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Rank.D   作者: 煉獄
17/20

凛音vs結

「気を取り直して、次は皆さんお待ちかねの中堅戦、(つづり) 凛音(りんね)選手 対 粉民(こたみ) (むすび)選手!」


響が静まり返った場を盛り上げようと叫ぶようにアナウンスするとそんな心配は無用だったかのように再び大歓声が巻き起こる。


「うっせぇなぁ…ゆっくり眠れやしねぇ」


声援が鬱陶しいのかベンチに横たわっていた状態から上半身だけ起こした暁月(あかつき)が霧夜に向かって手を差し出す。

何の事か既に察していたかのように自身の首に掛けていたヘッドホンを手渡した。


「あぁそうだ…あきら、その目に焼き付けておけよ。いずれお前が相手にすんのはアタシたちなんだ。退屈させないように見てろ勉強しとけ」


「だってよテル、暁月さんの言う通りだな…今んとこ誰が相手でも勝算の1つも見当たらないけどな」


「分かってる、舞琴、お前は特にこの試合は見ておいたほうがいいと思う。多分、凛音姉さんの本気が見られるぞ」


舞琴と輝が会話を交わしていると、試合が始まったのかゴングが鳴り響く。


「はぁーん…憧れの凛音先輩がアタイの対戦相手だなんて…ちょー感激!」


「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。それじゃ、楽しみましょうか」


キャーッと黄色い声を上げる結に対して凛音は妖艶な笑みを浮かべると手を招く。

憧れの相手の誘いに自制の効かなくなった結が両手を広げた。


「もー我慢出来ない!ストライクチャージ!」


結が一直線に凛音へ向かって走り出すと最初は拍子抜けしたような顔をしていた凛音は再び笑みを見せる。


「あら、猪突猛進?嫌いじゃないわ、そういうの」


結の突進を凛音は軽々と避けた。

それでも結は止まる事なくステージをぐるりと一周して、再び凛音に突撃する。


「凛音せんぱーい‼︎」


「何度来ても同じ…ッ!?」


凛音は先程同様に結の頭上に飛んで避けるが、結の身体が爪先に掠った瞬間にその表情を一変させ強張る。


「まだ来る…」


「ばーか、相手を甘く見て油断するからだ。相当なダメージは覚悟しとけよ、りんね」


後ろから寝ていたはずの暁月の笑い声が聞こえる。

チラリとそちらを見ると上半身を起こしアイマスクを額に上げた暁月が慢心していた妹の醜態を嗤っていた。

そして予想通り、三度、結は真っ直ぐ凛音に向かって突進して来る。


「ハッ!」


試しに結に向かって無詠唱で形成した火炎弾をぶつけてみるが、爆煙の中から飛び出してきた彼女の勢いは全く衰えてはいなかった。


「先輩、無駄ですよ♪アタイのストライクチャージはサードチャージまで行ったら…」


「ガッ⁉︎」


突進の勢いをそのまま蹴脚力に変換した結の強烈な蹴りを受け、易々と空中へ打ち上げられる凛音。


「下級魔法程度じゃ止められませんから」


そう言って更に地上をグルグルと回りその度に加速していく結。


「まったく、それでもアタシの双子の妹かっての。りんね、万が一でも負けたら殺すかんなー」


妹の醜態が余程面白いのか暁月は笑いながら言っていたが、目の奥は笑っておらず凛音の背中に冷たいものが這う。


「そんなの百も承知ですわ、姉様(あねさま)…とはいえ下のアレは鬱陶しい…」


結に空中に打ち上げられ、落下してはまた彼女に跳ね飛ばされるというループに捕らわれて先程からすっかり防戦一方の凛音が苦々しげに言う。


「その状態からどうするって言うんですか先輩?」


既にフロアを二桁以上の数を走り回っている結は、常人の目には捉えられない程のスピードになって、辛うじて映るのは彼女の束ねた赤い髪が靡いて、真紅の輪を形作っているところだけだった。


