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限界英雄  作者: 703
10/12

引かれる2つの意志

目を疑う光景…あの限界英雄が

何もできずに血だらけで

身体を震わせながら横たわっている…



「これでもまだ命があるとはな

下手な延命は、苦痛なだけだ」



「ゼマ君…ッ‼︎」


周囲は龍の熱波で近付けない…‼︎

ゼマ君ッ…やっぱり私は

何もできないの…⁉︎



-特警課-


「アイツ…避難しろとあれほど

言ったハズなのに…‼︎」


予定外の事態に机を叩く課長

必要最低限の機材を持ち

警察署へ駆ける



-警察署-


「…お前は何だ

こんな所になぜ来た?」



龍と眼が合った…全身が竦む威圧感

一つの動作を見るだけで震える…


「私は…特警課として

何が起こっているか…

知る為にここに来ました…‼︎」


「…そうか、それならよく見てみろ

お前の上司に嫌々、私と戦わされ

生死を彷徨っている…人の姿をした

罪深い、哀れな化物を」


「ゼマ君を…そんな風に

なんで言うんですか‼︎

未来の為に一生懸命戦っている

あなたと同じ限界でしょう⁉︎」


「コイツを私と一括りにするな…‼︎」


ゼマ君から視線を外さないボス

その眼は、何処と無く課長と似ている

憎しみと悲しみを必死で隠している

過去を思い返す眼…



「未来を考え、それを遂行できる

正義を持つ者は…私だけだ」


「正義…⁉︎

相手の意見も聞かないで

自分勝手に他人を殺めるのが

正義だって言うんですか⁉︎」


「お前に理解できないのも仕方無い

正義は善悪では無く完全なる主観

批判されることは不思議なことでは無い

だが、それが正しかったと気付く時が

必ずやって来る…迷いは無い、私は

自分の正義を貫き通す…‼︎」


龍が天を仰いで、咆哮を上げている

…まるで、自分を示すように



「あなたは…次に

何をするつもりですか…⁉︎」


「この付近にいる限界達を始末し

この国から限界を排除する」



この付近の限界…まさか…‼︎


「シアちゃんも…それ以前に

あなたの仲間の限界も始末する

つもりなんですか⁉︎」


「仲間だと…?

力に溺れ、人の道から外れたヤツ等を

そう思ったことは一度も無い」


「ふざけないで…‼︎」



「乃華さん…もう、いいです…」


「ゼマ君…ッ⁉︎」


あんな傷を受けて…なぜ…⁉︎



「超細胞回復能力か、しぶといな…」


「オレは…お前を、倒す…

シアの所には…行かせない…‼︎」



ゼマ君の傷口が少しづつだけど

塞がっている…これも限界英雄の力

いや、ゼマ君の思い…うッ



「アンタ、どうして来た⁉︎」


「課長…」


陶酔している私を現実に戻す声

私の肩を掴み、息を荒くしながら現れ

怒りをぶつける…その顔を見る度

申し訳無さが込み上げてくる



「課長…やっぱり私は

自分だけ安全な所になんて

いることはできません…

何もできなくても、せめて

皆の所にいたいんです‼︎」


「良い加減にしなさい…‼︎

遊んでるわけじゃないのよ⁉︎

一歩間違えば死ぬの‼︎わかってる⁉︎」


課長の手の力が強まってる…

私の命を考えて…でも


「わかってます

危険は承知でここに来ました

…私の身に何が起きても

課長や皆の責任じゃありません

だから、見届けさせてください…‼︎」


「…アンタは、どこまで…‼︎」


私の言葉で、項垂れる課長

どうして、私にそこまで…



「なるほどな…

閃、貴様の部下はヤツによく似ている」


ボスは課長を見据え呟くように言う

…ヤツって一体



「重ねるつもりは無いわ…

でも、馬鹿を2人も死なせるわけには

いかないのよ…」


課長はボスを睨む

私の前に、誰かが死んだの…?



