒートダートとビームブレードが切り結ぶ際の火花が戦いの激しさを物語っていた。

「離れなさい! 牽制射撃を仕掛けるわ!」

ドレイク機が離れたタイミングで今度はフェンケがアサルトカービンによる牽制射撃を行う。

優れた射撃技術を持つ彼女の攻撃は極めて正確であり、ユーケディウムの左腕と左脚だけを綺麗に撃ち抜いていく。

次にドレイクとフェンケの機体が同時にワイヤーアンカーを射出し、敵機に巻き付けることで動けないよう拘束する。

「さあ、俳句を詠め! 拙者が介錯してやる!」

次の瞬間、ドラオガ機の速度を乗せた一撃がユーケディウムに襲い掛かる。

だが、刀身が短いヒートダートでは予想以上にダメージを与えられなかったため、左手にもう1本構えてダメ押しで胸部を滅多刺しする。

傍から見ると非常に凶悪性を帯びた攻撃だが、一度装甲が脆くなった部分を集中的に狙うという戦法自体は理に適っている。

振り上げる勢いで2本のヒートダート放り投げた後、敵機の装甲の破損箇所へウェルロッドを突き付ける。

「ファファファ……サヨナラ!」

一発必中のトドメを浴びせたドラオガ機はワイヤーアンカーから解放された敵機を踏み台にして高速離脱。

その直後、ユーケディウムは火の塊となって爆発四散する。

先程放り投げたヒートダートを両腕のワイヤーアンカーで回収し、国家戦略室は新たな獲物を求めて移動するのだった。


「ねぇねぇ、サニーズ! さっきのニンジャマニアたちの攻撃見た!?」

たまたまドラオガたちと近い位置で戦っていたチルドが興奮気味に叫ぶ。

「ん、ああ……大した腕は持っているようだね」

一方、サニーズは素っ気無い反応を示す。

まあ、チルドとの付き合いは長いので彼女が何を言い出すかは分かっていた。

「アタシたちもとびっきりのコンビネーションを見せようよ!」

やはり、国家戦略室の合体攻撃に触発されたらしい。

一度やりたいと思ったことは意地でも曲げないのがチルドであり、説得は無駄だと知っているサニーズは妻のリクエストへ答えてあげることにする。

「お、ケーキ入刀か? 私も仲間に入れてくれよ」

「き、貴様はルナールさんのフォローでもしていろっ!」

変な事を言っていたルミアをあしらい、サニーズはチルドが捕捉している敵機たちへ向かってシルフウィングを奔らせる。

そう、コンチェルト夫妻は連携攻撃による同時撃墜を狙っているのだ。


「よし、牽制射撃と同時に君が切り込め!」

「オーケー、格闘戦だってこなしちゃうんだから!」

シルフウィングのレーザーアサルトライフルの光弾が敵機の片割れに襲い掛かる。

「懐がガラ空きなのよ!」

攻撃を受けたユーケディウムがシールドを構えているところへスティーリアが接近し、同機唯一の格闘戦用武装である大型ビームブレードでシールドごと一刀両断を狙う。

相手のビームブレードはスティーリアの左肩を貫いたが、装甲が厚いこの機体にとっては些細なダメージだ。

愛機の防御力に絶対の自信を持つチルドは動じない。

それに対して大型ビームブレードはユーケディウムのシールドを貫通し、左腕を機能不全に追い込む。

「チルド! 左から敵機!」

「ちぇっ、せっかくイイところだったのに!」

サニーズからの警告に反応したチルドは咄嗟に左操縦桿を操作し、別の敵機からの斬撃をシールドで受け止める。

1回目は上手く弾くことができたが、2回目の攻撃を防御できるかは分からない。

腕の立つドライバーなら確実にパターンを修正してくるからだ。

「貴様の相手はこっちだ!」

ユーケディウムが再攻撃を仕掛けようとした時、純白と青緑に彩られたMF―シルフウィングがその行く手を遮る。

左手で抜刀されたビームレイピアがビームブレードを受け止め、出力差を活かして弾き飛ばした。

その間にシルフウィングは右手でもう1本のビームレイピアを抜刀、高い加速力を活かし敵機との距離を一気に詰める。

「風穴を開けてやる!」

ユーケディウムの目前へ迫ると同時にサニーズは左右の操縦桿を前へ押す。

この操作を行うことでMFは両腕を前へ突き出すのだ。

2本のビームレイピアをユーケディウムの胴体へ突き刺した後、一旦引き抜いて今度は滅多刺しにしていく。

こういった機体への負担が大きい攻撃パターンは初期状態のOSには組み込まれておらず、サニーズの電子制御に頼らない卓越した操縦技術がそのまま機体の動作として反映されている。

