智香の告白
6月もそろそろ終わりそうな日曜日の朝、俺は走っていた。
今日の朝に夢に出てきた、俺の過去を直接確かめるために神社まで走っていた。
それと、過去の記憶に出てきた俺の友達のことも無性に知りたかった。
(あの夢に出てきた、あの子は誰なんだ?もし手がかりがあるんなら、あそこに行けば、あるかもしれねぇ)
神社に着いた。
自分の時計を見ると、15分でたどり着くことが出来た。
(今日は一番早かったな)
でも、今の俺にはそんなことを感慨ふけっていることは出来なかった。
一刻も早く自分の過去を知りたかったから。
神社の裏手に回った。
しかし、夢に出てきたお花畑の道は存在していなかった。
(もしかしてないのか?いや、どこかにあるはずなんだ)
そう思った。
俺の部屋にあった、四つ葉のクローバーは何か分かるかもしれないと思ってポーチごと持ってきていた。
これがあるのだから絶対どこかに道があると思い、必死に探したが、そこらじゅうに、大きな草や木が生えているため、見つけるのは困難だと思った。
俺は、ポーチから四つ葉のクローバーを取り出した。
(俺の探している所はどこなんだ。教えてくれ、頼む)
その時、風が吹いて俺の手元からクローバーが飛ばされていった。
(こんな時にあれが最後の手がかりなんだよ。無くさせるかよ!!)
そう思い、必死に大きな草をどかしながらクローバーを追った。
急に風が止み、飛ばされていたクローバーも地面に落ちた。
(よし、やっと取ることがができた。早く見つけないと・・・。あれ?ここは)
俺がクローバーを拾って、ポーチに閉まって、あたりを見渡すと、夢に出てきたお花畑が広がっていた。
(もしかして、このクローバーが俺を導いてくれたんじゃないだろうな。いや、そんなメルヘンチックな事起こることないか)
こんなに大きいお花畑があるのに、地元に住んでいる俺は知らなかった。
しかし、なぜか分からないが、どこにどの花があるのか、だいたい予想が出来た。
そのおかげで迷うことなく、いろいろなところを見て回ることが出来た。
(後は、クローバーを取った所だけか。よしいっちょ行きますか)
俺はその場所に行った。
そこには、誰かが座っていたが、俺は、その人物の名前を知っていた。
「何で、智香がいるんだよ」
「私はよくここにいいるの。良太はどうしてここに?」
「恥ずかしいが、俺の昔の記憶を探しに来た」
俺は、ポーチからクローバーを出して、智香に自分の過去の事を話した。
智香は俺の話を真剣に聞いてくれた。
「俺は、どうして昔の記憶がないのか分からない。でもこのお花畑に来れば何か分かるかもって期待していたがダメみたいだな」
「良太はその子に今でも会いたいの?」
「分からない。俺はその子の顔どころか名前すら分かっていない。相手もそんな俺を軽蔑するに決まっている」
「そんな事ないよ!!」
「え?」
「良ちゃんは、昔私のこといっぱい助けてくれた。夜遅くまで遊んでくれた。寂しかった時は一緒に居てくれた人を嫌いになるわけがないよ」
「なんで昔のあだ名を知っているんだ?もしかして」
「四つ葉のクローバー今でも大事にしてくれてありがとね。私のと良ちゃんのクローバーが本当に引き合わせてくれたのかもね」
「あの時の子は、智香だったのか」
「そうだよ。今はこの神社の巫女やっているけど、ほとんどこの場所にいるかな」
「いつから気づいたんだ?俺のこと」
「出会ってすぐに気がついたよ。でも、良ちゃんの方は気づいていなそうだったから言わなかったんだ」
智香は少し拗ねた様な顔で言った。
「うぐ。すまなかった」
「えへへへ、嘘だよ。それじゃあ1つだけ昔から言いたかった事があるから聞いてもらおうかな」
「何だよ。俺に出来る事があるんなら言ってみな」
そのときの智香の顔はとても真剣だった。
「私は・・・」
そのとき、急に風が吹いてきたが智香の言葉ははっきりと聞こえた。
「私は、良ちゃんのことが大好きです、私と付き合ってください」
俺は一瞬戸惑った。
俺の何処に好きになれる要素かがわからない。
しかし、変な答えだけはするなと、自分の奥底で言っている。
俺は、少し考えて智香の顔を見た。
智香は今にも泣き出しそうだったが、懸命にこらえていた。
そんな智香を守りたい、そう思った、自分がいた。
俺は、もしかしたら智香とこ今の関係が壊れてしまうかもしれないが、自分の正直な事を言った。
「こちらこそよろしく頼むな、智香」
そのときに、智香が見せてくれた笑顔は、この先ずっと忘れる事はないだろう。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今回は良太と智香が幼馴染だったと判明しましたね。それで告白。次からどうなるのか、楽しみですね。
次回もよろしくお願いします。
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