青い男
青い男が歩いてる。
豊かな土地を、潤った土地を。
青い男が歌っている。
どこかの歌を、何かの歌を。
男の顔は明るくて、まだ見ぬ未来に希望を持って、少し上を向いて歩いてる。
やがて男は扉を見つけた。
赤い扉は儚げで、だけどしっかり建っていた。
青い男は赤い扉の前に来て、開くかどうか考える。
突然赤い扉が開き、赤い男が駆けてきた。
青い男は驚いた。だけど扉が気になった。
扉の中には何がある?
青い男は訊いてみた。
お前の知らぬ人生がある。
赤い男は静かに答えた。
人生とは何なのだ?
青い男は再び尋ねた。
赤い男は答えずに、悲しそうに去っていった。
青い男はそれを見送り、赤い扉に手をかけた。
青い男が歩きだす。
枯れ木の土地を、乾いた土地を。
青い男が歌いだす。
不思議な歌を、疑問の歌を。
男の顔は明るいが、何かに疑問を持ってる顔で、前を向いて歩いてる。
やがて男は扉を見つけた。
黄色い扉は揺れていて、不安定に建っていた。
青い男は黄色い扉の前に来て、開くかどうか考える。
突然黄色い扉が開き、黄色い男が駆けてきた。
青い男は驚いた。だけど扉が気になった。
扉の中には何がある?
青い男は訊いてみた。
お前の知らぬ運命がある。
黄色い男は静かに答えた。
運命とは何なのだ?
青い男は再び尋ねた。
黄色い男は答えずに、虚しそうに去っていった。
青い男はそれを見送り、黄色い扉に手をかけた。
青い男が歩きだす。
砂漠の土地を、極乾の土地を。
青い男が歌いだす。
恐れの歌を、不安の歌を。
男の顔は暗くなり、希望はまったく無くなって、少し下を向いて歩いてる。
やがて男は扉を見つけた。
黒い扉は拒絶する、男が来るのを拒んでる。
青い男は黒い扉の前に来て、開くかどうか考える。
突然黒い扉が開き、黒い男が駆けてきた。
青い男は驚いた。だけど扉が気になった。
扉の中には何がある?
青い男は訊いてみた。
まだ見ぬ未来と過去がある。
黒い男は静かに答えた。
過去と未来とは何なのだ?
青い男は再び尋ねた。
黒い男は答えずに、恐ろしそうに去っていった。
青い男はそれを見送り、黒い扉に手をかけた。
青い男が歩きだす。
暗い土地を、険しい土地を。
青い男が歌いだす。
後悔の歌を、悲しみの歌を。
男の顔は闇に覆われ、どんな顔かはわからぬが、俯きながら歩いてる。
やがて男は歩みを止めた。
自分はどこに向かってる?
やがて男は歌を止めた。
自分はどこから来たのだろう?
青い男は気がついた。他の男が駆けてた訳に。
他の男は逃げていたのだ。
何から? 何処から? 何のために?
青い男は考えて、それから再び歩きだす。
青い男が歩いてる。
儚い土地を、幻の土地を。
青い男は黙ってる。
考えるために、悩むために。
男の顔は寂しげで、何をすべきかわからずに、躓きながら歩いてる。
やがて男は扉を見つけた。
青い扉は苦しげで、前に誰かが立っていた。
青い男は驚いた。そこに居たのは青い男。
自分と全く同じ男。
お前は誰だ?
青い男は訊いてみた。
私はお前だ。
青い男はしっかり答えた。
私とは何なのだ?
青い男は再び尋ねた。
それは誰にもわからない。
青い男は虚しく答えた。
扉の中には何がある?
青い男は小さく尋ねた。
苦しく悲しい現実がある。
青い男は大きく答えた。
青い男は気がついた。
他の男が逃げてた物に。
皆現実から逃げていたのだ。
そして同時に気がついた。
現実からは逃げれぬことに。
現実とは何なのだ?
青い男は訊いてみた。
それをこれから探しに行くのだ。
青い男はそう答え、夢のように消えてった。
青い男は顔を上げ、力強く前を見て、青い扉に手をかけた。