25番 小倉 知美(1)
冬休みも終わって気だるげな空気が教室を満たすころ、僕のクラスでは席替えが行われた。今回はお見合法だった。
一番初めに女子が席を決めるのだが、二十分近くも僕ら男子は廊下に出されている。頭に来たのか、男子学級委員の金森が扉をたたく。教室からは女子特有の高い声でまだ待ってという声が聞こえてくる。
ふと壁伝いに声が聞こえた。なんだって? だから女子は嫌いなんだよ? おいおい、腹立たしい気持ちは分からなくはないが、それを今言っちゃいかんだろ。僕は急いで周りを見渡したが、周りの友人たちはそれぞれの話に夢中なようだ。誰が言ったんだ? そんな疑問がわき出てきたころ、教室の扉があいた。
小倉に続いて、ほかのクラスの女子たちが教室から出てきた。やっと決まったのかよ。と、いうような表情で僕ら男子は教室内へと入って行った。
僕らのクラスには四天王と呼ばれる席がある。一番後ろだけ四席飛び出ているのだ。男二人に女二人の四天王。前に誰が座るかによって少し変わってくるが、教室の中で一番黒板が見やすく授業に集中しやすい。四天王の窓にいちばん近い席にしようと僕は思った。
陣取ったように机に腰かけると靖和橋が突然僕に声をかけてきた。
「泉! 俺もそこがいい」
教室中の男子の目が僕と靖和橋に降り注ぐ。僕としてはどうでもよかったから、素直に靖和橋に譲った。靖和橋はどこか安堵した表情でその席に腰を下ろした。
「女子、入ってきていいぞ」
金森が教室に向かって叫ぶ。ぞろぞろと女子が教室に入ってきて、それぞれ隣の人の文句やらなんやらをわめいている。
「あーれま。あたしの班のペアの人、不登校ちゃんだけど、男子も一緒?」
クラス全体を見回していたら、上から声をかけられた。見上げてみると小倉がいた。
「ああ、まあな」
「なーんだ。じゃあ、二人だけだね」
どうやら僕らの班は二人っきりの班になってしまったらしい。