「まぁいい…

私の狙いは限界だけだ

貴様の部下など眼中に無い

ここにいたければ好きにしろ

貴様が仲間だと言った限界の死を

眼に焼き付けると良い」


「…ッ」


再び、ボスはゼマ君に向き直る

ゼマ君は全身が血だらけだけど

傷は、ほとんど修復してある

カウントは4800、闘志は削がれていない



「仲間に時間を稼いでもらい

立ち上がれる程度に回復したか

だが、それでまだ私に勝つ

つもりでいるのか?」


「ああ、そのつもりでここにいる‼︎」


「…生意気を」



「課長、後の事は頼みます」


「ええ…」


不意に振り返り、課長に何か

呟くゼマ君、何をするつもりなの…⁉︎



「はぁぁぁぁぁぁッ‼︎」


一呼吸すると、ゼマ君は

白い雷のような閃光を見に纏う

カウントは、いつもと

比べ物にならない速度で低下してる

3000…2000…1000…ゼマ君、まさか‼︎



「一撃に全てを懸けるつもりか…

ならば、来るが良い…‼︎」


咆哮し微動だにせず

ボスはゼマ君を睨み付ける

この一撃で、全て決まる…



「行くぞッ‼︎」


「ぐッ…‼︎」


全ての力を左腕に込め、飛ぶ

あまりの威圧に龍は呻く




「ゼアァッ‼︎」




拳の激突と共に光が爆発

何も見えないほどの衝撃と轟音

周囲のものは全て吹き飛ばされ

私も課長も、数m離れた花壇まで

吹き飛ばされた…‼︎




「はぁッ…はぁッ…

どうなったの…⁉︎」


今だに視界がぼやける

龍のシルエットはまだ見える…

…ってことは…まさか、ゼマ君…‼︎



「終わったわよ」


私に近づいて来る人影…課長だ

疲れ切ったような、そんな声で私に言う




「はぁ…はぁ…くっ…」


ゼマ君は拳を当てたままの状態で

微動だにしない…カウントは…



「0…⁉︎」



「哀れな小僧だ、全力を出した一撃が

結果、私の糧となるとはな」



ボスは無表情に言う…

そのカウントは56000…なんで、こんな…



「光を吸収したのよ…

ヤツは高純度の光が何よりの供給源

ゼマの攻撃は…無駄だった

そういうことよ…」


「そんな…あんまりですよ…‼︎

じゃあ…ゼマ君は何の為に

力を振り絞ったって言うんですか…⁉︎」


「…。」



「課長…なんとか…言ってくださいよ」


もう、終わったんだ…勝てなかった

私が見届けに来たのは…絶望だった



「さらばだ、無力な英雄よ」


「がッ…‼︎」



もう、何の力も残されていないゼマ君を

地に叩きつける…カウントは無い

あの子は…死ぬ



「未来の糧となれ…‼︎」




「ゼマ君ッ‼︎」




「ッ…やめなさい…‼︎」


「バカなことを…‼︎」




…遠くで、課長とボスの声が

聞こえた気がした…体が、妙に軽い

…そうだ、私…ゼマ君を庇って…




「なぜ、無茶をした…‼︎」


困惑と怒りの表情で乃華を見るボス

ゼマを庇い、龍の尾が乃華に激突

宙を舞い地面に人形のように落ちる

辺りに、骨が砕けた音が響く

多量の血を吐いた乃華は、誰の眼にも

死が伝わり、その場を凍らせた

…しかし



「私…生きてる…の…?」


確かに死を覚悟した…

龍の尾が体を打ったのも覚えてる

でも…なんで、痛みも無い…




「無茶し過ぎですよ、乃華さん」


「ゼマ君⁉︎」


ゼマ君が…なんで⁉︎

さっきまで…死にそうだったのに

今は、体も輝いてる…



「小僧…‼︎

なぜ、立てる…⁉︎」




無限界アンリミッター

アンタが、知らないハズ無いでしょ」


驚愕するボスに

課長は微笑を返す…この人は

まさか、ここまで読んでたの⁉︎



「バカな、無限界は人格を崩壊させて

現れる副作用…‼︎人格を保ったまま

現出する事など…‼︎」


「誰に言ってんの

私は限界の基盤を創ったのよ?

