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【完結済み】MOBILE FORMULA 2101 -スターライガ-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
第1部

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【28】ニンジャ見参!(中編)

「(人工生命体バイオロイド……彼女らは我々の世界にどのような影響を及ぼすのだろうか……)」

研究施設跡地へ向かう途中、ドラオガは国家戦略室本部で上官と交わした会話を思い出していた。


バイオロイド対策は22世紀のオリエント国防軍にとって重要な問題となっていたが、実は軍内部において方針をめぐる論争が生じていた。

総司令部を含む軍全体の総意としては「元を断ち切る」ことを望んでいる一方、国家戦略室を率いるペローズ・アリアンロッド中将はバイオロイドに「戦略的価値」を見い出しており、あわよくば関連技術の獲得を狙っていた。

元々人口が少ないうえ総人口の40%以上が軍人含む公務員であるオリエント連邦は民営企業の人員不足に悩まされており、頭数を揃えるのが容易且つ職種に特化した能力を与えられるバイオロイド技術は文字通り「救世主」になる可能性を秘めている。

欧米諸国や日本がバイオロイド技術を批判しているのは表向きこそ「人道的な理由」であるが、本当の理由はバイオロイド技術の実用化によってオリエント連邦の国際競争力が飛躍的に向上するのを恐れているからだ。

無論、「ヒトがヒトを創る事」に対するタブーも無くはないがクローニングの実現はいずれにせよ予見されていた未来であり、今更その存在意義を議論する必要性は薄い。

そして、宗教的・倫理的タブーを意識し続ける限り、オリエント連邦の医療技術に欧米諸国が対抗できる可能性は低くなっていく。

日本も意思決定の遅さという国民性が仇となり、技術力はあっても「アプローチ方法」で追い付くことは難しいと思われる。

こうしている間にも景気に左右されにくい医療分野でオリエント連邦は競争力を高めていき、やがて覆すことの難しい「絶対的な差」を築き上げることになるだろう。

「なるほど、つまり中将はバイオロイドを軍事面から経済面に至るまで、あらゆる分野で『ジョーカー』として活用したいと考えておられるのですな」

政治的な分野は生粋の戦士であるドラオガの専門外だが、ペローズの意図自体はある程度理解できた。

「うむ、現時点ではバイオロイドは一種の自然災害のような存在だが、裏を返せば我々人類の利益へと転換できる可能性も意味する」

「落雷と同じですね。21世紀中頃までは自然災害として恐れられる強大なエネルギーだったが、我が国で開発された特殊コンデンサによって避雷針へ蓄電することが可能となり、一転して有り余る電力を供給する有益な存在へと変化した」

