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限界英雄  作者: 703
1/12

血から力

「こりゃあ…ひどい…」


日は沈み、満月の月明かりが照らす一軒家

何かのお祝いだったのか、大きめの机には

ケーキやご馳走が並び、それを囲むように

父、母、娘と見られる家族が座っている。

微笑ましい光景である。

ただ、可笑しな点は、机の上のご馳走が

おそらく、人間の血で赤く染まっていたこと。

家族全員、バラバラにされていた事である。

通報を聞き付けやって来た警官隊は

顔を引きつらせ、吐き気を催す者もいた。

それだけ、現場は凄惨で残酷に整っていて

見る物によっては…美しかった。


-翌日-


ことの次第は無論、各地の警察署にも

知れ渡り、捜査が進められていた。しかし…。



「どうしてもっと重点的に

調べないんですか⁉︎大事件なんですよ‼︎」


上司の机を思い切り叩き、声を荒げる

スーツ姿の女刑事。数分前に読み終えた資料は、

既に力んだ手で事件の被害者のように哀れにも

ぐしゃぐしゃである。



「はいはい、そんなに力まないで

今回の件はアンタの担当じゃないわよ」


外はよく晴れた晴天、課長は溜息を一つし

駄々っ子を収めるように、やんわりと返答。

表情からは明らかな面倒臭さが滲み出ている

おそらく、こんな事が何度もあったのだろう。


「ですが、話によれば事件はここ近辺で

あったんでしょう⁉︎だったら、まだ

犯人はこの辺にいるかも…」


「ここは警察署よ

探偵さんは、お呼びじゃないわ」


「ッ…‼︎」


一笑する課長、赤面する巡査、鈴木 乃華。

室内でもクスクスと笑い声が聞こえたため、

諦めて、席に着こうと後ろを向いた。



「…でもそうね、そんなに興味があるなら

あなた、ちょっと捜査してみる?」


「え…?私がですか⁉︎」


「言い出しといて尻込みしないで。

もちろんそうよ、しかも1人で

あと、表向きでは私怨による勝手な

捜査って事で言っておくから、給料も

その分、遠慮なく差し引くからよろしく。

さ、行ってらっしゃいな。

私も仕事があるから、あなたにこれ以上

構っていられないのよね。」


淡々と早口で業務連絡をこなし

その後、早々と自分の業務に戻る。



「もしかして今、私、ピンチですか…?」


「そうね、私が今のあなたなら

土下座して前言撤回するわね。

まぁ、現在、逆の立場だから言うけど

そんなことしてもダメよ。」


「うぅ…」


下手な正義感は今後、振りかざすまいと

何かに誓った乃華巡査だった。

ちなみに誓った回数は既に50は超えている。




「…はぁ、調査って私一人で…。

どうにかなるのかなぁ」


ここら一帯の地図と最低限の資料を手に

とりあえず、歩き出した。署に入って

1年経ったけど…いまだにこんなだ。

私が悪いんだけどねぇ…。

単独で物事を調査したのは、小学生の時

逃げ出した友人の飼い犬捜索以来の事だな。



(家族全員、バラバラに引き裂かれて殺害...

現場には犬のような毛や足跡…)


改めて資料に眼を通す。何となく

犬と縁があるな、と表情には苦笑いが浮かんだ。

しかし、かなり残酷なやり方だ。

さらに読み進めてみると…。


(しかし、近隣の住人は獣の声など

聞いた者はおらず、更に、害者の悲鳴等も

耳には入らなかった…か)


