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【完結済み】MOBILE FORMULA 2101 -スターライガ-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
第1部

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【23】集結する力

レガリアの屋敷が建つ「トランシルヴァニア島」。

世界最大級の淡水湖であるヴワル湖に浮かぶ巨大な島で、オリエント連邦にて人が定住する唯一の島でもある。

隕石災害のクレーター跡地に水が溜まり誕生したヴワル湖に何故島が浮かんでいるのかという疑問は未だ解明されていない。

学術的な価値も高いトランシルヴァニア島だが、この島の地下にはスターライガの本拠地が極秘裏に建設されていた。


「凄いな! まるでニッポンのトクサツに出てくる秘密基地みたいだ!」

レガリアに建設途中の基地を案内されているライガは目を輝かせていた。

彼だって男の子なのである。

「トクサツみたいに凝った機能は無いけど、実用性なら負けてないわよ」

事実、この基地はライガたちが軍にいた時に駐屯していた空軍基地とほぼ同じレイアウトを採用しており、初めて訪れたわりには不思議と違和感が無かった。

「ところでさ、ここの広い空間は何に使うんだ?」

「結構前に海軍から護衛空母を譲り受けた話をしたでしょ? その(ふね)を係留するためのドックになる予定なの」

現在彼らがいる最も広い空間―ここは空母が収まるほどのドックとして建設されていたのだ。

「なるほど、それなら確かにこのくらいの広さが必要だな」

「さて、作業員の人たちの邪魔にならないよう『ワークショップ』へ行きましょうか」

一生懸命働く作業員たちをかわしつつ、レガリアとライガは「ワークショップ」なる施設へ向かうのだった。


ドックの隣の区画に設けられている「ワークショップ」はMFの設計から製造まで全工程を行うことができる施設で、以前レガリアがスカウトしたロサノヴァ・コンチェルトを責任者に据えている。