なお、MFは電子制御によるドライバーエイドを前提に設計されているため、普通のMFドライバーが電子制御を切った機体に乗ると立ち上がることさえままならない。


「チルド、トドメは君に任せる!」

敵機へ回転蹴りをお見舞いしつつサニーズが叫ぶ。

「よーし、残りのマイクロミサイルを撃ち尽くす!」

大型ビームブレードで戦っていたチルドは火器管制モードを残弾数が少ないマイクロミサイルへ切り替え、マルチロックオンの対象を2機のユーケディウムに集中させる。

これにより、本来なら射程内の全ての敵へ飛翔するマイクロミサイルのターゲティングを絞ることができるのだ。

HIS上にロックオンを示す「SHOOT」の表示が出たのを確認し、スティーリアは残されていたマイクロミサイルを全弾発射した。

直後にミサイルを撃ち尽くしたミサイルポッドが腰部ハードポイントからパージされる。

ミサイルポッド自体は比較的安価且つ環境に配慮したオリハルコンで製造されているため、使い捨てにしてもそこまで問題にはならない。

放たれたマイクロミサイルは手負いのユーケディウムを執拗にホーミングした末、高温部であるため比較的当たりやすいスラスターノズルへ命中し、機体を2つの火の塊に変える。

「ふふんっ! どうよ、アタシとサニーズのコンビネーションは?」

「おうおう、チルドにしては上出来だったんじゃねえか?」

他の敵機をプロト・ヒートバスタードソードで両断しながらルミアが答える。

彼女としては真面目にチルドを評価していたのだが、夫婦仲の良さをからかっているように聞こえなくもない。

「アタシにしてはって……まあ、いいわ。残敵を片付けてさっさと帰りましょ」

そう言うとチルドは味方を援護するため愛機スティーリアを奔らせる。

「(おそらく、この作戦の最後の敵は奴らか……!)」

一方、撃墜確認を行っていたサニーズは長年の経験に基づく不安感を抱いていた。


その頃、インフィニティブルーから発艦したMH-60Sがクビアト島上空へ到達していた。

「シーホークからスターライガ各機へ、本機はこれより『お姫様』をお迎えする。ヘリコプターでMF戦は無謀だから、回収作業終了まで護衛を頼む」

「こちらパルトナ、了解した。シーホークは回収作業に集中しろ」

地上のMF運用施設と対空火器を破壊し尽くしたライガたちは、地上と空中に分かれて周辺警戒を行う。

回収地点にはリリーのスパイラル3号機を配置しているため、場所が見つからないで手こずるというミスは無いだろう。

「そういえばレガリア、どうして君とメイヤさんはバイオロイドの迎撃に向かわなかったんだい?」

周辺警戒中、突然リゲルが質問を投げかける。

戦力差を考慮するなら遊撃部隊はサニーズたちと合流すべきだったが、レガリアは「バイオロイドの相手はサニーズの小隊だけで十分」と判断し、ヘリコプターに対する脅威の排除を優先した。

