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鳳雷石の煌めき短編集

断罪・追放されたのでチート級執事と森の奥に引っ込みます!残された主人公達は勝手にざまあされてるみたいですね。

掲載日:2026/05/22



私は、おしゃれなティーカップに入った温かな抹茶ラテを、フーフーフーと冷まし一口飲んだ。


他の人間が足を踏み入れないような森の奥の奥の小さな家に、昨日から私と執事カズマとで住む事になったのである。


フーフーフーとやり過ぎな位、充分に冷ましてから抹茶ラテをまた一口飲んだ。


(落ち着く…。転生してから1年間何度助けられただろう。)


ピシッとセットした黒髪に、フレームの細い眼鏡をかけたスラッとした格好の良い執事カズマを、チラリと横目で見た。


そして、自分の鎖骨中央下の制約印を人差し指で軽くなぞった。



私は元々は、日本に住んでいた、ごく普通の女子高校生。

名前は、中条 美百合。


それが、ある日歩道に突っ込んできたトラックに轢かれたのであった。


そして…気がついたら、乙女ゲームの悪役令嬢 アイシャに転生していた。


アイシャは、馬車に轢かれそうになっていた。

そこに私の魂が転移したようだった。


なんとか助かり、街中をぼんやり歩いていたところ、生徒会長でクラスメートの和真君に、偶然再開した。

その後、和真君は何故か、そのままアイシャについてきてアイシャの執事に違和感なくなっていたので、共に過ごす事になった。


何故か和真君だけ、もといた世界のままの格好をしてたのだけれど!


因みに、和真君には私がクラスメートだった中条 美百合という事は、伝えるきっかけがなかった為、なんとなく言わないままになっている。


昨日、学園主催のダンスパーティーで、婚約破棄、追放の断罪イベントが行われ、私はこの森の奥に追放されたというわけ。


私は、また一口抹茶ラテを飲み、ギュッと目を閉じた。


本当ーに、大変だった……。


この1年間の様々な出来事が頭に次々と浮かんできた。


突然、乙女ゲームの悪役令嬢アイシャに転移。


女主人公─聖女の態度と、男主人公─王国の第一王子で婚約者のアイシャ対する態度が余りにも酷すぎて最初は困惑したものであった。


普通に歩いていると、態度が大きいと言われ、チラリと見れば睨んだと騒がれる。


本当に和真君がいなかったら、乗り越えられなかったよ…。


それにしても、昨日のダンスパーティーでの断罪・追放イベントは、凄まじかったな…。


昨日は国王主催の舞踏会が開催された。

パーティーの時は、勿論いつものように、馬車から降りても私には婚約者のエスコートはない。

その為、エスコートなく会場に入っていく。


だけどね…一歩後ろにはスマートな立ち居振舞いの執事カズマがいてくれた。だから、私の心は落ち着いていた。


婚約者の王子は当然のように聖女をエスコートし、王子と聖女のダンスを何曲かこれ見よがしに見せつけられる。

婚約者の私をそっちのけで婚約者以外の女性と何曲もダンスを踊る。

これってルール違反だよね?あまりにも非常識な2人の態度にげんなりしながらも、ぼんやりと2人のダンスを見ていた。


そして会場が静まり返ったな?と思ったら…。

私への断罪・追放イベントが始まったのだった。


王子には大きな声で怒鳴られ私がした悪事を言っていたけども……。


まぁー。全部冤罪ですね!


えっとー。なんだったっけ??


私が、聖女を湖に落とそうとしただとか、→聖女が1人で湖に落ちた事があったような。


聖女の持ち物を隠しただとか、→聖女の鞄から出てこなかったっけ。


お茶会で毒を盛ろうとした……とか!?→そんな事ありましたっけ。


身に覚えのない事を次々と言われるが、こちらがどれだけ正論で言い返そうとしても、乙女ゲームの補正というものであろうか?


