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悪役令嬢リゼルカ、追放されたので紅き戦艦で銀河の頂点を目指します  作者: 星灯ゆらり


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5/10

宙賊ギルドを潰しますわ

「リゼルカ・レッドシャークが命じます」


支配者は、支配される者に気持ち良く行動させるのも仕事のうちですわ。

良い政策を掲げ、美しい姿と声で命令を伝えるのは義務です。


「撃ちなさい。賊の船を一隻落とすたびに、星系は平和に近づくのです」


宇宙港一つであればわたくし一人で操作可能ですけど、常にわたくしが宇宙港に居続けることはできません。

ですから、志願者に宇宙港の対空兵器を任せているのです。


徹底的に分業すれば、短期間の訓練でも最低限の仕事はできるはずですわ。


『攻撃が始まりましたぞ!』


自称民間船の一部が輝きます。

宇宙港に取り付けたばかりのレーザー砲塔から照射を受けているのです。


「狙いをつけるのにずいぶんかかったわね」


わたくしの実家の星系なら、一般課程で学んでいる子供でも倍は早く狙えますわ。


『領民に武器を持たせない方針なのかもしれませんな』


「意図は分かるけど好みではないわ。社会全体で力を合わせないと、社会の維持も難しいでしょうに」


ミサイルなどの質量兵器は、敵船が残骸という名の質量兵器になったときに備えて温存中です。

光速のレーザーなら、質量兵器よりは狙いが付けやすいという理由もあります。


指定航路を外れて宇宙港への衝突コースにいる複数の宇宙船から、暗号化されていない通信が一方的に送りつけられてきました。


「助けてくれ! 俺は何もしていない!」


「ここどこ? なんで僕ここにいるの!?」


対空兵器を操作していた者たちが動揺します。

意図してではないのでしょうがレーザーの狙いが外れてしまいました。


「爺。敵艦の内部の映像を」


ディスプレイの隅に、薄暗く粉塵も舞っている船内が表示されます。

元気に助けを求める被害者の姿などどこになく、薬物か機械で「加工」され、命令された通りに船ごと宇宙港にぶつかるつもりの人々です。


「宇宙船の操縦室は救命艇がわりになるほど頑丈です。衝突前に船を破壊すれば、この者たちは助かるかもしれません」


これで撃てないなら、わたくしが遠隔ですべての兵器を操作するだけです。

もっとも、宙賊を憎んでいる者が、ただ震えているなんてありえませんわ。


わたくしの発言で罪悪感を減らされた者たちが攻撃を再開します。

レーザーによる急激な加熱で装甲が解け、パーツとパーツの接続部分も脆くなります。


『敵艦の進路がずれましたぞ!』


残骸というには元の姿を残した敵船が、宇宙港から逸れて遠くへ飛んでいきます。

近くの惑星の重力を振り切れるほどの速度はないので、後で回収しても生きてはいるでしょう。


『お嬢様。船のオーナーが、お嬢様が盗難船を撃破したと言いがかりをつけてきております』


なかなかの経済力を持つ星間企業のようね。

実際は宙賊の隠れ蓑でしょうけど。


「宇宙港への攻撃を宣戦布告なき奇襲攻撃と判断します。賠償金を即座に支払うなら許すと伝えなさい」


『直ちに!』


「わたくしの傘下に入った人間の家族を人質にして何かを要求してきたら、宙賊や関連組織の人間の処理を始めなさい。やり方は分かっているわね?」


『人命消費は節約して、精神的に最大限の衝撃を、ですな。昔を思い出しますな』


爺は教育AIですが、レッドシャークでわたくしと一緒に戦った結果、戦闘と戦闘に関わるあれこれも得意になっているのです。


休止状態のディスプレイにジェドの上半身が映ります。

無精髭なのは、激務で身だしなみの時間も確保できていないからでしょう。


「家族が宙賊の民間人に手を出すのか? それはさすがに……」


ジェドはしぶります。

適度な倫理観がある方が部下として使い易いですから、わたくしにとっては嬉しい反応です。


「驚かせるだけですわ。名目だけ民間人で実際は宙賊の人間を、有効に使って脅してやりなさい」


『ネット上の情報がすべて真実とは限りません。現場での柔軟な判断を推奨しますぞ』


「好きに言ってくれる。だが納得した。任せられた戦力分の働きはする。……念のため聞くが、そちらの身内は大丈夫か。宙賊ギルドの手は長いと聞くぞ」


ジェドが真剣な表情で言います。

わたくしは、ジェドに詳しい自己紹介をしていないことをいまさら思い出しました。


「ヴァルティノア星系のヴァルティノア家に手を出せる組織なら、宙賊なんてせず表側の世界で活躍してますわ。心配は無用です。戦果を期待していますよ」