「―そうか、お前がこの仕事に充実感を得ているのなら何も言うまい。お前だってもう大人だもんな」

ヴォヤージュ宇宙基地から戻った後、サニーズは娘と直接話すため先にワークショップを訪れていた。

彼女は当初ロサノヴァのスターライガ加入を反対していたが、最終的に娘の心意気に折れたカタチとなる。

「ありがとう、父さん。任せられたからには技術者として最高の仕事をしてみせるよ」

そうやって親子水入らずの会話をしていると、突然大きな音を立てながら誰かが入って来た。


「ロサノヴァ! お弁当を持って来てあげたわよ!」

「母さん……別に昼食ぐらい屋敷の食堂で食べるのに」

ワークショップの設計室へお弁当を届けに来たロサノヴァの母親―つまり、サニーズの「妻」を見たサニーズ本人は飲んでいた水を思わず噴き出してしまった。

「うわっ!? 試作品が水浸しになっちゃった!?」

「あ……すまん。それは私の機体にでも組み込んでおいてくれ」

サニーズが噴き出した方向にはたまたま試作品のパーツが置いてあり、運悪く口に含んだ水が掛かってしまった。

「って、そんな事よりも聞くことがある! 何故君がここにいる!?」

「だって……サニーズもロサノヴァもスターライガ? に入ったのにアタシだけハブられるのって不公平でしょ?」

(サニーズ)の質問に対し妻―チルド・トゥルーリはそう答えた。

確かにごもっともな意見であるが、スターライガは仲良しグループではない。

そもそも、サニーズとロサノヴァはチルドのことを思いスターライガについて全く話していなかったのだが、一体どこから話が漏れていたのだろうか。

「う、うーん……まあ、君の言う事も分からんではないが……」

「アタシがここに来たのはレガリアから直接スカウトされたからなんだけど」

「何だって!?」

サニーズがライガと共にオリエント連邦西部へ遠征している間、レガリアはサレナ救出作戦の立案をしつつ人材確保も進めていた。

ほとんどは護衛空母のクルーや救出作戦の地上部隊へ参加する人々だが、ある意味急務であった「即戦力のMFドライバー」としてチルドを迎え入れたのだ。

「そう、その通りよ」

気が付くとレガリアたちが設計室の出入り口付近に佇んでいた。

無論、彼女がライガに見せたいのはこのような痴話喧嘩ではないのだが。

「ところでロサノヴァちゃん、『新型機』の設計は進んでいるのかしら?」

「ええ、ライガさんの専用機を想定したフレームは既に設計を終えています。せっかくだから見ていきますか?」

「俺の専用機だって!? 見ていこうぜ!」

サニーズとチルドは放置し、レガリアたちはロサノヴァに案内されながらワークショップの奥へ向かった。


ワークショップの奥―MF用発進施設と隣接するAブロックには普段レガリアたちが使用する機体が駐機されており、前回の戦闘から戻って来たばかりのスパイラル2号機と3号機、そして8号機が整備を受けている。

その隣にあるBブロックはまだ運用されていないスパイラル4号機などが保管されているが、このうち6号機、7号機、9号機はそれぞれリゲル、ルミア、チルドの搭乗を想定した調整が開始され、近々彼女らの操縦で実戦デビューする予定だ。