アンタが限界の能力を改造したように

私は限界の基盤を改造したのよ」




「昨日、特警課に戻って

課長から全て聞いた

オレの力の有効利用法も

アンタを倒す方法も…‼︎」


昨日、私が警視総監さんと

話してた間に、そんな事を…



「私に倒される事も

計算内だったということか…⁉︎」


「さっきまでのオレじゃ

アンタを倒す事はできなかった

だが、この力なら…‼︎」



ゼマ君は天高く左腕を掲げる

その手の甲には、確かに

∞の一文字が刻まれている

でも…あの時の、ガウ君の時みたいな

狂気は無い、暖かい…光の姿

…そうか、この光が

私を助けてくれたんだ…



「…無限界英雄アンリミッター・ヒーロー


死を超えた、真の英雄…



「何を粋がっている…‼︎

カウントが無制限になった如きで

私に勝てると思うなァッ‼︎」



ボスはカウントを、常軌を超えた

30000消費し、全身を輝かせ

両手・口内に光を凝縮…‼︎

間違い無く…撃ってくる…‼︎



「乃華さん、じゃあ

見ていてくださいね」


「え…?」



「オレの…必殺技」



私の脳裏に、ゼマ君と出会って

次の日の記憶が流れる…



『…変ですよね?

英雄って、大袈裟な感じで』


『ううん!そんなことないわ!

カッコイイじゃない英雄!

私、昔からそういう、なんて言うか…

正義の味方!って言うのに憧れてたの!

感激だわ、本物の英雄に会えるなんて』




『え、じゃあ必殺技とかもあるの⁉︎』


『ひ、必殺技…⁉︎』


『あ、もしかして昨日の最後の一撃!

