第1話(後編)アルフレッド視点:血痕イベントフラグが立ったっぽい。
前世では、ブラック企業に勤めていて、勤務中に過労死した。
ゲームの腕だけが取り柄の俺の人生、なんともあっけない最期だなと思ったものだ。
だが、転生した世界が『DEATH LOOP BREAKER:悪魔を討つ者』だと悟った瞬間、心の底から絶望した。
『if character.name == "アルフレッド" and character.defeated_valstol_wolfgang_iii == True and character.rank == 1:
return "TRUE_END"
else:
return "BAD_END"』
頭の中に流れてきたプログラミングコードによれば、
この世界を支配する悪魔皇帝――ヴォルグガンク・ヴァルシュトール三世を、
誰よりも早く倒さなければ俺は消える。
俺以外はノンプレイヤー。つまり、NPC。
そのくせアルフレッドと競うライバルキャラクターたちは、ヴァルシュトール三世狩りガチ勢。
もたもたしていたら、あっという間に先を越されてしまう。
難易度は、意地が悪いことに"地獄"。
サポートNPCがくれるアイテムや、装備品……
サブクエストをしっかり消化していかなければ、
ヴァルシュトール三世にダメージが通らない仕様になっているのだ。
生前に周回クリアしていたから、マップやシナリオの内容は把握している。
それでもHELLモードは異次元。
あまりにも理不尽な鬼畜仕様で、俺のゲーマー人生で初めての挫折ゲーになったのだ。
――まだまだゲームは序盤。
『忘れられし古城』の探索中、
足を踏み入れた『昏き令嬢の寝室』でNPCが話しかけてきた。
場違いなほど華やかなドレスに、緑の瞳。
完璧に整った髪と、微笑み――この荒廃しきった世界には似つかわしくない。
この地獄の中で、彼女だけがまるで乙女ゲーのスチルから抜け出したように浮いている。
(……なんでこのキャラだけ、3Dモデルの作り込みが段違いなんだ?)
しかも、表情がコロコロと変わる。
この地獄みたいな世界に慣れ切った目には、鮮やかに映った。
『DEATH LOOP BREAKER:悪魔を討つ者』において、女性キャラは希少。
登場したら、大体何かしらのイベントが始まるのだ。
初めて見るキャラだったが、これもHELLモードだからこその特別イベント。
しかも、この気合の入れよう。
イコール、超重要なNPCだってことだ。
(Very Hardまでなら、サポートNPCを適当に無視しても良かったが、
今回は絶対に無視できない)
「あの……アルフレッドさまって、血痕とか……ご興味ありますか?」
血痕ってなんだろう。
NPCは続けざまに問いかけてきた。
「お願いがあります。あなたのおそばに置いてくれませんか」
(――なるほど)
これは、悪魔の血――
つまり悪魔皇帝を深堀りするイベントに違いない。
(ならば、選択肢を間違えるわけにはいかない。
ここでダメと言ったら、完全にフラグを折ってしまう)
「別にいいが」
俺が答えると、彼女はものすごく嬉しそうに微笑んだ。
よし、これは正規ルートだ。
攻略の肝は、いつだってこういう初動にある。
(これ、Sランクアイテムをくれる流れかもしれない)
だが、俺の期待とは裏腹に、彼女は小さくガッツポーズをしているだけ。
(アイテム入手のSEが鳴らない……。そう甘くはないか)
しばらく一緒に行動をしていれば、そのうちフラグが立ってイベントが起きる系か。
戦力にはならなそうだが、イベントが終わったら
「それでは、私はここまでです」とか言って、離脱する流れまで見えた。
俺が踵を返すと、彼女は慌てたようについてきた。
どうやら追尾機能があるようだ。これはありがたい。
(俺は、誰よりも早く悪魔皇帝を討ち、この世界で生き残る)
――もう二度と、理不尽に死んでたまるものか。
滑り出しは、順調そのもの。
グッドエンドまで駆け抜けてやる。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
執筆のお仕事と、別作品『勇者の後宮と、囚われの魔女』の更新を優先しているため、
『死にゲーバグ転生』は不定期更新となります。
しかし、二人の恋(?)の結末までは書き切りたいと思っていますので、
ゆったり見守って頂けますと嬉しいです。
★や感想、リアクションなどいつもありがとうございます。
引き続き、よろしくお願い致します。