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【完結済み】MOBILE FORMULA 2101 -スターライガ-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
第2部

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【44】グティエレス島攻略作戦

アルフェ・チームの絨毯爆撃とインフィニティブルーの艦対地ミサイルによる攻撃は一瞬にしてグティエレス島を呑み込み、防空網をほぼ無力化することに成功した。

迎撃機のユーケディウムも出撃しようとしていたが、これらは対地攻撃の巻き添えやヴィルタ・チームの活躍により多くが地上撃破されている。

「アルフェ1よりヴィルタ1へ。補給のために一度帰艦するから、その間の指揮は頼んだわよ」

情け容赦の無い攻撃を行ったアルフェ・チーム各機は武装をほぼ使い切り、これ以上の戦闘続行は不可能となっていた。

「ヴィルタ1、了解。先輩たちにはお前らの残飯を漁らせるとするか」

「あら? あなたたちの実戦練習のために『デザート』を残しておいたのだけれど?」

実を言うと予想以上に地上施設を破壊していたのだが、その事についてレガリアはあえて黙っていた。

「ああ、そりゃどうも。少々壊しすぎな気もするが、訓練には十分だろう」

戦闘空域から離脱していくアルフェ・チームの編隊を見届けつつ、ライガはヴィルタ・チームの面々へ指示を下す。


「さて、まずヴィルタ2は上空で哨戒飛行だ。どこから敵が湧いてくるか分からん以上、しっかり見張っておけよ」

「ヴィルタ2、了解」

ヴィルタ2―サニーズは機体を空中へと飛び立たせた。

残っているのはオロルクリフ姉妹にリリー、シズハといった経験の浅い面々だ。

「そうだな……残りの機体は手近な目標を破壊しろ」

「ねえねえ! あれって攻撃していいの!?」

リリーのスパイラル3号機は乗り手の感情を反映するかの如くパルトナの左腕を引っ張る。

動きだけを見ると好奇心旺盛な彼女とそれに付き合う彼氏みたいだ。

―あるいは兄にじゃれ付く妹か。

「あれって……ファランクスじゃねえか! レガリアの奴、対空機関砲だけ残していきやがったな!」

特徴的な白い円筒状の胴体にM61A1 バルカン機関砲―20世紀から21世紀にかけて優秀なCIWSとして一世を風靡したファランクスの初期型である。

本来は艦載兵器として開発された物だが、たまに陸上兵器へ転用され地上に置いてあったりする。

旧式とはいえバルカンの20mm口径はMFにある程度のダメージを与え得るだけの火力を持つ。

そして、ファランクスの砲口はぎこちない動きでスパイラル3号機へ狙いを定める。

「うわぁ、なんかこっちを狙ってるんだけどぉ!」

「左右のステップでかわせ!」

だが、ライガの言葉が終わるよりも早くファランクスは火を噴いた。

彼のようなベテランなら発砲されてからでも回避できるが、初心者のリリーにそれを期待するのは酷だろう。

ところが、彼女はライガの予想以上の行動を取るのだった。

「……! シールド防御しながら反撃だと!? そこまで教えた覚えは無いのに!」

ファランクスの攻撃に対し、スパイラル3号機はシールド防御で迎え撃った。

同時に右腕に構えたレーザーライフルでファランクス本体を狙う。

直感的に回避し切れないと判断したリリーは、シールドを構えて攻撃を凌ぐことを選んだ。

防御姿勢の角度が悪いのかシールドはかなり損傷しているものの、機体その物には全くダメージは及んでいない。

問題はリリーの反撃の方であり、間合いが近いにも関わらず彼女の攻撃は掠りすらしていなかった。

射撃が苦手なのは前から分かっていたものの、ここまで酷いことは想定していない。

何かとボロクソに言われがちなチルドの方がマシな射撃精度を持っている。

「ナニコレ!? ちっとも当たらないんだけど!」

「お前の射撃が下手なだけだ! 俺にヤらせろ!」

しかし、ライガが攻撃するまでもなくファランクスの射撃は止み、黒煙を上げながら動作を停止させた。

どうやら、元々劣化していたにも関わらず迎撃システムが作動した結果、限界を迎えてしまったらしい。

普通はしっかりと整備点検を行っているはずなので、今回のケースは相当運が良かったと思われる。

仮に正規軍の艦艇相手なら弾切れ以前にこちらが持たないだろう。

「……運が良かったな。お前って昔から直感と強運だけは一人前だよな」

「うーん、まあ……『運も実力のうち』って言うから多少はね?」

強運(きょううん)だけに『うーん』ってか? 可愛く呟いてもそのジョークはダメだぞ」

こんなやり取りを戦場のど真ん中でしているあたり、ライガはかなりの余裕を持っているしリリーは妙に図太い。

会話を聞いていたヴィルタ・チームの面々は呆れてモノも言えなかった。