何も言い返すことは出来なかった。


悪役令嬢は、主人公達にただひたすらに辱められ罵倒され、ありもしない罪をきせられ罰せられられたのであった。


しかし……。

一方的に私に怒鳴っていたあの時の王子の顔っっ!!


何故か笑える位に真っ赤に腫れ上がっていたのだ。


ダンスの時は、普段通りだったと思う。

金髪に青い目の男主人公らしい格好良い見た目だったと思うのだけれど、いつの間にか頬がバーンと腫れ上がり目からは、少しばかり涙が出ていた。


ぷっ

あの時の王子を思い出すと笑えてくるのだ。

なんだか、誰かに頬を叩かれたような腫れ方だったような。美形が台無しだね。


胸がすくのを感じた。


だって、いくら乙女ゲームの補正だとしても余りにも酷い仕打ち。


何もしてないのに罰せられ、婚約破棄をされて森の奥に追放。

ご丁寧なことに、この家から半径5メートル出る事が出来ない制約印まで施してきたのだ。


婚約者と聖女の余りにも自己中心的な態度に仕方ないとは思いつつも、心の奥底では怒ってたよね。


しかし、ゲームの重要キャラの主人公達や、ゲームの大きな流れに関わる事は、何をしても抗えないのだ。


そのかわり、それ以外であれば比較的自由に行動や発言が出来た。


ゲームの流れに関係ないモブ達や和真君と関わる時は、素の自分でいられたし、相手のモブ達も常識的でまともな会話をしてくれたのだ。


ゲームと関わりのない人々は、婚約者と聖女に対して皆良く思ってなかったみたい。


婚約者は勉強嫌いで、皇太子としての役割を果たさず遊び呆けて婚約者がいるにも関わらず聖女とイチャイチャするという非常識な行動をする。


聖女も他の人の婚約者と重々承知の上で王子とイチャイチャする。聖女の役割もきちんと果たせれていたのかもわからない位、ずっとイチャイチャしてたような。


そんなのっておかしくない?

悪いのって婚約者と聖女だよね。婚約者がいるのに聖女とイチャイチャするなんて普通怒ってもいい案件だよね?

貞操観念ずれてないかなっ?て思うの。


後、聖女ってさっ。清らかな心を持つ人じゃないの?

