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人形2体と行く異世界  作者: 砂上天秤
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動じぬ男

よく来てくれた、残念だがもう一つがまったり投下と書いてあった理由が同時2種小説作成だ。騙して悪いが趣味なんでな、読んで行ってもらおう。

突然だが自己紹介させて頂く、俺の名前はキルト・カルト。

尚、本名は別にあるのでこれは偽名だ。

職業は人形師で職業の傍ら人形の性能確認と金稼ぎを兼ねた、

粛清専門の殺しを請け負っていた。


……過去形である。


過去になった事件の始まりは丁度2時間前のの出来事。

俺はいつも通り新型装備のテストを兼ねて、とある組織を裏切った人形師の粛清の為、

相棒である『前鬼』そして『後鬼』を連れてとあるビルの一室を強襲していた。



              *



「―――クリア、ステータスオールグリーン、キルゼムオール」


血溜まりの部屋に響く不機嫌な声。

その声の主はピンク髪の少女が2本の光り輝く刀、重粒子刀とクラス6改良型光源刀を収納する。


彼女の名前は『前鬼』俺の最高傑作の一機であり、性能美・機能美に特化した機体だ。

普段は重武装の追加アーマーを取り付けているのだが、

今回は室内戦で動きを阻害すると困る為生身の状態で稼働させている。


前鬼には試験的技術を数多く組み込んでいる為、メンテナンス的に不安が残るが、

万全の状態であれば、既存機体を圧倒的に上回るスペックがある。

無論、本日も万全の状態だ。



「同じくクリアだ、損傷皆無、ただちょっと撃ち過ぎた……反省点だな」



前鬼の少女のやや後方で周囲警戒を行っていた黒髪ポニーテールの少女、

彼女は『後鬼』後衛援護用に調整された火器管制システムを搭載しており、

同じく機能美と性能美に重きを置いた機体である。


彼女には既存技術を数多く取り込んでおり、情報さえあれば量産化も可能かつ、

メンテナンス性も非常に高い、比較的修理や改良も簡易ではある。

余談ではあるが、最近軍に次世代機のコンペに出てみないかというお誘いもあったが、

丁重にお断りしておいた、既存技術のフル活用とはいえ一応門外不出の逸品なのだ。



両手に構えた短ガトリングを仮想空間に仕舞いながら、周囲を見渡す後鬼。


「主人、こっちは抑えたけどそっちは?」


『前鬼』と『後鬼』の報告を無線で聞きながら部屋の中を物色する。

依頼主からは重要データと反乱分子の粛清、後組織から奪った金銭が何処に預けられているのか、

同時に何処か別の組織との繋がりが無いかの確認である。


「こっちも抑えてるが……めぼしい物は見つからないな」


『襲撃が予測されていた可能性は?』


無線越しに響く声が俺の思考をピタリと言い当てた、

その可能性もそれなりの確率で存在しているが――



「勘だが無いな、仮に襲われるのを予見していたらもう少し警備が厳重な筈だ」


そう、お粗末にもここの警備は厳重とはいえなかった、入り口見張りが2人に、

人形の部屋には対人用銃器で武装した男が5人、此方にも同装備の男が3人。



「木偶の1体でも配備されてなきゃおかしい筈だ、おそらく本隊は別に存在……」


言葉を続けようとした際に、ふと、目線の端に血に染まったカーペットを捉えた。

何度かズラしたりめくり上げた痕跡がある――なるほど隠し部屋か。


「二人とも、俺の居る部屋の直下にある部屋を少し確認してもらいたい」


『ッチ、面倒ですが仕方ありませんね、一旦移動しますよ後鬼』


『待て、私に良い考えがある、目標は丁度斜め上の部屋に当たる、即ち』


という碌でもない作戦を口走りそうな言葉を言ったと思うと、突如轟音が響いた。

おそらく後鬼がガトリングだか爆薬だかで、天井をブチ抜いて移動したのだろう……発想が物騒だ。


「弾薬費がクライアント持ちだからと言って、使いすぎるのは関心しない、物事はもっとスマートに運ぶべきだと思うが?」


『主人、限られた条件の中で最善を尽くすのが我々の使命だ、時は金なりという言葉もあるだろう』


『ですが、私の刃で切断すればすんだ話でしょう』


双方ごもっともな話であるがせめてほうれんそうはしっかりしてほしい。


「で、どうだ?見取り図上は倉庫になっていた筈だが何か変わった事は無いか?」


『構造的にもう少し天井が高くても問題無い筈だが……低いな、

エコーロケーションでは内部が空洞になっていると判別できるが、どうする?』


やはり隠し部屋か……


「待ちぶせされている可能性もある、ロケーションを解析してどの部屋に通じているのか確認、

此方と合流し次第突入するぞ、ここまでで人形の1体も出てこなかったのが不安だ、

隠し部屋に入った瞬間数十体に襲われたとか洒落にならんぞ」


『承知した、前鬼、最短距離を切り開いてくれ、対人形ロジックの並列使用も忘れずにな』


『むしろ先程から貴方が起動してない事に驚愕です』


「相変わらず仲睦まじくよろしい事で」


軽口を叩きながら散乱した資料をかき集め部屋を後にした。

もっとも……この資料も必要無いのだろうが念の為だ。



                 *



俺の人形が何故『前鬼』『後鬼』などという飾り気の無い名前なのか、

それは俺の生まれが陰陽の流れを組むという事が起因する。


遥か過去から存在する組織、陰陽師。

されどそれは時代の流れと共に衰退し、自然消滅した……筈だった。

だが、実際には現代科学と融合され、新たな近時代陰陽術となり蘇ったのだ。