違和感が頭を駆け巡る。仮に犯人が

気配を殺し、近寄って犯行を行ったとする。

でも、現場を見るに、被害者の真っ正面から

暴行を行ったのは間違い無い。

人間3人を容易く殺せる力などあるのか…。

穴が空くほどに資料を凝視し

あらゆる可能性を導き出す…そして。


「あ…っ」



-ごんっ-



見事に電信柱に頭から激突した。

間の抜けた声を漏らしながら。


「くぅっ…くっ…」


いい大人が大通りで思わず座り込む。

痛みと衝撃はこの所、書類処理しか

していない体にはキツかった。


「なにアレ…正直、ヤバくない?」


「テレビで見るようなやつだよね

大丈夫なのかな〜?」


少し離れたところで女子高生の

哀れみの声が聞こえる。しばらくすると

携帯電話のシャッター音が辺りから聞こえる。

そんなに、国民は新米刑事の失態を

面白がるのかこの国は…しかし。



「すみませんッ‼︎大丈夫ですかッ⁉︎」



遠くで我を忘れ、心配する声が聞こえる。

ああ、こういう人も中にいるのだな…と。

この国も捨てたものでは…。


「ええ、大丈夫ですよ…

不注意でぶつけただけなので…。

心配してくれてどうも…」


赤くなった額を抑え、微笑を浮かべ

恥描いたけど大丈夫アピールするのだが………。



「あれ…?」



よく見ると、誰も、自らの不注意で

電信柱に激突した私など見ないで

道路の中央部を見ている…?


「人身事故…!!」


どうやら、電信柱激突事件と同じタイミングで

事故が発生していたらしい…‼︎

ぶつけた黒い乗用車は人の血でボンネットを

赤く汚している…。

先程、叫んでいた女性もぶつけた相手に

駆け寄って声をかけていた。




「すみません、警察です!」


現場にいたからには収める義務がある…。

ガードレールを乗り越え、走り寄る。

跳ねられたのは、17歳位の少年だ。

道路に倒れて、頭から血を流していた…。


「この子が急に道路に出てきて…‼︎

当てるつもりは全然…‼︎」


跳ねた女性は涙ながらに事情を説明してきた。

言葉が言葉になっていないほど動揺し

怯えて身体を震わせている…。



「わかっています、救急車を呼びましょう。

事情聴取は後ほどで…」


とりあえず、女性を安心させ、

携帯電話を取り出し、119のボタンを順番に押す。

事は一刻を争う…!



「う…あぁ…いえ…大丈夫、ですよ…。

オレの不注意ですし…」



「え…?」



携帯電話の画面が暗くなったと思ったら…。

倒れた少年が立ち上がった…ぁッ!?

流れる血を面倒臭そうに手で拭き取って

首や肩の骨を鳴らし、立ち上がった…。

で、その血が、私の服やら携帯電話に

かかったんだけどぉ…!?



「いつもの事なので、あとオレ

保険証、持って無いんですよねぇ…」


首を傾げて、困ったように笑う少年。

どんなデンジャラスエブリデイを生きているんだ。

私のすぐ後年に生まれた若者達は!

若者の人間離れがすごい!



「今回の場合、保険証…とかは

いらないと…思うんだけど…なぁ…」


私も思わず、唖然としながらも

返答してしまう…。この答えであってるだろうか。



「それよりも、あなた…」


少年はギロリと自分を跳ねた女性を見据える。

明らかに何かを言いたげの表情に

周囲の空気が強張った…。野次馬の何人かは

その姿で逃げ出すほどに。



「は、はい…ッ‼︎」


女性はすっかり気圧され、虫のように手足を使い

後退りを始めている。その目には涙が…。

引きつった笑みは失神寸前の証拠だ…。

…わかるよ。



「さっきは、見事に跳ねてくれましたね…?

天にも登る気持ちでした…」



「ひっ…‼︎」


ほんの少し焦点のずれた目で見つめ

少年は女性の手をいきなり握り締めた‼︎

その場の全員に冷や汗がながれる!


