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【17】スターライガ、西へ

ライガが新たな人材確保に奔走していた頃、レガリアは全国ネットのニュース番組に出演し「スターライガの存在意義」についてジャーナリストたちと激論を交わしていた。

「―ですから、私が言いたいのは将来的に災害派遣などへ対応可能な能力をスターライガに与えたい、そうしなければ発展性に欠けるということであって……」

今回の番組で論争の中心となったのは「過剰な戦力」と「エースドライバーの名を冠したこと」の2点である。

幸い2つの論点に関してはジャーナリストたちを見事論破してやったが、1人だけしつこくレガリアへ食い付いてくる者がいた。

「では、今回のバイオロイド事件と貴女の言う『発展性』は具体的にどの程度関連しているのですか?」

「はあ……フミさん、相変わらず手厳しいわね」

フミさん―フミ・スマヨンはレガリアが生まれる前から活躍していたベテランジャーナリストであり、オリエント連邦が関わってきた戦争に関する著書を数多く発表している。

また、レガリアとは彼女が軍にいた頃からの知り合いでもある。

「手厳しいに決まっているわよ。人々はスターライガの『必要性』『存在することによる社会への影響』について知りたがっていて、私たちジャーナリストは彼女らの代わりに話を聞いて世の中へ知らせるのが仕事なの。

まあ、別に貴女の『商売(ビジネス)』の揚げ足取りをするワケじゃないけど、バイオロイドとの戦いが終わった後の『スターライガの未来』について知りたいと思ってね」

カメラがまわっているのを気にすること無く、フミは「友人」としてレガリアへ語り掛ける。

「うーん、おそらくだけど『彼』なら『スターライガの未来はバイオロイドとの戦いで示す』とでも言うのじゃないかしら」

事実、レガリア自身も考え自体は彼―ライガとほぼ同じであった。

一般市民に対しては「言葉」を重ねるより「行動」で示すほうがメッセージが伝わりやすいからだ。


とにかく、当たり障りの無い問答で出演を終えたレガリアはテレビ局を出て車へと乗り込む。

「ごめんなさい、ちょっと予定を変えるわね。警察総本部に向かってくれない?」

「け、警察総本部ですか? あそこってお嬢様と関係がありましたっけ……?」

運転手が驚くのも無理はない。

警察総本部とはオリエント連邦各地の警察署のトップに相当する組織であり、一般人とはあまり関わりの無い存在だ。

レガリアも別に犯罪を自首しに行くワケではなく、警察総本部の持つデータベースからサレナの居場所を突き止める作戦を立てていた。

また、妹のブランデルには必要な機材を調達させるなど救出作戦の準備は着々と進んでいる。

あとは肝心な目的地を把握すればいいだけなのだが……。


ヴォヤージュ市―。

オリエント連邦西部に位置するこの都市には国内唯一のマスドライバーを擁するヴォヤージュ航空宇宙基地が存在し、ヴワル市郊外の軌道エレベータが完成するまでは「オリエント連邦で最も宇宙へ近い場所」であった。

今回ライガたちがコンタクトをとる相手はヴォヤージュ市郊外のヴィルヌーヴ区で武術の師範代をしているという。

「彼女」に関してはサニーズのほうが旧知の仲であるため、今回はそちらに交渉を任せライガが援護を担当することになった。

彼が待機場所であるヴォヤージュ航空宇宙基地の一角へ食事を終え戻って来た時、MF格納庫付近でコソコソしている女性を見つけた。

ライガはしばらく状況を静観していたが、徐々に警戒心を強めていく。

身体を少し眺めてみたところ、彼女はどうも「素人(アマチュア)」ではなさそうだからだ。

……別に好みのタイプだから尻ばっかり見ていたワケではない。


「君! ちょっといいかな?」

彼女の目的を察したライガは思い切って一言掛けることにした。

「はい、なんでしょうか?」

女性―エレナ・トムツェックの反応を見た時、彼は少々違和感を覚える。

ただのMFマニアにしては身体をしっかり鍛えているうえ、いきなり話しかけたのに全く動じなかったからだ。

これらの要素からライガが導き出した答えは明確だった。

「そのスマートフォンで……何を撮ってやがる!」

次の瞬間、彼はエレナのスマートフォンを手で叩き落とし取り押さえようとする。

だが、相手も職業軍人(プロフェッショナル)なうえに体格がライガより大きい。

必死に体重を掛けたにもかかわらず振り(ほど)かれてしまい、全力で逃げられてしまった。

幸いスマートフォンは回収されなかったので情報漏洩をある程度避けることはできたが、この事態をライガは重く見ていた。

「(軍がついに動き出したか……母さん、これが貴女の答えなのか?)」


ヴィルヌーヴ区郊外のとある道場。

この道場の師範代を務めるリゲル・ナイメーヘンはかつてオリエント国防空軍に所属し、ライガたちと共に戦った経験を持つ。

ただし、彼女は所属部隊が違っていたためライガと共闘した機会はあまり多くない。

また、これまでの結果から彼は交渉人(ネゴシエイター)に向いていないと判断され、今回は仕事柄コミュニケーション能力に長けるサニーズが現場へ赴いた。

「こんにちはー!」

「あ、君たち! ちょっといいかしら?」

石造りの階段を上る途中で子どもたちが元気に挨拶してくれた。

質問したいことがあったサニーズは申し訳ないと思いつつも彼女らを呼び止める。

「道場の師匠さんに会えるかな?」

「師匠なら上にいるよー」

子どもたちは道場の方向を指差し、師匠(リゲル)がいることを示してくれる。

「ありがとう。ランニングを止めてごめんね」

彼女らが再び走り出したのを見届けた後、サニーズは階段を一気に駆け上がるのだった。


開けっ放しになっていた道場の正門を抜け、広場と思わしき場所へ出る。

先程の子どもたちが出払ったためか、道場に人の気配はほとんど感じられない。

だが、扉が開いているのを見つけたのでとにかくそこへ向かうことにした。

その時、扉の方から一人の女性が姿を現す。

ショートカットで纏めた緑髪に180cmへ達するほどの高身長、そして鍛え上げられたしなやかな身体はまさしく探していた人物であった。

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