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3 一緒に登校

 予告通り朝ヴィクターが迎えに来た。制服が清々しい。(まじまじと見たことがなかった)

「おはようございます。マリエッタ嬢」


「おはようございます。ヴィクター様。早起きは辛くありませんでしたか?」


「剣の訓練で慣れておりますので、ご心配なく。では行きましょうか」


子爵家の使用人たちがに生温かい目で見てくる。特に専属侍女のミラの目が緩んでいる。今まで冷たい関係だったご主人様に春が、とでも思っているのだろう。ごめんね、ミラ。


「そうですか。辛くなったら仰ってくださいませね」


「こんな光栄な役目を他人に渡しませんよ」


「えっ、何か仰いましたか?」


「いえいえ、聞こえてなければいいのです。今日も綺麗ですね。制服もよく似合っている」


「初めてですわね、制服姿を褒めていただくのは。何度かお会いしていると思うのですが」


「うっ申し訳ありませんでした。今までの自分はあまりにも酷かったです。改めますのでこれからはランチもご一緒にいかがでしょうか?」


「良いですけど、お友達と一緒でなくてよろしいのですか?」


「話の分かる奴なので大丈夫です」


「ではよろしくお願いしますわ」


(どうしたのかしら、この急展開。はあ〜昼休みのゆっくりタイムが無くなったわ。絶対賭けに勝ちたいからとかかしら。それとも小父様に言われて政略の意味を本当に理解したから?それでも今に嘘告の計画を後悔させてみせるわ)


学院に着き馬車から降りた私達を見て生徒達がざわめいた。それはそうだろう。

今まで冷えた関係だと言われていたマリエッタ・クロスとヴィクター・アレクサンドロが一緒に登校したのだから。


混乱させて悪いけど私が一番気持ちが付いていってないのよ。そう思っていたらウインダム伯爵令嬢が近づいて来た。ヴィクター様に横恋慕している一番煩い女生徒だった。


「おはようございます、ヴィクター様。一緒に登校したいと家の力で言われましたの?お金の力を笠に着た振る舞いですわね、酷すぎますわ」


「悪いがそこを退けて貰えないだろうか。一緒に登校するのは私の方から願ったことだ。変な事を言って婚約者を傷つけないでくれないか」


「えっ、ええ?願った?お願いされたのですか?」


まさかヴィクターがマリエッタを庇うとは思っていなかったウインダム伯爵令嬢は驚いたのか大人しく道を空けた。周りにいた生徒も何があったのか分からず遠巻きに見ているだけだった。



ウインダム伯爵令嬢は次女だ。ヴィクターに嫁ぐとなると相当な持参金を用意しなくてはならない。

ウインダム家が次女に大金を出すわけもないので、没落寸前のヴィクターに嫁げるわけもないのだが、よく絡んでくる面倒な女生徒だった。




初めて庇って貰えた。


マリエッタは上辺だけでも婚約者として守って貰えたことに安堵した。




「あの様なことはよくあったのでしょうか?そうであれば大変申し訳なく思います。これからは私が守り抜くと誓います」


(えっこれが嘘告なのかしら。守るって言ったわよ、それって告白の内に入るのかしら)


「よくありますね。だから一人でいられる所を探して過ごしていたのですけど

ヴィクター様が宣言されましたので、減れば良いなと思いますわ」


「私は没落寸前の伯爵家の嫡男ですよ。何の価値もないのにマリエッタ嬢を虐めるなんて考えられません」


「そう思われない方たちがいますのよ。お顔が好きとか伯爵位を狙う低位貴族や平民の方々には魅力的なのではありませんか?」


「でも我が家は貧乏ですしマリエッタ嬢と婚約を結んでいるのです。考えるだけ無駄だと思いますが。もちろん裏切ることなどありえません」


後ろに生徒がつかえているのに気がついた。


「続きはお昼休憩にいたしましょう。授業が始まりますわ」


(案外真面目なのね。嘘告するくらいだからもっといい加減な方だと思っていたのに。会話が少なかったから分からなかったわ)


マリエッタはSクラスだ。兄と一緒に幼い頃から一流の家庭教師が何人もつけられていた。泣き言を言うと身を守る為だと母に抱きしめられ慰めて貰った。

勉強の合間のキャンディが美味しかったのが今でも忘れられない。特別な味がしたものだ。


クラスメイトは王族や高位貴族がいて六人。ヴィクターはその下のAクラスだ。

小さな時には家庭教師がいたらしいが貧乏になってからは独学、婚約してからは子爵家が派遣した家庭教師が勉強を見ていた。


その恩恵も理解せずあの態度だったのだ。思い出すとイラッとしてしまったのは悪くないと思う。

でもそれではウインダム伯爵令嬢の言う通りの驕り昂った人間になりそうだ、気を付けなくてはと思い直したマリエッタだった。

読んでいただきありがとうございます! まだまだやり込める気満々のマリエッタです。

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