3話 呪い
世界に一つしかないダンジョン攻略本〈予知攻略本〉それを火に入れようとした時に、とある少女と出会った。
「その本は燃えないよ。」
綺麗な黒髪ショートの少女は俺にそう言う。
「この本のことを知ってるのか?」
俺は攻略本を少女に見せつけながら質問する。
「嗚呼、もちろん。君が燃やそうとしているのは選ばれし者に与えられる〈予言世界本〉の一種である予知攻略本だろう?」
ダンジョン攻略本の他にもこういうものがあるのだろうか?
俺は、ダンジョン攻略本しか世界にこんな変な物はないと思っていた。だが、少女の話では何冊かあるらしい。
「なぁ、お前もその…余生世界本?だかを持ってるのか?」
「なにが余生だ!!予言世界本だ!!お前はバカかー!!」
少女は感情のままに話す。
その慌てている姿は少し面白かった。
「あははっ…君面白いね。」
「さっきの答えだが…〈予言世界本〉の一種である。世界攻略本、〈世界予言本〉を持っているよ。」
俺のダンジョン攻略本〈予言攻略本〉とは違う〈世界予言本〉という物の詳細を聞くと
〈予言攻略本〉は、ダンジョン攻略専門の本だが、彼女の持っている〈世界予言本〉は、世界の出来事の予言や世界の謎についてが記入されている1万ページ以上ある本らしい。
「そういえばさっき、この本は燃えないって言ったよな?…なんでだ?」
少女はクスりと笑い、彼の本を手元から奪う。
「この本はねぇ、持ち主が死ぬまで手元からなくなることはない。そのくせ、いつ手元に現れるかもわからないから世間ではこう言われてるんだよ。」
”呪いの予言書”
「可哀想だよね。世界のさまざまな出来事を予言してくれるだけなのに、手元からなくなることはないってわかった瞬間忌み嫌われて」
少女は悲しそうな顔をしながら本を見つめるのであった。忌み嫌われる、ということを不思議に思い詳細を聞いてみると──
最初は、その本を手に入れたものは神として祀られるレベルだったらしい。
だが、死ぬまで離れないとわかった瞬間人々はこの本を忌み嫌った。
ただ予言してくれるだけなのに、だ。
「君は、この本をどう思い、どう使う?」
少女からの意外な質問に動揺しつつ、彼女の手にある本を見つめる。
「俺は、君みたいな世界に貢献出来るような予言書じゃないかもしれない。でも、必要な人がいる限りこの本を使うよ。」
固い意思を感じる強いまなざしを少女は見るとこう言ったのだった。
「そうねぇ、君になら出来そうだね。うんうん、流石私が見込んだ人だよ。」
不敵な笑みをしながらね。
「待て、見込んだ人ってなんだよ!!」
少女は彼をじっと見詰めた後、指を口に当てて
「ナイショ」
とだけ言って、ダンジョン攻略本を切り株の上に置いて去っていった。
* * *
「嗚呼、やっぱり彼を選んで良かったよ。やっぱり、社〈やしろ〉の選ぶ人はいい人だね。」
さっきの少女は、綺麗な顔立ちの人に話しかける。
「お褒めいただき光栄です。さて、アテナ様残りの予言本どうなさるおつもりですか?」
「社が見つけてくれるでしょう?予言書を手にするに相応しい、数少ない人間を」
そう言うと、少女から予言世界書を3つ渡された。
1つ目は、世界予言本のコピー
2つ目は、魔法予言本
3つ目は、神予言本
「社、いい人を見つけてね。それから、あなたの父の二の舞にならないでねぇ、処理が大変だから」
「承知いたしました。アテナ様」
予言世界本は、神が創り出した世界に繁栄をもたらす書である。
1歩使い方を誤ってしまえば、世界はカオスになり、いずれ幕引きを余儀なくされる。
社の父親は、渡す人を間違えた。
世界の幕引きをどうにか神達が止めたが、社の父は処刑され、娘であった社にこの仕事が回ってきた。
世界の幕引きを止めて、社父の処刑までしたものだから神は力を使い切り今は仮死状態になっている。
「私たちの仕事は、神を眠りから目覚めさせる5人の所有者を見つけること。5人の所有者の魂を合わせればきっと…ゼウス様も喜んでくれるはず。」
「そうですね、アテナ様。きっとゼウス様もお喜びになられますよ。神の器を持つ5人の器が集まれば…きっと」