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【完結済み】MOBILE FORMULA 2101 -スターライガ-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
第1部

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【29】ニンジャ見参!(後編)

研究施設跡地で激闘を繰り広げるブランデルたちとドラオガ。

単純に機体同士の相性で考えるなら、近距離戦を得意とするドラオガのシャドウブラッタに分があるだろう。

だが、MF戦はそう簡単なものではない。

数はブランデルたちの方が多いし、そもそも純粋な技量は互角といえる。

つまり、小さな一手でも形勢が大きくひっくり返る可能性は少なくないのだ。

この膠着状態を切り崩した方が戦術的勝利に大きく近付くだろう。


「(こういう時は落ち着け……私たちの勝利条件が何であるかを考えるんだ!)」

現状打破のためシャドウブラッタの攻撃を切り払いながら策を練るブランデル。

そもそもスターライガMF隊の目的は研究施設跡地を調査する地上部隊の援護である。

極端な話、時間稼ぎさえできれば血眼(ちまなこ)になってドラオガの相手をする必要も無いのだ。

また、周囲に障害物が多い状況ではチルドのスパイラル9号機が火力を活かせず、その点でも極めて非効率的だといえる。

9号機の扱いをどうにかすれば一転攻勢のチャンスが生まれるのだが……。

「ブラン、あのニンジャマニアを上空へ引き付けて!」

レーザーライフルの爆発四散以降、固定式機関砲による牽制射撃しかしてなかったチルドが突然通信を入れてくる。

まあ、彼女が仕事をしていない最大の原因はブランデルが敵機とイチャついており、迂闊に攻撃すると敵味方諸共吹き飛ばしかねないためだが。

「ん? アンタ、何か策でもあるの?」

基本的に「高火力による制圧射撃」を得意とするチルドが高度な戦術を立案するのは珍しい。

「地対空なら流れ弾を気にせずガンガン攻撃できるでしょ? それならアタシの機体の火力を存分に発揮できるよ」

確かに、対空戦闘であれば射撃武装の最低射程や周囲の障害物への配慮を多少無視した攻撃が可能となる。

これ以上理に適ったアイデアを考える時間は無く、ブランデルは相方の戦術変更を認めることにした。

「なるほど、チルドにしては良い事を言うじゃない。それじゃ、アンタのお望み通り敵を引き付けてあげる!」

そう言うとブランデルはスロットルペダルを思いっ切り踏み込み、推力全開で空へ上がる。

「(よしよし……ついて来い、ニンジャマニア!)」

敵機が空中へ逃げていく状況でドラオガが取る行動は追いかけるか諦めるかの二択……と言いたいところだが、彼女には第三の選択肢があった。

「逃さん! ワイヤーアンカー射出!」

シャドウブラッタの右腕から射出されたワイヤーアンカーはスパイラル3号機の右脚に巻き付き、それ以上高度を上げるのを食い止めた。

同時に両脚のワイヤーアンカーを地面へ突き刺し、シャドウブラッタ側も機体を固定する。

「束縛の陣、ここに完成……!」

一見するとコミカルな状況だが、ブランデルにとっては結構深刻なピンチである。

現状維持のためにスラスターを吹かし続けるといずれ推進剤切れに陥り、かといって推力を落とせば確実にドラオガは獲物を手繰り寄せるだろう。

つまり、束縛の陣を破らない限りブランデルが助かる道は無い。

現状打破のために取った行動が皮肉にも相手のチェックメイトを促してしまったのだ。

「どうする、ここで終わりにするか? 続けるか?」

絶対的なアドバンテージを得たドラオガは表情こそ硬いが、内心では余裕を持っているに違いない。

そして、これが「若さゆえの過ち」であることに彼女はまだ気付いていなかった。


「へぇ……そんな決定権が君にあるのかい? ドラオガちゃん?」

絶望的な状況の中、ブランデルはワザとらしいドヤ顔と共に相手を挑発する。

「この期に及んで挑発とは……自棄(やけ)になったか、それとも『ジョーカー』を隠し持って―」

指揮官としてはあまりにも若すぎるドラオガは目の前の敵を倒すことに熱中した結果、もう一人の存在を完全に軽視していた。

「……まさか!? アンブッシュしてきた奴がいないぞ!?」

慌ててレーダーで索敵を行ったが、周囲にスパイラル3号機以外の敵影が無い。

その意味に気付いた時、シャドウブラッタの右腕はワイヤーアンカー射出機ごと切り落とされていた。

ドラオガは機体のダメージ確認よりも先に固定を解除し、その場から離れることを決断する。

「サンキュー、チルド! アンタ、射撃よりもビームソードを投げるのが向いているんじゃない?」