その意図を彼女は理解しかねていたのだ。

「そうね……強いて言えば『直感』かしら。リゲルこそ何も感じないの?」

「むっ……すまなかったな、どうやら僕は鈍感らしい」

質問に質問を返されたリゲルは肩をすくめる。

もっとも、彼女の反応自体が別におかしいワケではない。

「そうでもないと思うよ。姉さんの直感は私でも理解できたことが無いし」

「うん、やっぱりライガ君やレガは私たちと領域が違う感じだね」

ブランデルやメルリンもリゲルの言葉に同意していた。

ところが、一人だけ彼女ら「俗人」とは異なる感覚を抱く者もいる。

「……これは何? 敵意が来る……?」

突然ブツブツと独り言を呟き始めるリリー。

「敵意だって? 敵なんてどこにいな―」

「……! シーホーク、避けろっ!!」

MH-60Sのパイロットの言葉を遮るようにライガが叫ぶ。

だが、ヘリコプターは回収作業中のため救助ホイストを降ろしており、回避運動を行うことができなかった。

戦闘空域を飛ぶことは想定外のため防御兵装も装備していない。

パイロットが乗員たちに衝撃へ備えるよう伝えた直後、大きな揺れとほぼ同時に機外で金属が破砕されるような音が聞こえた。

しかし、MH-60S自体には何の異常も見られない。

状況報告は「お姫様」を抱えながらホイストで持ち上げられていた降下救助員が教えてくれた。

「おい、目の前で1機やられたぞ!」

彼女の目には煙を噴きながら不時着する1機のMF―スパイラル3号機の姿が映っていた。


ライガが叫んだ時点でシャルラハロート姉妹やリゲルはすぐに状況を理解した。

彼らが組んでいたフォーメーションの隙間を縫った敵機がいたのだ。

そして、それを行うには高い技量と隠密性が要求される。

つまり、MH-60Sへ攻撃を仕掛けたのは国家戦略室のシャドウブラッタと見てほぼ間違い無い。

スパイラル3号機のシールドと左腕を一気に破砕したのはウェルロッドによる攻撃だろう。

国家戦略室がバイオロイドと戦っていると思い込んでいた、ライガたちの判断ミスがこの結果を招いた。

「リリー! 大丈夫か……無事なら返事してくれ!」

元々ウェルロッドの銃弾はヘリコプターを狙って放たれたものだったが、それに気付いたリリーが自らの機体を盾にしたのだ。

「―いてて、ごめん……機体が壊れちゃった」

「機体なんざ消耗品だ。お前の身体が無事ならそれに越したことは無い」

被弾する直前、左半身を前に出す姿勢へ変えていたことで損傷は左腕とシールドを失うだけにとどまった。

これが単なる強運なのか、それともリリー自身の能力か……一つ言えるのは、彼女が感じた敵意は本物だったということである。


「リリー、あなたもヘリコプターに乗りなさい! メルリンさんとミノリカは機体を回収して後退!」

上空から状況確認を行いつつレガリアは指示を出す。

「……アンブッシュとはらしくないわね、国家戦略室さん―いえ、本来の部隊名は『カシオペア』といったかしら?」

彼女が刑務所の屋上を睨みながらオープンチャンネルで語り掛けると、ちょうどその辺りから1機のMFがひょっこりと姿を現していた。


オリエント国防空軍第2航空師団第73特別任務部隊カシオペア―。

これが国家戦略室が運用するMF部隊の正式名称だ。


「ほほぅ、我々の部隊名を調べ上げているとは、さすが元国防空軍軍人と言うべきか」

「私の人脈を甘く見ないことね。ドレイク・ハウリング少尉とフェンケ・ヴァン・デル・フェルデン少尉、そして隊長のドラオガ・イガ少佐。あなたたちの情報はレティさんから教えてもらったわ」

それを聞いたドラオガは眉をひそめる。

ここで空軍総司令官たるレティの名前を出されるとは思っていなかったからだ。

「スターライガには総司令官の御子息がいると聞いていたが……まさか、裏で繋がっていたのか?」

「それを話す必要は無い」

冷徹に言い放ったレガリアはシュピールベルクをノーマル形態へ変形させ、爆撃の痕が残る地上に降り立つ。

「ブラン、メイヤ! 国家戦略室へ引導を渡すわよ! それ以外の機体とシーホークは全て後退して!」

「待ってました! やっとニンジャマニアをブッ飛ばせる時が来たのね!」

「非武装の機体へ不意討ちを仕掛けるような輩が相手なら、遠慮無く攻撃できるわ……!」

ブランデルとメイヤの機体もシュピールベルクの両サイドへ着地し、それぞれの主兵装を構える。

「3人とも無理はするなよ。私たちも後方からいつでも援護できるようにしておく」

「ふふっ、あなたたちは先に休んでてもいいのよ?」

少々心配するサニーズに対し、レガリアは見えていないと思いつつも軽く手を振って答えた。

国防空軍側も国家戦略室以外の機体は既に撤退しており、戦場にはスターライガとカシオペア隊が3機ずつ残っているだけだ。

「ファファファ、スターライガよ……カシオペア座がどんな星座か知っているか?」

「カシオペア座ですか……北極星を探すのに用いられ、高緯度地域のオリエント連邦では一晩中沈むことの無い周極星になりますね」

唐突に宇宙の話を振ってきたドラオガに対し、メイヤはすらすらと答える。

「そう、カシオペア座とは言い換えるなら不沈の星座。墜ちることが許されないエース部隊に相応しい名前でござる」

レガリアは興味深そうにドラオガの持論を聞いていたが、彼女を窘めるようにこう告げる。

「不死身のエースというのは戦場の幻に過ぎないわ。どんな恒星でもいつかは燃え尽きるのよ」

「むぅ……ならば、どちらが先に燃え尽きるのか、答え合わせをしようではないか!」

今回ばかりは本気なのか、お馴染みの名乗り口上無しにドラオガのシャドウブラッタが飛びかかってきた。

「ああっ!? アイツ、いつものアイサツを忘れてるし!」

「望むところよ! カシオペア座を夜空から引き摺り下ろしてあげる!」

動揺するブランデルをよそにレガリアもビームソードを抜刀し、臨戦態勢へ移行するのだった。


中破したスパイラル3号機から脱出し、なんとかヘリコプターに乗ることができたリリー。

「あんたのおかげで焼きカボチャの馬車にならずに済んだ。乗員一同感謝するぞ」

「ううん、リリーも無我夢中で機体を動かしただけだから……」

コックピットに座る機長や副操縦士と握手を交わしていると、地上部隊の面々が待機するキャビンの方から足音が近付いて来る。

「その声……まさか、姉さんなの……?」

リリーを大人びさせた―どちらかと言うとライラックに似た声が聞こえる。

「サレナ……約束通り、お姉ちゃんが助けに来たわ」

後ろを振り向きながらヘルメットを外し、リリーは妹へ笑顔を見せるのであった。

オリハルコン

オリエント連邦や周辺国で採掘される金属。

有史以前からオリエント地域には大規模なオリハルコン鉱脈が存在しており、国によってはオリハルコンの輸出や加工が主要産業になるほど。

工業的にはアルミニウム合金やチタン合金と似たような感覚で利用されている。

価格はリモネシウム・コバヤシウム合金よりも安い。

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