そして、ドック側に近いCブロックは機体組立用の区画であり、ロサノヴァが言う「ライガさんの専用機」の組み立て作業もここで行われていた。

「このフレームはスパイラルをベースに軽量化しつつ剛性を高め、将来的には高機動機へ発展する可能性を持たせています」

ライガ専用機のフレームは既に組み立て作業が進んでおり、人型の形状を成していた。

「なるほど、結構細身な機体にするつもりなのか」

「ええ、無駄な部分を削ぎ落とせば必然的にそうなりますから」

フレームの傍には外装部品もいくつか用意されていたが、いずれも空力特性を考慮した流麗なスタイルを持っている。

「可能ならば早く投入したいが、完成まで時間は掛かるのかい?」

ライガの質問に対しロサノヴァはしばらく考え込んだ後、こう答えた。

「組み立て作業だけなら1ヶ月もあれば十分です。だけど、シェイクダウンを含めた熟成には少し時間を掛けるべきかと」

技術者である彼女は「納得のいかない機体に人様を乗せられない」というポリシーを持ち、それ故ライガにはしっかりと熟成を進めた機体を引き渡したいと考えていた。

「技術面は頼むぞ。俺たちだっていつまでもスパイラルで戦えるとは思っていない。いずれは新型機に乗り換える必要性が出てくるだろうからな」

そう言いながらライガは若き技術者の肩をポンと叩く。

が、彼はロサノヴァより身長が低いためどうも様にならない。

「……ねえ、ライガ。先程リリカさんから電話があって、貴方に『依頼』をしたいとのことよ」

別の機体のフレームを観察しつつ誰かと通話していたレガリアが帰ってきて、ライガへそう伝える。

「依頼? まあ、本人に会いたいし直接話を伺ったほうが早いな」

仕事が忙しいロサノヴァへ別れを告げ、レガリアたちは施工中の指令室へ向かうのだった。


将来的には地球圏規模での活動を想定しているスターライガは、各地で行動するメンバーの状態を把握できるよう正規軍に劣らない本格的な指令室を用意している。

進捗状況を常に視察で確認しているレガリアはともかく、初めて指令室を訪れたライガはただひたすらに感嘆していた。

「すごいな、機材の質だけでいえば国防軍にも負けていないぞ」

「―使っているコンピュータはアメリカ製の高性能な物だからね。まあ、いずれは部品供給の観点から自国製品に切り替えたいと考えているけど」

指令室を見渡していると、電子機器のチェックを行っていたリリカがどこからともなく現れた。

どうもライガたちがやって来たのは分かっていたらしい。

「リリカさん、工事の進捗状況はどうですか?」

「設備自体は専門外だから分からないが、電子機器に関しては人さえ連れて来てくれれば明日からでも稼働できるよ」

「なるほど、では指令室の作業が終わったらMFとスマートフォンの相互通信の安定化を最優先でお願いします」

「で、それが終わったらシミュレータの改良と新型機用アビオニクスの開発でしょ?」

レガリアとリリカが今後の予定について話しているが、それを聞いたライガは不安になってくる。

「おいおい、レガリア。あんまりリリカ先輩をこき使うなよ。先輩だってもう若くないんだぜ?」

彼としては純粋に先輩を心配した発言だったのだが、ロートル扱いを受けたリリカは流石にムッとした表情を浮かべる。

「失礼な、君たちと歳は2つしか変わらないんだがな」

何故か巻き添えを食らったレガリアは話題を逸らすべく本題を切り出した。


「若い子たちから見れば私たちもリリカさんも変わらないわ! そんなことより、『依頼』の内容を詳しく説明してくれますか?」

確かに、200年近い永い時を生きるオリエント人にとって2歳の差など我々の感覚で例えれば数ヶ月程度でしかない。

「うん、単刀直入に言えば私の姉の護衛を頼みたいのだけど」

リリカの説明を纏めると以下の通りだ。

彼女には姉が2人いるが、そのうち一番上の姉にして世界的ヴァイオリニストであるルナール・オロルクリフが故郷サイヨウ市で母国凱旋を兼ねた演奏会を催す予定となっている。

日時は今から約1週間後の8月14日日曜日―諸外国で言う夏休みに相当する「サマーブレイク」の真ん中に位置している。

普通に考えればヴァイオリニストの邪魔をすることがバイオロイドに対し何かしらの戦略的メリットを生むとは思えないが、ここ最近ルナールは「何者かに監視されているような気がする」と警察へ相談していることが判明している。

一応警察は警備体制を強化してくれたようだが、流石に彼女らでもバイオロイドと戦うのは厳しいだろう。

そこで、リリカは元軍人であるレガリアたちへ姉の護衛を依頼したのだ。

「世界的ヴァイオリニストをテロリストの襲撃で失ったとなれば……この国の―いや、オロルクリフ家にとって大きなダメージとなるだろう」

そう言いながらリリカは傍に置いていたアタッシュケースを手に取り、ゆっくりと中身を見せていく。

「前金は1000万クリエン……これで頼めるかな?」

「いっ……いっせんまん!?」

金額に驚くライガをよそにレガリアは紙幣が本物であるかを確認した後、2つの札束をリリカへと返した。

「その200万クリエンは保証金です。今回の依頼の成否に関わらず貴女が持っていて構いません。残り800万クリエンは……」

少し考え込んだ後、レガリアは3つの札束―300万クリエン相当をライガへ投げ渡す。

「えっ!? ナニコレ!?」

大金を前に仰天していたライガはとうとう目が点になってしまった。

一般人の感覚からすれば、300万という金額は現金では扱わないからだ。

「あ、そうそう。そのお金はまだ使っちゃだめよ。万が一にも依頼に失敗したら返さなくてはいけないからね」

本当なら前金は受け付けていないのだが、リリカには教えていなかったので今回は特例である。

「わ、分かった……口座に入れて凍結でもしておくか……(何に使おうか考えてたのに)」

この後、急遽予定を変更し作戦会議を開くこととなったのは言うまでもない。


作戦会議の結果、サイヨウ市へ向かうメンバーはここ最近出撃していなかったレガリアとメイヤ、スターライガとの仮契約を済ませたルミアとリゲル、そして自ら志願したライガの5人に決まった。

本来ならライガを休ませ代わりにブランデルを連れて行く予定だったが、彼がどうしてもと言うため仕方なくブランデルを外すカタチとなった。

このうちレガリアとルミアは会場外でMF戦に備えて待機し、残る3人が会場内に入り白兵戦を担当する。

ここも本当は会場外に3人、会場内に2人とするつもりだったのだが、急遽加えたライガの機体が使えないため、戦力の割り当てを微調整している。


必要機材の輸送を急ピッチで進め、選ばれし5人のメンバーも各自サイヨウ市へ赴くのだった。

地球圏

劇中世界における地球圏はスペースコロニーが浮かぶ宙域までを指す。

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