「き、君…‼︎

何する気なの⁉︎」


復讐に走るつもりか…⁉︎と感じ

いつでも動けるように身構える…んだけど…。



「とても良い痛みでしたよ‼︎

今日一番の痛み‼︎わかりますか⁉︎

あなたがオレを跳ねた位置は

現在地から5m前‼︎随分飛びました‼︎

それに相当、混乱していたんですね⁉︎

ハンドルを左に回したのでオレも左へ‼︎

お陰様でガードレールに追加衝突‼︎

あなた本当は殺し屋では…‼︎」


「ええぇぇええッ⁉︎」



いきなり事故の熱弁を開始⁉︎

興奮して血が噴き出してるし…‼︎

眼は充血して正気の沙汰とは思えないし…‼︎

こんな状況下、普通の人間には

対処するのは難しいよ‼︎

私も、ちょっと…これは…。



「ちょ、ちょっとキミッ⁉︎」



「あ、警察の方ですね⁉︎

今回の件は全責任オレですから‼︎

でも取り調べはお願いします‼︎

願望が通るならひと昔前型の

刑事の方を指名したいんですがッ‼︎」


「いやぁぁあああッ‼︎」



「ありがとうございます‼︎」


「この人、変態だぁッ‼︎」


詰め寄って来た少年の頬に思わずビンタ!

でも、数秒後にお礼の言葉‼︎

我を忘れて叫ぶ私の声が街に響き渡る‼︎



「ウオオオオオオゥッ‼︎」



「えっ…?」


突如、自分のものではない叫びが聞こえる。

いや、叫びと言うよりも獣の咆哮。

普通こんな街中で聞くような音じゃない…。

…あれ、獣の声って…。



「あそこに何かいるぞ!」



「え…⁉︎」


人混みの中から誰かがビルの屋上を指差す。

見ると、青みがかった黒い毛並みで人に比べ、

大きい瞳と開いた口。しかし、二足歩行の獣人が

ビルの上に立ち、家畜のように群がった

地上の人を見下ろしている。


「グウゥ…」



「狼…男…⁉︎」


この辺ではコスプレのイベントでも

やっていたのかと、一瞬考えたが

どうやら、そんな冗談混じりの事では無いと

本能が体に訴えかける。多分、緊急事態。

だが、狼男対処などどうするのだ

元来、そういったオカルトな知識など

持ち合わせてはいない。

一兵卒の刑事では手に余る事態だ!



「あ、ヤバい…‼︎

アイツの処理、忘れてた…‼︎」




民衆が硬直する中、少年は一言呟くと

狼男の立つビルへと走り出す…って言ってる場合か!

行かせられない‼︎



「ぅわっ‼︎」



「ちょっと…‼︎キミ‼︎待ってよ‼︎

よく見て‼︎アレがなんだかわかってるの⁉︎

多分、仮装とかそう言う類じゃ無いわ‼︎

怪物なのよ⁉︎見物でもするつもり⁉︎」


「あ〜…違いますよ…!

アイツの処理を任されているんです

早く済ませないと表沙汰に…‼︎」



私が腕を掴んで妨害すると足踏みする少年。

会って初めて動揺の色が顔に出ている。


「こういう時は大人に任せて…!

応援隊を要請するわ、怪物が相手でも

一匹なら対処できるハズよ…‼︎」


先程、押し途中だった番号に0を追加し

警察に通報。早く出て…‼︎



「人間じゃ…無理ですよ…!!」



携帯電話に注意が逸れた隙を突いて

少年は掴んだ私の手を振り解いた…‼︎


「あっ‼︎」


バランスが崩れ倒れかけると

一瞬、確かに少年の左手の甲に何か

描かれたモノを目にした…。



(3500…?あの子、手の甲に刺青が…)


なぜか、一目見ただけの数字が

頭から離れない。あれは………一体。



-警察署-


「あの〜?もしもし?