ジェドは疑問はまだあるようですが納得したようで、敬礼をしてからドルフィン艦隊を率いて出航しました。

艦隊の現在地はこの星系における宙賊ギルドの拠点近くですから、すぐに結果が出ることでしょう。


『お嬢様。ヤイアール輸送の代理人と名乗る者から通信要求が届いております。しかも超光速通信ですぞ!』


故障していない超光速通信機材は貴重品です。

レッドシャークに積んでいるのも受信用機材だけですわ。


「聞き覚えがありますわね。確か……実家の近くで活動していた輸送業者でしたか?」


王都星系に入ってからは貴族生活に慣れるので忙しく、重要度の低いことはほとんど忘れてしまいました。

パイロットに必要な技術と知識は全部重要ですから覚えてますけどね。


『このヤイアール輸送という企業、なかなか強力なセキュリティを使っているようです』


爺が一般的な情報しか引き出せないということは、かなりの技術ですわね。

わたくしは、髪と仮面の位置を直してから宣言します。


「繋ぎなさい」


通信用ディスプレイに、商人の服装をしていても暴力の気配を隠しきれない男が映し出されます。

これは、軍人ではなく賊ですわね。


しかし、この男、なんとなく顔に覚えがあるような気がするのですよね……。


「この星系はわたくしの管轄です。宙賊ギルドが何の用件かしら」


カマをかけるつもりで口にしました。

わたくしの支配領域では存在すら許すつもりはありませんが、領域外まで潰しに出かけている余裕はないですものね。


男の顔面が、痙攣するかのように動きました。

ぐる、と聞こえたのは、ひょっとして男の胃腸が悲鳴を上げた音でしょうか。


「ヴァルティノアの赤サメが、なんでこんなところにいるんですかい」


顔を青白くして、部下を呼んで薬を持って来させているようです。

何人か映り込んだ部下は動揺を隠せていません。


「古い呼び名を知っていますわね。今はレッドシャークですわ」


当時は赤サメの方が格好良いと思っていたのですわ。

あ、思い出しました。


「ずいぶんと白髪が増えていますが、実家の近くの星系で密輸していた船の船長ではないですか。宙賊ギルド所属でしたのね」


「殺しかけた相手にずいぶんなご挨拶ですな。まあ、それは今はいいんです。ギルドを通して援軍に呼ばれはしやしたが、この星系が赤サメの縄張りなら話は別だ。あっしらヤイアール輸送は手を引きやす」


わたくしが攻撃するつもりなら反撃はする、という覚悟を感じますわね。


爺が集めてくれた情報によると、ドルフィン級換算で三隻程度の戦力ですか。

正面から戦うなら三倍でもレッドシャークで一蹴できますが、妨害に徹されるとかなり面倒ですわ。


「わたくしが逃がすと思って?」


「いくら赤サメでも、リングを通って立ち去る直前の艦隊には追いつけんでしょう。……ああ、ようやく一矢報いることができやした」


わたくしが内心むかついていることに気付かれましたわ!


「そう怒らんでください。未踏星系の調査ができるレベルの凄腕パイロットに敵対するなんて、辺境の人間なら賊でもしません。いかれてますよ、王都星系の連中は」


『未踏星系から技術と資源を回収できるかどうかで、軍事や福祉にまわせるリソースが大きく変わりますからな。私も、王都周辺の価値観には、少々言いたいことがありますぞ!』


宙賊と爺が意気投合しているようにも見えるわね。

機械があれば容赦なく殺し合う仲なのだけど。


「勝ち逃げしたら後が怖いので情報を差し上げやす。この星系の賊を潰すために、王国の治安維持艦隊が動き出してやす。連中は赤サメのことは知らないので……まあ、お元気で」


リングを通過したらしく、通信が完全に途切れました。


「隣領の親友が治安維持艦隊に就職してますから、あまり気が進みませんわ」


わたくしが全力で攻めても落としきれなかった艦とパイロットが自然に思い出されます。

王都では温い相手ばかりでしたし、久しぶりに彼女相手に模擬戦をしたいですわ。


『お嬢様と王家の関係が破綻している以上、治安維持がこの星系に到着すれば宙賊と治安維持の両方が敵にまわりますぞ。ところでお嬢様、先程から、ジェド艦隊に捕虜を取られた宙賊が泣き付いてきていますぞ』


「捕虜ではなく、宙賊の被害者から守ってあげているだけなのだけどね。投降するなら家族の命は保証すると伝えなさい。家族と宙賊の関係を公開する気はないけど、そのことには気付かせないでね」


『お任せください!』


これで、この星系に巣くう賊は半減しました。

次の戦いが始まる前に、純粋な戦闘艦も揃えなくてはね。

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