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思い出の味  作者: Castiel
2/2

優しいレシピ

よしと小さく言い、混ぜ合わせた酢飯を一口摘む。

こんなもんかな。

時刻は19時、大柴を会食へ送りだし、自分は退勤させてもらい帰路に着いた。

きっと、帰ってきたら軽くお茶漬けでも食べるであろう大柴から、いつ連絡が来ても良いように、電話はキッチンとダイニングの隔たりに置いておく。

「えっとー、多分揚げの味付けが重要なんだよな。」

菜箸を揚げの上でコロコロしながら考える。

少し祖母のいなり寿司は甘めだった。

鍋にお湯を沸かし、揚げを油抜きして半分に切り出汁の味付けにかかる。

「重要なのは砂糖の量か…。」

少し考えて出汁に砂糖を醤油と味醂より少し多めに入れ、温める。

ちょっと甘過ぎかなと、迷いながら、揚げを沈めて弱めの中火で煮汁が無くなるまで煮詰め、あら熱が取れるまで置いておく。

ザルにあけて汁気を切り、俵型に握った酢飯を破けないように優しく詰めれば完成だ。

しばらく置いてなれさせてからダイニングに運ぶ。

「何か、緊張する…。」

祖母の味に近づいただろうか。

恐る恐る一つ掴み口に運んだ。

「ん!」

瞬間じゅわっと甘めの煮汁が口の中に広がり、ほろほろとほどける酢飯に絶妙に絡む。

甘過ぎかと心配していた煮汁も、お酢がキュッと締めてくどさを感じる事も無い。

「うん、美味しい!

けど…。」

何か違う…。

味は限りなく近い、けれどどこか違和感を感じる。

何かが足りない?ブーブー

携帯電話が鳴り、ディスプレイを見る。

「あっ社長…、もしもし、お疲れ様です。」

『お疲れ!もうすぐ家だから、軽く何か作っておいて。』

「いなり寿司ありますけど、お茶漬けにしますか?」

『あー朝のか、久しぶりにいなり寿司食べたいな。』

「了解致しました。

お待ちしてます。」

ピンポーン

『着いた』

「早っ!?」


「おー、これが例のいなり寿司かー。」

大柴は脱いだ背広を真冬に渡し、椅子に座りいなり寿司を摘む。

「それが、どうも祖母の物とは違うんです。」

大柴の背広をコートハンガーに掛け、お茶を入れにキッチンに向かう。

「美味いじゃないか、思い出の味はその思い出も込みの味だから、完璧な再現は難しいだろ~」

「そうなんですけど~、そういうのではなく、根本的な味が違う気がするんです…。」

お茶を出して、大柴の向かいに座りため息を吐き皿を見る。

「って、全部食べたんですか?

食べ過ぎですよー。」

「腹減ってたんだよ、この甘めな味付け俺好みだし。

もう無いの?」

「ありません、食べ過ぎです!」


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