1話ギルド追放
「第5層の人形結界の破壊を確認、不審者は6名全て華の都ユークリッドからのギルドで間違いないかと」
とある少女はフロイドに現状報告する。
「そうか、6人のギルド…となるとエアロか。」
世界最高峰の者が集まる唯一のギルド
──少し来るのが早いな。
「ん?あれは──」
6人が映っている液晶画面を見詰める。
聖剣使い、治癒魔法使い、弓使い、盾使い、精霊使いはユークリッドでも名が知られており有名だが1人だけ無名の勇者がいた。
「あれは、魔法学の第1責任者である泉 カイトの息子の泉さとるですね。脅威ではないと思いますが…」
* * *
攻略本の話によるとここら辺で6層から一気に敵の数が増えるんだったな。
「みんな周囲には気をつけてね!」
俺は周りを探索するみんなに声をかけた。
攻略本を見ながら、俺も捜索を続けた。
「そういえば泉さんって、最高峰の魔法使いなんですか?雑誌で見たことないなって思って」
リリーはさとるに問いかける。
この世界では魔法使いは少なく重宝されていて、優秀な魔法使いは雑誌でも良く取り上げられている。
───俺は、親の事情でユークリッドに来たから本当に優秀な魔法使いじゃない。
俺の親、泉カイトは世界最高峰の魔法学者だ。
魔法学第1責任者にして、ユークリッドの超名門〈アルカデミックアカデミー〉に勤めていて俺はカイトの息子として一時期有名になったが、俺自身あまり魔法は得意じゃなかったし、好きでもなかった。
──親が第1責任者だっただけ。
俺はただ魔力が人よりも多いだけの、ただのマヌケだった。だけど周りは、あの人の子だからと優しくしてくれた。
だけど、期待に応えることは出来なかった。
俺は、魔法は得意じゃないし、好きじゃない。
やる意味もわからないし、親が第1責任者だからって周りの期待に答えようとも思わなかった。
だけど、世界は残酷だった。
期待に答えようともしない俺を周りは責め立てた。
俺はそこから、父親も、魔法も大っ嫌いになった。
「あー、俺の親がちょっとばかし有名なだけで俺は…」
その時、地響きがした。
リリーの近くから敵が湧き出てくる。
それにいち早く気がついたのは精霊使いの宮里だった。
「泉さん!!」
宮里は俺にリリーを助けろとそういう意図で、俺の名前を呼んだのだろう。
俺も即座に反応し、防御魔法を発動させようとしたが俺の防御魔法は脆く壊れやすいことを自分でも忘れていた。
防御魔法を突破して敵がリリーに襲いかかる。
そしてリリーは巻き込まれてしまった。
* * *
「なんで防御魔法が直ぐに壊されたの?」
俺を囲んで問い詰める。
前にもこんなのがあったなと思い出す。父親が魔法学の第1責任者だから、お前は魔法ができて当然のはずなのになんでこんなことも出来ないんだ。と父親の研究仲間に言われたことを思い出し気分が悪い。
治癒魔法使いだからと言って、魔法が使えないわけではない。
治癒専門ではあるものの、基礎的な魔法は使えるはずだ。だが、それがリリーには出来なかった。
そして俺も、基礎的な魔法である防御魔法が未完成であった。
幸い、リリーは重症であるが命に別状はない。
俺が一応治癒もして、もう少ししたら目を覚ますだろう。
だが、目を覚ました先に俺だけは居ない。
世界最高峰のもの達で構成されたギルド〈エアロ〉
世界最高峰の魔法使いではない俺は、足を引っ張るだけだった。
攻略本のおかげで今までこのギルドに居れたが、あの失敗は取り返しがつかないらしい。
俺は気をつけろと注意したし、できる限りの事はしてきたつもりだが感情的になった人に論理的に話したところで通じない。
───俺はギルドを追放させられた。