「ここからどうやって逆転するつもりだ、お前の姉貴は」


「どう見たって劣勢よね?」


「アレを脱出できる秘策があるとは思え無いです~」


「初見で無知な素人共は大人しく黙って見てな」


学園トップクラスの集団のNo.2と呼ばれる凛音の戦いを初めて見る桔梗、彩葉、姫華の言葉を聞いた暁月は笑いながら言葉を続ける。


「見てな、あきら。ここからがお前の姉貴であり…アタシの半身である「りんね」、その本当の戦い方だ」


「これで、終わりです!ストライクチャージ、ハンドレッドチャージ!」


暁月が凛音の勝利宣言にも等しい言葉を言い放った直後、結は叫び、空中でゆっくりと落下し始める凛音の元へと飛び上がった彼女の身体は熱せられた金属のように煌々と輝いている。


「紅蓮刺脚!」


触れただけで灰になりそうな程の熱を持った脚から放たれる飛び蹴りで凛音に迫る結。

しかし、凛音は懐から伸縮型の錫杖を取り出すと静かに詠い始める。


「契約者、綴 凛音の名に於いて汝に命ず。(ひとや)の獣、(あま)の獣、絶対不変の力を()って眼前の敵を討たせ(たま)へ…我が力を糧とし此の召喚に応えよ!」


「トドメです!」


召喚(サモン) エリギストール!」


凛音が錫杖を媒介にして創った召喚陣、そこから現れたのは5m以上はあるかという体躯の鋼鉄の巨人だった。


「召喚術!?いくら来星のトップクラスの実力とはいえ、高位魔術師でも習得の難しい召喚術までマスターしているなんて!」


舞琴が驚愕の声を上げる。

その言葉にカカッと笑う暁月。


「戦闘技術はアタシと比べて少し劣ってるが、魔術師としての実力ならアタシを超えるどころか世界屈指だぜ」


「無駄です!アタイの紅蓮刺脚は金属をも溶かす!」


鋼鉄の巨人は凛音を攻撃から庇うように結に覆い被さるが彼女の言葉通り、彼女の脚は鋼鉄の巨人の腹部へと、いとも簡単に突き刺さる。


「掛かった…二重召喚(ダブル・サモン) ガノギヌウス。」


そのタイミングを待っていたかのように、続けざまに翡翠色の鱗を持つ巨大鮫を召喚した。

翡翠の鮫は空中を泳ぐように飛び結と鋼鉄の巨人のいる方へ顎門を開き、出現した魔法陣から大量の水が吐き出されて結を巨人諸共呑み込む。


「二重召喚!?そんなの、見た事も聞いた事も…。」


「当たり前だ、あの技ははりんねだけしか出来ないオリジナル、世界中を探しても見つからねーだろうよ。」


舞琴の驚嘆の声に、何でもない事のように答える暁月。

そんな中、結に変化が起こる。


「しまっ…アァァァァッ!」


赤く熱した金属に冷水をかけるとそうなるように、結の身体は急な冷却によってビキビキと悲鳴を上げる。

そして、二体の召喚を解くと落下していく結を見下ろしながら、凛音は再び魔法陣を空中に描く。


「究極召喚 アルヴェロザイン」


すると、体育館の屋根に黒雲が立ち込め、その中から巨大な龍が顔を見せる。

その圧倒的な存在感にその場にいる全員が凍り付いてしまう。


「私の勝ち、天咆(アーク・ロア)


凛音が手を天に掲げると、龍の口に集約された巨大なレーザーが地上に落下する結に向かって放たれようとする。


「イヤァァァッ!」


今にも自分を消し飛ばしそうなレーザーと、自分の置かれた絶望的な状況から死を覚悟した結が耐えきれず失神すると同時に、凛音が召喚を解く。

すると、巨龍は消え体育館の屋根に立ち込めていた黒雲も跡形もなく消え去った。


「今の何だったんだ…?」


「凄い…」


「さーて、やっとこアタシの番か。よくやった。りんね、あとはアタシのモノだ」


「姉様、アイツ何かと情報がなさ過ぎます。気を付けて」


「誰に言ってんだよ。アタシは年柄年中、警戒しっぱなしだっての」


暁月は凛音の肩を叩くとニカっと笑った。

ようやく書きたいところまで残りあと少しになりました。

暁月戦まで書いたらまた他の作品に手をつけます

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