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リアンを出発して4日、とうとうバルトが見えてきた。遠くに街を囲む壁があり、その手前に小さく馬車が見える。さすが王都なだけあって他の街よりも馬車の出入りが多いようだ。
入る時の検問て少し時間が掛かったが、無事にバルトに到着した。馬車から降りて周囲を見回すと、行き交う雑踏はヴィオラ以来の賑わいがあった。
「荷物は全部持ったな、じゃあ俺は積荷を届けに行くからここまでだ。達者でな」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
ヨシアはそのまま馬車に乗って雑踏の中に消えていった。
「さて、今日はもう遅いの私は宿を探しに行きますけど、お2人はどうするんですか?」
「俺はアテがあるからそっちをあたるよ」
「俺はとりあえず宿を探そうと思います」
ドラウグはバルトにも知り合いがいるのか、王立騎士団の人脈は随分広いんだな。
「そしたらドラウグさんとはここで一度お別れですね。でもバルトに住んでれば会えますね。会ってくれますか?」
「会うさ俺は貴族街の外をぶらついてるだろうから、用があるときはそこら辺に来てくれ」
それだけ言い残してドラウグは去って行った。
「セガスさんはどうします?また同じ宿に泊まりますか?」
「いえ、いつも頼ってばかりなので今回は自分で探してみようと思います」
「わかりました、困ったらいつでも言ってくださいね。できることならやるので」
ヒストが宿屋街の方に歩いていき、雑踏に消えたのを見届けてから考え始める。
さて、ひとまず宿を探して荷物を置いたら夕食を食べに行こう。バルトの宿屋街にある宿は今まで通ってきた街よりも多く、その分宿泊客も多い。だが思っていたよりすぐに宿が見つかった。最初の2軒は満室だったが、3軒目の宿に空室がありそこに泊まることができた。
夕食を食べるために店を探して歩いてるが、宿だけでなく酒場や食堂も多く、どこも客が頻繁に出入りして賑わっている。その中から適当な店に入る。中は客が混み合い空いてる席がなかなか見当たらない。ようやくカウンター席が空いてるのを見つけ、そこに座る。ヴィオラも賑わっていたが、バルトの賑わいはヴィオラと少し違った空気を感じる。恐らくヴィオラは国王に対する不信感が祭りの空気に混ざっていたのだろう。しかしバルトでは、祭りはやっていないが街全体に活気溢れていて、明るい空気を感じる。
夕食を食べて店から宿に戻る。どのくらいこの街にいるかはまだ決めていないが、少しゆっくりしようと思う。ずっと旅をして馬車の中というのは心身ともに疲れるから、休めるときに休んでおこう。
目が覚めて身支度をする。今日はシアンの国立図書館に行く予定だ。正直かなり楽しみにしていた。道中ヒストに借りて本を読んだときに、欲しい情報はああまりなかったが新しい知識が増えることがすごく楽しかったから、国立図書館を楽しみにしていたのだ。
朝食をさっと済ませて街を歩き始める。図書館がどこにあるのか知らないが、とりあえず歩いてみる。バルトの街を見て周りたいとも思っているので、持ってこいの機会だ。先に冒険者ギルドを見つけたら、そこで地図を買えばいい。
バルトは学問の街というだけあって、街中を歩いていて書店を見かけることが多い。また今度書店巡りをしてみるのもいいかもしれない。馬車に乗っている間はできることがあまりないため、ここで買った本を馬車の中で読もう。図書館の本を街の外に持ち出すわけにはいかないから、何冊か買っていこう。荷物が増えてしまうが数冊なら大丈夫だろう。
この先の旅路に思いを馳せながら歩いていると、道の先に広場が出てきた。あそこに何かありそうだ。広場の中心には噴水があり、そこを囲むようにベンチが設置されていて、ほとんどに人が座って埋まっている。俺が来た右手側には冒険者ギルドがある。冒険者ギルドの建物はバスよりも豪華な装飾がされている。さすがに首都といったところか。とりあえずここで地図を買っておこう。
「すみません、バルトの地図はありますか?」
冒険者ギルドに入り受付で聞く。冒険者ギルドの中も外と同じように賑わい、活気がある。
「はい、1枚1ゴールドです」
「1枚ください」
地図の値段はバスの地図と同じだった。
「ありがとうございます」
地図と1ゴールドを交換して、受付から離れる。冒険者ギルドの中に設置されている席に座り地図を広げる。バルトは街の中心には王城ではなく、国立の学園があるようだ。王城は学園の少し北側にあり、俺が今いる冒険者ギルドは街の中心から少し南東に離れたところにあるらしい。そして一番の目的である国立図書館は、学園の隣に並んで建っているみたいだ。ここから歩くと少し時間が掛かるが、それも大きな街ならではの楽しみだろう。さて、それじゃあ図書館に向かうとしよう。
冒険者ギルドから歩いて疲れを感じるぐらいのところで明らかに周囲から浮いている建物が見えた。あれが国立学園だろう。バスやこれまで通った街にあったどの学校よりも立派で荘厳な造りをしている。恐らくここまでの街にあった領主屋敷よりも大きいだろう。あそこでは一体どのくらいの学生が学んでいるのだろうか。500人ぐらいか、1000人ぐらいか見当もつかない。それぐらいに国立学園は大きな建物だ。今までの街の領主屋敷や王城を知らなければ、これが王城だと言われても信じるだろう。
国立学園の建物に圧倒されながら歩いていると、その向こうにまた違う建物が見えてきた。国立学園の隣には国立図書館があるはずなので、あれがそうだろう。図書館は学園とは対照的に、シンプルで余計な装飾が一切ないが、重厚感があり建物全体から威厳を感じる。この中に大量の蔵書があるのか。建物を見ていっそう楽しみになってきた。
少し浮足立った足取りで国立図書館の扉を開ける。