兵装を換装したアルフェ・チームの援護の下、ヴィルタ・チームのルーキーたちは思い思いに対地攻撃の練習を行うことができた。

今回重要視されたのは「最小限の消費で目標を破壊すること」である。

ルナールたちには効率的な弾薬・エネルギー管理を覚えてもらわなければならない。

無駄な攻撃を減らせばそれだけ継戦能力が向上し、戦場で活動できる時間が伸びる。

どれだけ高性能な機体や優秀なドライバーでも、ごく短時間しか戦闘できないのでは戦術の幅が大きく狭まってしまう。

また、弾薬とエネルギーは常に有限である。

現状では永久機関のような無限に使えるエネルギーは夢のまた夢。

兵器も人も使い込めば必ず消耗する。

一人一人が無駄遣いしないように努力すれば、兵站(へいたん)への負担を軽減することができるのだ。

正規軍と比べて明らかにリソースが劣るスターライガにとって、資源配分の効率化は極めて重要である。

「よし、調査に入れそうな施設はあまり攻撃するな。それ以外は再利用できないよう徹底的に破壊しろ」

今のスターライガに絶海の人工島を維持管理するだけの余裕は無い。

ならば、いっそのこと脅威にならないよう潰してしまった方が良い。

調査の必要性が薄く、尚且つ使用できるだけで戦略的価値が生まれる対空兵器やレーダーサイト、飛行場は跡形も残らないほどに破壊しておく。

「ちぇっ、何だか私たちが悪役みたいだな。敵の基地を徹底的に蹂躙する正義の味方がいてたまるか」

飛行場の関連施設を解体していたシズハが愚痴る。

「俺たちは決して正義の味方をやりたいワケじゃない。正義か悪か……それを決めるのは歴史であり、歴史とは人間そのものだ。ケモノは歴史という領域へ至っていないからな」

「何それ? エースドライバーって戦場で哲学の話をするの?」

「まあ、俺が言いたいのは『自分をヒーローだと勘違いするな』ということだけだ」

ライガの説教めいた話をシズハは完全に理解することはできなかった。

ただ、「ちょっと才能があるからといって自惚れるな」と釘を刺してくれているのは分かる。

学生時代の部活動でも似たようなことを言われていたからだ。

「さて、ここまで破壊すれば―」

ライガが何か言いかけた時、それを遮るように上空にいたサニーズが叫んだ。


「おい! 偵察写真には無かったドックがあるぞ!」

ドラゴンレディ作戦で撮影された写真はほとんどが空中からのものであり、海面ギリギリの様子については完全に死角となっていた。

「形状は潜水艦ドックみたいだが……内部突入して確認してみるか?」

「ああ、頼むぜ。運良く停泊していれば儲けモノだがな」

潜水艦ドックの入り口はとても狭いが、全高4m程度のMFなら慎重に操縦することで突入できる。

そして、ハチドリのような運動性を活かせばホバリングしつつ内部を調査すること可能だ。

「アルフェ・チーム、入り口を見張ってくれよ!」

そう言うとサニーズのスパイラル8号機は人工島に穿(うが)かれた穴へ突入した。

トンネル内の照明灯を頼りに水面上を飛行していくと、やがて行き止まりへと辿り着く。

そこには彼女の予想通り小規模な潜水艦ドックが建設されていただけでなく、ちょうど潜水艦が搬入作業を行っていた。

おそらく、スターライガの襲撃を受けたため、急いでグティエレス島から離脱するつもりなのだろう。

「(潜航されたら打つ手が無いな……いや、ここは拿捕(だほ)に徹するべきか)」

予想外の敵襲に動揺するバイオロイドたちをよそに、スパイラル8号機は物資の詰められたボックスを蹴り飛ばしながら桟橋へ着地する。

一部のバイオロイドは自衛用のアサルトライフルを射撃してくるが、歩兵用の火器レベルではリモネシウム・コバヤシウム合金を貫通することなど不可能だ。

サニーズは通信回線をオープンチャンネルへ切り替え、無駄とは思いつつも投降を呼び掛ける。

「そこの潜水艦に告ぐ、我々は無用な犠牲は望んでいない。投降すれば命だけは―クソっ、こっちが話している時に撃ってくるな!」

いつまで経ってもアサルトライフルでちょっかいを掛けてくる連中に苛立ったサニーズは、逆にMFの固定式機関砲を放ち威嚇射撃を行う。

死への恐怖を抱かない一部個体は回避行動を取ることなく射撃を喰らい、ミンチより酷い状態へと姿を変えてしまった。

攻撃が止んだところで彼女は投降勧告を再開しようとするが、それよりも先に潜水艦艦長と思わしき人物から返答があった。

「勧告には感謝するが、我々バイオロイドに敵の軍門へ下るという行動は教育されていない。徹底抗戦こそ我々の存在意義である」

無機質に淡々と綴られる言葉を聞いていたサニーズは軽く舌打ちすると、レーザーアサルトライフルの銃口を潜水艦のブリッジへ向ける。

「……どうやら、死にたいらしいな。死にたがりなら心置きなく殺せる」

次の瞬間、最小出力で放たれたレーザーが潜水艦のブリッジを貫いた。