…全く、なんなんだ…」


電話に出た職員は

通報されたが相手の声が聞こえず

イタズラ電話かと受話器を置こうとする…が。


「ちょっと待って、その電話

どこから来たかわかる?」


直前に口を出し制止させる課長。

手には電子タブレットを持ち

何やら、溜息をついている。


「はい、逆探知しますと…

地図で言うと、近くですね。

どうかしましたか?」


「…別に気にしなくていいわ、ありがとう。

ちょっと用事ができただけ」


自分が持つ電子タブレットの地図と

照らし合わせ、その場所に向かい歩き出す。

その目は、面倒と焦燥と、戦意が見えた。




-狼男のいるビル 階段-


少年の後を追い、単身ビルの階段を登る…。

状況はまだ少し飲み込めていないけど

一般人を巻き込む事はやはりできない…‼︎

それにしても、あの少年は何…?

このビルは今、上っている階段と

エレベーターしか無いハズ。しかも

エレベーターは故障中で使えない。

なのに、一向に少年の背中も見えない。

そんな速さ…オリンピック選手⁉︎そんなわけ無いか。

あの子が何者なのか、今は狼男の恐怖より

少年への興味が体を動かしている気がする。



-屋上-


「はぁ…はぁ…」


屋上まで上りきり、鉄製の扉を開ける。

静かに辺りを見回すと影は2つ。

狼男と少年のものだ。本当に相対している。

狼男は近くで見ると少し小柄に見える。

少年と同じ程度………ちょっと可愛い。

と、少し思ったところで押しとどまる。

今からあの怪物と生き死にを争うのかも

しれないのだ。油断大敵。

まずは、扉に隠れて様子を…。



「はぁっ‼︎」


いきなり勇ましい少年の声。果敢にも正体不明の

怪物と戦っている。だが、数分前に

乗用車と衝突した身体で戦えるの…?

顔色は平静を繕ってはいるけど、それで

身体を伝う血が戻るわけ無い。あんなになったら

普通、意識が朦朧とする量だ。常人なら…。


「あ…っ」


不意に先程の少年の声が蘇る。



『人間じゃあ…無理ですよ…!!』



(なら、彼は一体何者なの…?

まさか、あの怪物と同じ…)



「ガロオオッ‼︎」


「ぐあぁッ‼︎」


「‼︎」



鋭い悲鳴が私の意識を戻した。

少年の身体が鉤爪で斬り裂かれた…‼︎

堪え切れず悲鳴を上げている…。

車に跳ねられても笑顔だった少年からは

想像出来ない表情…やっぱり危険だ‼︎



「これ以上は、危ない…‼︎」


懐から遂に拳銃を抜く。この感覚、

非日常の真似事である訓練とは比較にならない。

掌の汗は緊張感と恐怖が具現化したようだ…。


(銃が…重い…)


重く冷たい鉄の塊、いつもは軽く感じていた物が

今は体を震わすほど、重い…。



「ガルルォッ‼︎」


数m先では今尚、獣の追撃が続いている。

気のせいか、それの速度と力は徐々に増している。

少年は必死に避けているが、数発は

肌を掠り、傷が蓄積している。



「ヴオォッ‼︎」


鋭い爪をギラつかせて、狙いを絞った。

そして、胴を狙う怪物…‼︎

少年の回避は、その攻撃に遅れてる…。



「危ないッ!!」




「キャイィッ‼︎」



私の放った弾丸は狼男の左脚を掠った。

虚を突かれた痛みに狼男は身を引いた…‼︎



「当たった………効いてる…⁉︎」




「刑事さん…そこで

大人しくしてくれれば良いのに…」


困ったように手を額に当てる少年。

子供が親戚にちょっかいを出した時の

親のような表情に似てる。…もしかして、私…。



「グルルルッ...‼︎」


突然の横槍に怒りを露わにし私の方を向く狼男…。

言いたい事はわかる。そう、ターゲットを私に

変えたようだ、うん…。ああああ……!!