突然どこからともなく現れては破壊行為を働き、わずか数十分で去って行く。

バイオロイドと落雷は驚くほど似ている。

分かり易い例えを持ち出してきたドラオガの話を聞いたペローズは感心したように頷いた。

「なるほど、やはり君はただのニンジャマニアではないな」

「私―いえ、拙者はこう見えても私立大学を卒業したエリートでござる」

一瞬だけ素が出そうになった部下を尻目にペローズは将官用デスクの片隅に置いている家族写真を眺めていた。

「……写っているのは奥様と娘さんですか?」

残念ながらドラオガの立ち位置からは奥様の姿は見えなかったが、娘のほうはハッキリと分かった。

「ああ、うちの娘はカリーヌという名前なんだが、彼女から『パパ、せんそうはいけないよ』って叱られたからね。嫌われないうちに戦いを終わらせないとな……」

勤務中こそ厳格な将官として振る舞うペローズだが、家族の事になると心なしか表情が柔らかくなるように見える。

「(なあ、カリーヌ……お前が大人になる頃には人類は戦争を捨てられるのだろうか? それとも……)」

天井の更に先―子どもたちが生きるであろう未来を見据えている上官の姿が強く印象に残った。


ドラオガとブランデルたち、双方の機体のレーダーは既にお互いを捕捉していた。

だが、スラスターの推進音は拾えても肝心の姿を確認できない。

「マジかよ、相手は近距離重視のステルス機なのか!」

ブランデルの予想通り、国家戦略室が運用するシャドウブラッタはMFとしては高いステルス性を誇っている。

「見つけた、そこねっ!」

一瞬だが機影を目視したチルドは進行方向へマイクロミサイルを放ち、高密度な弾幕を形成しようとする。

彼女が乗るスパイラル9号機は射撃戦に特化したADVP「ガンファイトパック」を装備しており、足を止めての撃ち合いを得意とする。

「バカ、撃ち方止めろ! 流れ弾で森に引火したらどうする!?」

国が管轄している土地で戦闘行為を行っていること自体が問題なのに、山火事など発生させた日には目も当てられない。

「ッく! そんなことより敵機を見失ったんだけど!」

「レーダーをよく見ろ! 私たちの背後だ!」

ブランデルたちが後方を確認すると、濃霧の中に立つシャドウブラッタの姿がハッキリと見えた。

研究施設跡地の上を陣取っているが、攻撃を行う気配は無い。

「……そのエンブレム、国家戦略室ね。まさか戦うハメになるとは……!」

相手が只者ではないと悟ったチルドはシャドウブラッタのドライバーを睨み付ける。


「どうも、スターライガさん。国家戦略室のドラオガ・イガです」

シャドウブラッタを駆るドラオガはオープンチャンネルの通信で唐突に挨拶を始めた。

MFで手を合わせつつお辞儀するというのは結構難しい動作の一つであり、これだけでも電子制御とドライバーの優秀さがうかがえる。

「えっ? ……え?」

困惑するチルドをフォローするためブランデルが近付き、スパイラル9号機の肩部装甲を叩く。

「チルド、アンブッシュしなさいよ」

突然何を言い出すかと思えば、要は「不意討ちしろ」ということである。

確かに、不意討ちは相手が攻撃態勢に入る瞬間が一番決まりやすいとされているが……。

「はぁ……ま、アタシの早撃ちはMFドライバーでトップクラスだけどね!」

次の瞬間、スパイラル9号機の持っていたレーザーライフルがシャドウブラッタへ光線を放った。

この刹那、わずか3秒程度の常人には把握できない世界だ。

「ダメだ! あの距離でかわしやがった!」

ブランデルの視点からは黒い機影の飛び上がる姿がハッキリと見え、同時に攻撃態勢へ移行していることも分かる。

「……ッ! 避けて、チルド!!」

しかし、ブランデルの必死の叫びよりも早くシャドウブラッタの攻撃がチルドを襲う。

シャドウブラッタの左腕に装備された特殊兵装「ワイヤーアンカー」がスパイラル9号機のレーザーライフルに突き刺さり、強引に持ち主の手から取り上げようとする。

「(ダメね……このまま綱引きをしていても埒が明かないわ)」

これ以上意地を張り合っても仕方ないと判断したチルドは意図的に力を緩め、レーザーライフルを手放した。

哀れ、レーザーライフルは敵に奪われて悪用される……かと思いきや、ドラオガは取り上げた武器を回収せずヒートクナイで一閃する。

真っ二つに切り裂かれたレーザーライフルはしめやかに爆発四散、残骸がパラパラとシャドウブラッタの背後へ散らばった。

「ちょっと! アタシのレーザーライフルになにすんのさ!?」

自分の装備をあっさり破壊されたことにチルドは激昂するが、当のドラオガは全く意に介さず持論を語り始める。

「ファファファ、見え見えのアンブッシュなど無粋……! 心眼センサーを持つ拙者には届かぬわ!」

そして、ヒートクナイを構え直したシャドウブラッタがついにブランデルたちへと牙を剥くのだった。

「スターライガさん、俳句を詠め! 介錯してやる!」

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