ブランデルのこの通信を傍受した時、ようやくドラオガは「してやられた」と気付いた。

本来投擲(とうてき)には向いていないビームソードを正確に命中させられるドライバーがいるとは思っていなかったからだ。

「大きなお世話よ! それよりもニンジャマニアをさっさと追い返しましょう!」

「ああ、だけど……どうやら私たちの勝ちみたいだね」

森の中に潜んでいたスパイラル9号機が姿を現した時、既にシャドウブラッタは撤退準備を始めていた。

おそらく、発進してきた基地の距離を考えるとE-OS粒子と推進剤が限界なのかもしれない。

「ちょっと! 逃げるつもり!?」

無駄だと思いつつオープンチャンネルでドラオガに呼び掛けると、意外にも彼女から返事が返ってきた。

血の気盛んなチルドはどうも納得がいかないらしい。

「ファファファ、ここは命を捨てる戦ではござらんよ。お主らに勝てるまで拙者はせいぜい己を磨くとしよう……では、サヨナラ!」

そう言い残すとドラオガの駆るシャドウブラッタはミルクの霧の中へと消え、高いステルス性によりレーダーでも捉えられなくなっていた。

「『お主らに勝てるまで』って、私たちを目標にしている程度じゃ姉さんやライガの相手にならないな」

「おっと、サニーズも忘れないでよ」

無論、今回出撃しているブランデルたち4人もMFドライバーとしては相当手練れの部類に属している。

だが、ライガとレガリアとサニーズの3人は別格の強さを誇る「エース・オブ・エース」であり、本気になった彼らとタイマンで渡り合えるドライバーはほとんどいない。

惜しむらくはスターライガの戦力の都合上、彼らが全力を出すような大規模戦闘は避けていることだろうか。

「こちら地上部隊、研究施設の確保に成功しました。外が騒がしかったみたいですけど、そちらは大丈夫ですか?」

周辺の警戒を続けていると地上部隊から通信が入り、これでようやく作戦成功を確信できたのだった。


「こちら03、MF隊は全員健在だよ。霧が完全に晴れるまでに撤収して、本部で落ち合おう」

「了解、今すぐ撤収作業を開始させます」

地上部隊へ指示を出し終えると、今度はリゲルたちへ通信回線を切り替え合流を促す。

「03より06へ、そちらの状況はどう?」

「こちら06、機体は小破しているが問題無く合流できそうだ」

「しかしだな……私が相手してやった機体が持ってたハンドガンの火力は凄かったな。ブランもそう思うだろ?」

通信へ割り込んできたルミアの発言が引っ掛かる。

少なくともブランデルたちが交戦したドラオガは射撃武装を全く使っていなかったからだ。

「ハンドガン? アタシたちが戦った隊長機は持ってなかったよ?」

「マジかよ、私の当たった相手がよっぽど運が悪かったのか。直撃したら死ねるぐらいの火力はあったんだがな」

「使ってなかっただけで装備自体はしていた可能性もある。とにかく、今回の戦闘データは姉さんたちに提供しないとね」

ある意味バイオロイド以上に厄介な敵の出現……ブランデルたちはこれから戦いがますます厳しくなることを危惧するのだった。


その頃、研究施設跡地が接収されたことは既に「創造主」へと報告が届いていた。

彼女はバイオロイドが作成したレポートを読んでいたが、内容自体にあまり興味は無さそうだ。

「(やはり人工生命体では文章がまだ硬いわね……次の生産ロットからは少しブループリントを調整しましょう)」

研究施設跡地に置いてきたデータはせいぜい残りカス程度であり、本当に重要な部分は全て自身で握っている。

それよりも優先すべきはバイオロイド自体の根本的な能力向上である。

これまでの戦闘データを分析した結果、バイオロイドは「思考能力の硬さ」が原因でスターライガ相手に大敗を喫していることが分かっている。

高性能な人工知能を凌駕する思考能力を持たせたとはいえ、人間の頭脳の「柔軟さ」を先天的に付加するのは非常に難しい。

現状では後天的に教育を行うことで対処しているが、この手法だとどうしても個体差が出てしまう。

もっとも、彼女はバイオロイドをロボットにするつもりは無いため、個体差に関してはある程度許容している。

「(スターライガ……しばらくはバイオロイドの改良と国防軍の弾除けに利用させてもらうわ。だけど、いつまでも野放しにするつもりはないのよ……!)」

不敵な笑みを浮かべながら彼女はディスプレイの電源を落とすのだった。

ブループリント

英語で「設計図」を意味する。

バイオロイドの分野においては製造に必要なDNA、染色体、遺伝子、ゲノムのデータを一纏めにしたものを指す。

同じブループリントから生まれるバイオロイドなら個体差は非常に小さくなる。

なお、劇中世界においてブループリントの作成・使用ができるのは「創造主」ただ一人である。

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