その最たる成果が『人形』と呼ばれる人型の兵器だ。

人型の兵器を武装させ、人のように動かすにはハード側ソフト側、

双方に大きな問題がある。


だが、ソフトウェア側がハードウェア側を補佐するのであれば、

ハード側に求められる仕様難易度が大幅に下がる……らしいので、

陰陽師が式神と呼ばれるソフトウェアを興味半分で機械の身体にブチこんでみた所、

なんと動いたらしい。


それ以来人形兵器技術と陰陽師は密接な関係となり、製造技術とOS技術を、

一部陰陽師と企業が独占、戦車よりも安く、麗しく、小型で汎用性も高い。


現在の日本国が仕様する兵器の4割は人形であり、残りの6割がこれまでの通常兵器と言われており。

その浸透率の深さも伺え――――――




「主人、そろそろ現実に戻られたらどうだ?」


そんな、冷たい言葉を後鬼から投げかけられた。


「………簡単に言ってくれるな」


ほんの数十秒前まで、自分たちは発見した隠し部屋の中に入ろうとしていたのだが、

結果から言うと、我々はどこかに飛ばされた。


出現位置は森、そう……森だ。


現代社会の破壊されきった自然環境では天然物の森林なぞそうそうお目に掛かれるものでは無い。

かくいう俺も森などという存在を生まれて初めて目にした男の一人だ、感慨深い。

……実はちょっと感動で泣きそうだったりする。


「ッチ……マスター先程の幾何学模様の解析ができましたよ、このうっかり八兵衛」


「うっかりはお前だろうが……許可出す前に壁を切り刻んでからに」



隠し部屋は幾何学模様の入った部屋、おそらくだが今回の案件には陰陽師が絡んでいたのだろう。

隠し部屋に正当な手順を踏まず壁を破壊して侵入した為、何かしらの防衛機能が働いたと見るが妥当か。



「照合データ有り、マヨイガの術式、かなり古くから伝わる物で対象の認知をずらしたり、

幻覚を見せたりできます、もっとも、科学の力で性能は飛躍的に跳ね上がっている為、

効果自体は似て非なる物と推察してよろしいでしょう」


「……ああ、『世界側』から『此方』の認知をズラしたのか、確かにそれならばコレは可能だが、

だとすれば帰るのは果てしなく面倒というか不可能に近いな……考えた奴は天才か?」


その言葉に即座に前鬼が反応した。


「問、世界側から此方に対する認知をズラしたとは?」


「例えばだ、万華鏡ってあるだろ?アレを覗きこんでいるのが世界という1人の個人だと考えろ、

角度を変えれば世界が変わる、それは時間的な変化だったり、時限的な変化だったりする訳だ。

で、もしもその万華鏡に虫等の不純物が混じっていたとしたら?」


「修理、あるいは新しい物を入手します」


「その通り、で、実際に一度修理する為に開いてみたが……虫も何も入ってなかった、

試しにスパンコールなんかを手にとって見ても不審な点は無いので、中に戻すが……」


「同じ場所に戻るとは限らないと」


コクリと頷く、即ち俺達は………


「時空的にズレた場所に来た可能性がある」


「問、マスター私のアニメはどうなりますか」


「………2ヶ月ぐらいでデスクの要領が一杯になるな」


「マスター!帰りましょう!早く!!」


「ソレができれば苦労はせんと言う」


全力で項垂れる前鬼、普段からツンツンしているコイツが全力で凹んだのは、

アニメの録画が失敗した時ぐらいなのだが……今回はそれを大いに超えて凹んでいる。


「前鬼、宇宙空間に投げ出され思考停止するよりはマシだと考えよう、

主人が居る限りまだ救いは大いにある、それに最悪円盤を買えばいいだろう」


「後鬼……ええ、そうですね、この際リアルタイムでのネットワーク話題に乗り遅れる事は、已む無しと考えます」


かなり俗世間に侵された人形ではあるが、これでも優秀なのだ……うん、優秀だよな。


「主人、まずは現状把握と工房の作成を優先するべきと進言する、我らに残されたリソースは少ない、

私達2人と違い主人は食料、水、住居、衣類、等必要な物は多い。

さらに言えば、現状でこそ大丈夫だが我々のメンテ……特に前鬼の問題がある」


流石後鬼だ、ややおっちょこちょいな所もあるが、指揮官用のロジックを積んでいるだけの事はある。


「……とはいえ俺が食える物があるか微妙だな」


「主人、毒物にも気をつけなければならないぞ?

では、前鬼はやや遠方を円形状に散策を頼む、私は主人と共に食べ物や水源の確保を行う」


「貸し1ですよ、マスター」


「止む無しか、戦闘になりそうな行動は可能な限り回避しろ」


「承知、では参ります」


そう言うと、前鬼は木々を蹴り上がりながら上空へと飛翔していった。

少しばかり不安も残るが、そこは我慢するとしよう。


『マスター、早速ですが良い報告と悪い報告があります』


「早すぎるな、10秒立ってないぞ……どっちでもいいから早く報告しろ」


『では良い報告から、この世界にも人間は居ます

……尚、現在進行形で戦争中のようですね』


「確かにまだ良い報告だ、で?悪い報告は?」


『武器を持った人間に見つかりました、此方を狙っていますね

武装は中世レベルでしょうか?かなりボロい剣に木材の鎧が目に付きます』


時代を遡った可能性もあるのか?そこまでは考慮していなかったな。


「……捕縛できるか?可能であれば言語解析を行いたい」


『やってみましょう、複数人居ますが殺害は?』


「最悪許可するが、できれば交渉を行いたいのでそれは回避しろ」


『承知』


その言葉を皮切りに、周囲を爆音が包んだ。


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