それと同時にスパイラル8号機は飛び上がり、ライフルの連射を潜水艦に浴びせながらドックから離脱していく。

仮に相手が原子力潜水艦だったら目も当てられない大惨事になった可能性もあるが、幸いバイオロイドが所有するのは一世代前の通常動力型潜水艦だったらしい。

背面飛行をしながらスパイラル8号機が脱出した直後、それを追いかけるように爆炎がドック入り口から上がった。


「サニーズ、随分と派手にやったな。何か見つけたのか?」

「ん……ああ、潜水艦がいたから拿捕してやろうと思ったが、連中の言葉が鼻につくから沈めてやった」

状況報告を求めるライガに対しサニーズは素っ気無く答えた。

別にいつもの事なので彼は特に気にしなかった。

「おいおい、瞬間湯沸かし器かお前は……まあ、いい。沈んだ潜水艦とやらの調査は地上部隊にお任せだな」

サニーズが潜水艦と戯れていた間に地上の掃除はあらかた終了しており、現時点では完全にスターライガの勢力圏となっている。

バイオロイドが取り返しに来る可能性も否定できないため、早急に地上部隊へ調査を行わせる予定だ。

インフィニティブルーは上陸用舟艇(せんてい)をある程度搭載しており、必要であればすぐに上陸作戦を実行することができる。

地上部隊の調査活動が終了次第スターライガはグティエレス島から離脱、データの解析は本部で行う。

30分ほど地上で哨戒活動を行っていると、波しぶきを上げながら海面を進むエアクッション型揚陸艇の姿が確認できた。


「よし、ここのドアを開けるぞ。人の気配は感じないが、一応銃を構えておけ」

地上部隊のうち数人の隊員はグティエレス島のコントロールルームと思わしき部屋へ突入しようとしていた。

MF部隊が発電施設を破壊してしまったため自動ドアが反応せず、人力でも動かなかったのでやむを得ずプラスチック爆薬で破壊することにする。

隊員の一人が粘土状の爆薬をドアへ貼り付け、起爆装置を差し込む。

後は起爆装置のスイッチを押せば爆発し、ドアにダメージを与えてくれるはずだ。

「爆薬の設置を完了! ……これ、私たちも巻き添えになりませんよね?」

「君が爆薬の量を間違えていなければ大丈夫だ。多すぎたら『サヨナラ』だがな」

隊員たちは近くの曲がり角へ身を隠し、周囲の安全を確認すると起爆装置のスイッチを押した。

ドカンという爆音と共にオレンジ色の閃光が発生し、爆発をもろに受けたドアは大きく(ひず)む。

隊員たちは思いっ切りドアを蹴飛ばしコントロールルームへ突入する。

「やけに静かだ……クリアー、誰もいないみたいだ」

室内はつい最近まで使われていた痕跡が有るものの、重要そうな物は全て撤去されていた。

「あまり迂闊に触るなよ。ブービートラップが仕掛けられているかもしれん」

罠の存在に神経を尖らせながら部屋を捜索していると、爆薬設置を担当した隊員が気になるモノを発見する。

「みんな、ホワイトボードが……あれはアドレスかな?」

彼女がアサルトライフルのフラッシュライトでホワイトボードを照らすと、確かにウェブサイトのアドレスらしき文字列が書かれていた。

ここにはインターネットに詳しい人間がいないため、アドレスだけでは何のウェブサイトなのか判断できない。

「アドレスか。うーむ、一応写真とメモに残しておこう。写真を撮るから、そのまま照らしてくれ」

コントロールルームにはこれ以外に目ぼしいモノは存在せず、地上部隊はアドレスだけを記録して施設から脱出するのだった。


本部までの航海中、スターライガの面々は作戦成功を祝ってささやかなパーティを催していた。

「みんな、今日はお疲れ様! 希少なヴィンテージ・ワインを用意したから、味わって飲んでちょうだい。ワインを飲めないお子様にはソフトドリンクもあるわよ」

レガリアが最後の一文を言い放った瞬間、皆の視線が何故か一斉にリリーへと注がれる。

確かに彼女はワインよりもコーラの方が好きだが、別に下戸というワケではない。

つまり、同い年のレガリアなどと比べて幼さが残る顔立ちを皮肉られているのだ。

「そうなの? じゃあワインはグラス一杯で後はコーラでいいや。色も似てるしね」

リリーの返しでパーティの雰囲気は盛り上がりを見せ始める。

「盛り上がってきてるわね! みんな、ワイングラスは持った? それじゃあ、乾杯!」

自重はしつつもお祭り騒ぎのムードの中、レガリアはヴィンテージ・ワインを味わいつつ考え事をしていた。

「(グティエレス島……思っていた以上に守りが手薄だったし、あっさり攻略できたわね。もしかしてバイオロイドは初めから島を放棄するつもりだったのかしら?)」

この後、ブランデルに絡まれたので詮索は一旦止め、レガリアもパーティを楽しむため仲間たちの輪へと混じるのだった。

バルカン

よく勘違いされるが、「バルカン」はM61という兵器の製品名。

「バルカン砲」は厳密には誤用である。

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