私には、邪な欲だらけの人にしか見えなかった。


主人公達の行いが悪いのに、悪役令嬢役のアイシャが一方的に責められて何に対しても、悪者扱いされ否定される。


さすがに、心が沈むことも多かった。



心が折れずゲームのエンディングを終えることが出来たのは、ゲームの流れと関係の少ない名もなきモブの友達と、いつも側にいてくれた和真君のお陰だ。

とても感謝している。


特に、和真君こと執事カズマは、いつしか私にとってなくてはならないかけがえのない存在となっていた。



私は、また抹茶ラテを1口飲み、目の端で和真君の存在を確かめた。


♢♢♢


     【ここからは和真Sideです。】


♢♢♢


俺は、中黒 和真。


1年前にお嬢様こと中条さんとこの世界に転移した。


俺と中条さんは同じクラスで、中条さんは俺の前の席に座っていた、ただそれだけの関係だった。


クラスでの中条さんは、よく笑う誰にでも優しい子だった。

猫舌でいつも好きな抹茶ラテを何度もフーフーと冷ましながら飲んでいたのが印象的だった。


中条さんを例えるなら陽だまりのような存在で、いつも周りには人が集まっていた。


俺はというと自分で言うのもなんだが、非常に優秀な生徒だった。

成績も良く生徒会長もしていた為、先生方からの信頼も厚かった。


が、しかしそれらは、必死になってひたすら努力した賜物だった。


必死になりすぎて周りが見えてなかった。

ただ、やらなければならない事を、努力に努力を重ねてやっていただけだった。


前の世界の俺は、本当に余裕がなかった。


身の丈以上の事をやろうと、必死にもがき、苦しみながらもしがみついていたのだ。


今、振り返ると心がすり減っていて限界がきていたのだろうな。乾いた学校生活の、ただ一つの救いはは中条さんの屈託のない笑顔だけだったかもしれない。


俺は、何度も抹茶ラテをフーフーと冷ます愛おしいお嬢様を見つめた。



そんな限界ギリギリの毎日を過ごしていたある日の事。


俺と中条さんの運命を大きく変えてしまったあの日。


いや、俺のせいで中条さんを殺してしまったあの日の事。


あの日は、定期テストの最終日だった。

俺は連日、ほぼ徹夜でテスト勉強をしていた。


朝食を取らなかったのも悪かったのだろう。

通学途中で、フラフラとふらつき頭がぼーっとしていた。


その時、たまたま後ろを歩いていた中条さんが、ふらついている俺に気がつき声をかけてくれ肩を貸してくれた。


──その時だった。


大型トラックが、物凄いスピードで歩道にいた俺達に突っ込んで来た。


身体にとてつもない衝撃と痛みが走り、意識が遠退いていった……。

このまま死ぬのだろうと死を感じたのだが……。


目が覚め気が付いたら乙女ゲームの世界に転移していたのだった。


見たこともない建物や、少し変わった格好の人々。

酷く混乱したが、その瞬間目の前にゲームでよく見るようなスクリーンが出現した。


そこには、この世界の情報や俺のステータスも

表示された。


中条さんもこの世界に悪役令嬢アイシャとして、転移した事もわかった。

そして、中条さんがこの状況に戸惑い不安でいっぱいになっていることも……。


転移したすぐ後だった為、自分の能力が、使いこなせれてなかった俺は、ただひたすらに必死になって中条さんを探した。


俺に構わなければ助かっていただろう。

俺のせいで死なせてしまった中条さんを、必死に探しまわった。


スクリーンから、馬車に轢かれそうになっていたという情報も流れていた。


俺は焦った。なんとしてでも中条さんを探し出さなければならない。


やがて人混みの中、呆然と歩いている中条さんこと悪役令嬢アイシャを見つけることが出来た。


ホッとした……嬉しかった。


思わず駆け寄り抱きつきそうになるのを、堪えた。


良かった…。無事で…。


中条さんのような子を死なせてはいけない。


絶対に俺が守り抜くんだ。


俺は心の中で誓った。


転移して得たチート級の能力を使い、悪役令嬢アイシャの執事として紛れ込み、ずっとお嬢様の側にいた。

側にいれない時は前世でいう盗聴?GPS?等のような物を駆使してお嬢様の動向を見守り、何かあればすぐに転移魔法で駆けつけたのであった。


チャランポラン王子と、性根が腐っているヤバい聖女から、お嬢様を守る為だ。


ある時は、クソ聖女がお嬢様を湖に落とそうとしやがった。

俺は、時間停止能力を使い、時間を停止して聖女が自ら湖に落ちるように仕向けた。


またある時は、聖女が自分の持ち物をお嬢様の鞄に入れてきたこともあった。

聖女がお嬢様を犯人として吊るしあげようとした時に時間停止して、聖女の持ち物を、聖女の鞄に入れてやった。


お茶会で聖女が自分で用意した毒を自分で飲み、お嬢様を犯人に仕立てあげようとしてきた事もあった。


さすがに、それは間に合わなくて時間を巻き戻して毒を無効化にしておいた。