「あぁっ、ごめんなさいッ‼︎

でも、当てるつもりは、全然無かったの‼︎

あなたが…急に飛び出すから…‼︎」


…完全に腰が抜けてしまった。必死に

後ろへ虫のように手足を使い退がる。

この台詞と動作、どっかで聞いたような…。



「刑事さん、その言い訳

聞いたことありますよね?」


先程の事故現場と被り、苦笑する少年。

しょうがないな、と言いたげに左腕を肩から回した。

そして…狼男にゆっくり近寄る。



「ガウッ⁉︎」


流石に気配で察知し向き直る狼男…。

近付いたらマズイよ…‼︎でも、声も出ないし、

また弾を撃つなんて…とても…。



「本当は、意識のあるまま

連れて帰りたかったんだけど…

まぁ…少し眠ってもらうぞ」


なんだか…雰囲気変わった!?

近付きながら、左手を握り締めている。

声色が低くなり見るからに本気の表情だ…。

…それに。



「手の甲の刺青が…」


握り締めた左手、数字の刺青が徐々に

数値を下げ、その分、電気がほとばしるように

周囲の空気が…痺れてる。



「今日は跳ねられたりビンタされたり

おまけが多かったからな…1500くらいは

使っても大丈夫か…」



手の甲の数字、ビルを上がる前に見た

3500の数値は現在5000、それから再び

3500まで…減った⁉︎



「グッ…グオオオオオッ‼︎」


本能的に危険を察知し、狼男は少年が何かする前に

爪を立てて襲い掛かる!




「悪いが、これ以上は受けないつもりだ。

これでも体は大切だから、なッ‼︎」


狼男の爪が当たる瞬間に放たれた拳は、

身体の真ん中を的中。更に有り余った

衝撃は暴風を辺りに広げた…‼︎



「キミは…一体、何者…なの…?」



恐怖でおののいた体にはこの衝撃は十分…過ぎ……。

意識が飛ぶ瞬間。

今日何回目かの質問が口から漏れた…。

結局、名前の……質問だけ…ど。







「はっ…!!」


気が付くと病院で寝ていた!

昼間の事は何だったのか?

夢か現か判断し難い事と寝起きで頭が痛い。


「おはよう、乃華巡査部長。

調子はどうかしら?」


「課長…‼︎」


狙いすましたかのように、課長がカーテンを

全開に開けた、なんて面倒な人だ。しかも、なんか

二階級特進で呼ばれたんだけど……もしかして

殉職したシチュエーションでしょうか?



「エキサイトしたみたいね?

許可無しで拳銃ぶっ放して

楽しかったかしら?」


会話開始早々、毒舌全開。

そして、何やら書類を作成している。

私が書かされる反省文だろうか。



「う…すみません、軽率でした

あれ、って事は…夢じゃ無いってこと⁉︎」


「そうよ、残念ながら現実。

最悪よ、アンタみたいな、出しゃばり女に

一部始終見られるなんてね」


「え…それって、どういう…?」


課長には珍しく弱い所を突かれたような顔。

思わず探りたくなるが…。

あ、いや、やめておこう。どんどん

般若はんにゃみたいな顔になってる。



「いいわ、気にしなくて。

それよりもあの………ゼマに、後で礼を

言っておきなさい。情けなく気絶した

アンタを病院まで運んでくれたんだから」


「ゼマ…君?」


「車に跳ねられ小僧よ」


血だらけの笑顔が蘇る。

普通じゃ無いとは予想していたけど

名前まで普通じゃ無いとは…。



「じゃ、これサインしときなさい。

アンタの左遷先よ」


制作が完成した用紙を差し出される。

爆弾発言と共に。



「左遷ッ⁉︎ちょっ、ちょっと‼︎

いくらなんでも、それはヒドいですよ‼︎」


「いいからサインして寝ろ‼︎」




紙を顔に叩きつけて行ってしまった課長。

恐らくもう会うことは無いんだろうなぁ。


「私はどこへ行くんだろ」



悲壮感一杯の心境で用紙を見る。


【特警課】



そう、今にしてみれば、ここが入口だった。

見慣れない部署、知られない場所。

普通では無い、普通ではいられない所。

そして、今より行く所。

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