あれがそうなの⁉︎なんて言う名前⁉︎』


『必殺技なんてそんなの無いですから

テレビの中だけですよ、そんなに

ふざけて戦えません』



『そっかぁ、ちょっと残念だなぁ…』


『乃華さんも大概、変ですね』


『うっ…』




「遅くなって、すみません」



ゼマ君はいたずらっぽく

私に微笑む…そんな昔のこと

まだ、覚えていてくれてたんだね…


「やるんだったら…

ちゃんと、カッコ良くね…‼︎」



「…はい!」



こっちを一瞥すると、ボスに向かい

光の残像を残しながら、ゼマ君は飛ぶ



「はぁぁぁぁああああッ‼︎」


「ガアァァァアアアアッ‼︎」



龍神の光線と英雄の拳が

再び、中空で激突…でも…‼︎


「押し負けてる…‼︎」


奔流と激突したゼマ君は

徐々にだけど、後ろに退いてる…‼︎

これじゃあ…‼︎



「違うわ、見てなさい」


「え…?」




「はああああああッ‼︎」


「なんだと…⁉︎」



ゼマ君が光を吸収してる…‼︎

光の奔流を…全て…‼︎




「今のゼマは、本当の意味で

痛みや衝撃を力に変える事ができる

相手の力を全て、その身に宿して

更に力を増すのよ」


「これが…」




「小僧…‼︎

お前は一体、何者だ⁉︎」



「オレは、何の変哲も無い

ただの…英雄だ‼︎」



凄い…これが、本当の英雄…‼︎




「英・断・拳‼︎」




「グオォ…ァァッ‼︎」



龍神でも取り込む事のできないほど

強大な光の拳…遂に、ボスが…倒れた‼︎




「オレの勝ちだ…‼︎」


「いや…まだだ…‼︎

貴様と同様に…私にも

無限界の機能はある…‼︎」


「待て…‼︎

お前はまだ死んでいない‼︎

無限界は発動しないハズだ‼︎」


「フフッ…通常ならば…な

何のリスクも無く、限界の改造など…

できるわけが…あるまい…‼︎

あれほどのショックを受けた今…クッ…

限界の…機能は…うッ…

正常には働かない‼︎…グッああああッ‼︎」



「なんだと…‼︎」


「ゼマ、展開は読めていたハズ

これからが本当の勝負よ…‼︎」




…悪人が最後に酷い目を見るのは当然だ

やはり、あの人も最後はこうなる…

…でも



「もう、いいでしょう…⁉︎」



「アンタ…それは…‼︎」


…倒すしか無い、でも

苦しませたく無い…だから

…これはあるのかもしれない




「ぐッ…これは…

…そうか…完成させていたのか…

私ともあろうものが…フッ…

介錯されるとは…な…」



ボスは最後に笑みを浮かべて…崩れた

彼にとって、これは…良い終わり

だったのだろうか…?