だから、何も起こらかったかのようになった。



俺はこの世界ではバグな存在なのだろうな。前の世界のままの格好で来て、チート級の能力を得ている規格外な存在のようだ。


主人公達であろうが、ゲームに影響しようが、ある程度は干渉出来たのだった。


だが、ゲームの終わりの断罪・追放イベントは無理矢理執り行われてしまったのだった。


昨日の断罪・追放イベントの時は、あんまりにも王子に腹が立ったので、つい時間停止をしてバチーンバチーンと派手に往復ビンタを食らわしてやったのだ。


王子の頬は赤く腫れ上がってたね。

涙も出てたかもしれない。聖女も少しひいてた位だ。


そのお陰か?あんなに酷い言われようをしていたのに、お嬢様の口の端は緩んでいた。



……。

ともあれ、昨日で乙女ゲームは終わったのだ。


長かった。


今日からは何にも縛られず、2人きりで過ごす事が出来るのだ。


あっ……。縛ると言えばお嬢様こと中条さんはこの家に縛られる制約印を施されていたな。


勿論、そんな物など俺の手に掛かれば造作もなく解除出来るのだけどね……。


暫くは、頼りになるのは世界で、唯1人俺だけという環境に酔いしれたいと思う。


愛しい人が、よそ見をせず俺だけにすがるのを、この目で確認したいのだ……。


悪趣味だね。早く解除してあげれば良いとは思うけど。


俺は、少しうつむいた後、お嬢様を見た。

お嬢様は今まで見たことがない柔らかな表情だった。


「和真君!これからもよろしくね。」


花が満開に咲いたような笑顔に、心が浮き立つのを感じた。……この笑顔に惹かれ俺の心は救われたのだ。


中条さんに近寄りぎゅっと抱き締めていた。

あっ……。

愛しき人の声が僅かに漏れた。そして、俺の腰にも細い腕がまわされ、ぎゅっと抱き締め返されたのであった。


お嬢様の青い瞳と、中条さんの黒い瞳が重なって見えた。


俺はそのまま額にキスをした。



俺にとってはどうでもいい話なんだけど、乙女ゲームが終了した後のポンコツ王子と腹黒聖女なのだが……。


ゲームの補正がなくなった2人の末路は、なかなかに酷いものだったようだ。



王子の方は…第一王子だったのだけれど、あまりにも不勉強でチャランポラン。

他国の王族に対してとんでもない大失態をしてしまい、国際問題に発展しそうになる。


──他国の王族を迎賓として招いた。


この国は、ある国と戦争していた。

王子は、あろうことか迎賓で招いた国の敵国の特産物のワインをべた褒めし、その国のシルクを身に纏っていた。

極めつけは招いた王族に「この国は豊かで素晴らしい技術を持った国です!!」とね、、。


この件がきっかけで、今までの行いもあり廃嫡され幽閉された。


聖女はというと…邪な心から聖女の力は徐々になくなっていってたようだった。


そりゃそうだ。もうゲームの補正もないのに、人を蹴落とす行いを平気でするし、男好きなのか気に入った男には手当たり次第色目を使う。


聖女の力があった時は、魅了の力も強くて、そこらの男は言いなりになってたな。


そういや俺も何度か迫られた事があったが、俺にそんな下等な力など通用しなかった。


聖女の色狂いは国内に留まらず、他国の王族に及んだ。他国の婚約者のいる王族にも手を出そうとしたのだ。

聖女の力も、魅了の力も弱まっている者を他国の王族が相手にする訳もない。


これも国際問題に発展しそうな事柄だった。


王子と違って王族でも貴族でもなく、また聖女の力もほぼない女の末路は………。


男好きなのもあり…娼館送りになった。逃げ出すことは決して出来ないようにされて、娼婦として一生を終える事になるのだろう。


ゲームの補正がなくなったというのに。何の努力もせず自分達の欲望のまま好き放題に動いていた奴らというのは、勝手に堕ちていくものなのだ。

♢♢


そして……。


俺達のその後は、まぁご想像にお任せします。


フフッ。

相変わらず、森の奥の奥で過ごしているよ。


今は、三人で……だけどね。




   ────お し ま い────

























鳳雷石の考える溺愛×執着…。そして、ざまあも盛り込んでみました。


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ブックマーク、感想もありがたいです。


皆様の応援でやる気と元気……、勇気もみなぎります。




よろしければこちらもどうぞ☆彡


色々な短編集を【鳳雷石の煌めき短編集】でシリーズ化しました。


・黒いベールを被せられた私は、結婚式を挙げた直後に塔に幽閉されそうになりました

《in7715mb》

・真実の愛?………同感ですわ!

《in0328md》

等など


どうぞよろしくお願いします。



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