「敵、限界龍神がこれ以上の

苦痛を見出さない為…

因子消滅弾を、使用しました…」


「…。」


課長もゼマ君も何も言わない

ただ、深く溜息を吐き

ボス…いや、天見 侊さんを

見つめて…うッ…‼︎



「至急、医療班を呼ぶわ

ゼマの光を受けてたから

死にはしなかったし、一時的に

痛みも和らいだけど…重症なのよ

しばらく、じっとしてなさい」


「…あの、課長」


「何?」


「これで、私もやっと…

半人前…ですかね…?」



「バカ」


「はは…」


数分後、サイレンを鳴らして

救急隊が駆け付けてくれた

それからの…意識は…




「課長、オレ

シアを迎えに行って来ます」


「好きにしなさい」


「はい!」


戦いも終わり、約束を果たす為

ゼマは現場を後にし、駆ける



「終わったわよ…ヒロ」


そして、天を仰ぎ

一人、呟く課長





-警察署付近の公園-



「シア‼︎」


「ゼマ君…」


戦いのせいか憔悴し

公園のベンチに腰掛けていたシア

辺りにシア以外の姿は見えない



「そっちも、終わったみたいだな」


「うん…ちょっと

大変だったけど…なんとか…」



「そうか、じゃあ帰ろう」



「その前に…ゼマ君

私と、話をしない…?」


「…今か?」



「うん…座って」


自分の右隣を差すシア

ゼマはとりあえず、横に座る



「話って、何の話だ?」


「ちょっとしたこと…

大丈夫、早めに終わるから…」


気恥ずかしそうに俯くシア

…そして



「昨日、迎えに来てくれるって

言ってくれて、本当に…ありがとう」


「そんなこと…

何でも無いじゃないか」


「でもね…嬉しかった

私は、一人じゃないんだって

そう思えただけで…本当に」


徐々に囁くような声になり

ゼマの肩に寄り添う



「一人じゃないさ…シアが

それをオレに教えてくれたんだろ?」


病院でシアが励ましてくれたことを

思い出し、優しく肩を抱く



「ゼマ君…あなたと会えて…

本当に良かった…最後に

さよならが…言え…て…」



「シア…?」



急に、シアの身体から力が抜ける

そして突然、腹部から血が溢れ出す



「オイ…‼︎シア‼︎

どうしたんだよ⁉︎オイ‼︎」




「彼女はもう

力の全てを使い果たしたよ」




「ロア…⁉︎」



ゼマの問いに応えるように

背後から、沈鬱な表情のロアが現れる



「どういう事だ…⁉︎

まさか…お前が‼︎」


「それは違うよ

ボクは彼女に手を出していない

やったのはフーさんさ…

彼女はフーさんとの死闘の末

何とか倒す事には成功した…けど

致命傷を負ったのさ…そして

最後の力を振り絞って、傷口に

宝石で蓋をし…キミが来るのを待った」


「オレが来るのを…⁉︎」


「間違い無いよ

戦ってる最中、言ってたからね

ゼマ君と一緒に帰るんだって

でもまぁ、キミのせいじゃ無いよ

彼女はもう、力を使い果たしていた…」




「シア…ッ‼︎」


ロアから事の顛末を聞き

シアの亡骸を抱き締め、涙を流す

…すると



「始まったね…無限界が」



ゼマが抱き締めるシアは

次第に、透明度を増し

遂には美しいクリスタルの

宝石像へと姿を変える



「ッ…くッ…‼︎」



もう、体温も鼓動も感じないシア

ゼマはゆっくりと手を離し立ち上がる



「綺麗だね、本当に…」



瞬間、黒い殺気が周囲に

毒のように広がり

シアの宝石像は粉々に砕ける




「アハハハハ…ッ‼︎壊したくなるよ…‼︎

こんなに綺麗だと、本当に…‼︎」



「お前…何を…ッ」


突如として、狂ったように笑うロア

粉々にしたシアを更に踏み付ける



「傑作だったよ…‼︎

キミの仲間の死は!いつも‼︎

一生懸命で、美しくて、儚い‼︎」



「お前…何してんだよ、やめろッ‼︎」



「できないなぁ‼︎」


怒るゼマにワイヤーのような

紫の糸を放ち、束縛する



「なんだ…⁉︎

これは、精神操作じゃない⁉︎」



「彼女も残念だったよねぇ‼︎

よりにもよって、融合限界リミックス

戦う羽目になるなんて‼︎」


「リミックス…⁉︎

貴様、さっきから何を言っている⁉︎」



「L-因子をさぁ…‼︎

フーさんに注入してみたんだよ‼︎

どうなるか、試しに‼︎」


「(コイツ…仲間に何を…‼︎)」



「そしたらさぁ…面白かったよ

限界猛虎リミッター・タイガー限界合獣リミッター・キメラに進化した‼︎

見せてあげたかったよ、あの醜い姿‼︎

…でもさぁ、すぐに暴走してさぁ‼︎

正気を失って、彼女が必死に

止めようとしたのに振り切って

致命傷を与えた後…死んじゃった」


肩を竦め、御伽噺のように

先程までの出来事を笑いながら語る



「それなら…‼︎

シアを殺したのはお前じゃないか‼︎」



「アハハハハハッ‼︎

だから言ったじゃないか

ボクは、彼女には…

手・を・出・し・て・い・な・いって‼︎

あ、でも間接的に殺したのはボクか

キミ頭いいねぇ‼︎クククッ‼︎アハハハ‼︎」



子供のように他人の視線も気にせず

踊るように、宝石像を踏み荒らすロア






「殺してやる…」






ゼマの心の中に、反吐のような

汚臭のする、黒く、重いものが

流れ、積もり、溢れ出す



「…殺す…お前を…殺す…オレが…

何も残さず…この手で…全部…殺す…」




ドロリとゼマの左腕が

胴を離れ、地面に堕ちる

…そして



「ウォオオァアアァァァァアアアアッ‼︎」



何も無い肩口から突如として

巨大な漆黒の腕が生え

ゼマの咆哮と共に、嵐が吹き荒れる



「キミの、その腕は…⁉︎」



変化に気付き、天高く現れた腕を

凍り付いた表情で見る



「グァウゥッ‼︎」


「ぐッ…あ…ッ…まさか…‼︎」



束縛していた闇の糸を突き破り

獣のように獰猛に、ロアの体を掴む



「…そうか…キミが…」



ロアが呟いた瞬間、その体は

頭と左腕を残し、灰も残さず消失

残った頭は眼を見開いたまま

力無く、地面を転がり

左腕はしばらく痙攣した後

動きを止める




「はぁッ…はぁッ…‼︎

ぐッ…うああぁぁァアアアアッ‼︎」


仇を葬ると、黒い左腕は

標準の大きさに戻り、静まる

ゼマは右手で頭を押さえ

左腕を地面に叩き付け

天を仰ぎ、心を炙られながら

助けが無いことを知りつつ叫ぶ




-特警課-


「…どうしてよ…」


天に伸びた漆黒の腕

それを見た課長は、憤怒と落胆

その両方が心に乗し掛かる



「ヒロ…あなたのやった事は

結局、無駄だったの…⁉︎」




2年前、限界英雄に封印された

三種の神器'地の因子'を注入され

幾つもの街や人を灰も残さず消した

最悪の限界…限界虚無リミッター・ゼロ ゼろ悪魔あくマ

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