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「冒険者登録をしたいんですけど」
ラバイからコロン樹海まで歩いて向かうために、冒険者登録をするためにトラビの冒険者ギルド本部にやってきた。
「ではこちらの用紙に必要事項を記入してください」
受付で渡された紙には名前や性別・年齢、出身といった基本的な情報の項目しかなかった。
しかし、俺はその基本項目に一つ困るところがあった。名前はもちろんセガスと書けばいい、出身もヴィオラということにしておけばいい。だが年齢はどうしたものか、俺は記憶の中に自分の名前しか残っていないので、自分が今何歳なのかがわからない。もし冒険者登録をするのに年齢制限があって、もしものことを考えて受付に聞いてみる。
「冒険者になるのに年齢制限とかってあるんですか?」
「年齢制限はありませんが、冒険者登録をすると冒険者カードを渡すんですが、そのカードに名前や年齢など書いていただいた項目も載るので必要になります」
とりあえず空欄のままにするわけにはいかないので、とりあえず俺の見た目と不自然にならないであろう年齢で、22歳と書いておこう。
「ありがとうございます、ではカードを発行してきますので少しお待ちください」
項目を全て埋めた用紙を持って受付担当が裏へと行った。少しと言っていたが、冒険者カードはそんなにすぐに作れるものなのか。
「お待たせしました」
考えていたら奥から受付担当が本当にすぐに出てきた。
「こちらが冒険者カードです。依頼をこなしてランクが上がったら更新されますが、それ以外では基本更新や取り替えることはありません。失くした場合の再発行には2ゴールド掛かりますので、気を付けてください」
受け取った冒険者カードには、用紙に記入した内容と俺の冒険者ランクEと書かれている。これでコロン樹海へ向かう準備はできた、あとはラバイに行くだけだ。
ラバイに行くため馬車乗り場へ来た。この街では行先ごとに乗り場が分かれているため、ラバイへ向かう馬車の乗り場へ直接行く。ラバイはコロン樹海の手前の街だからか、向かう馬車は2台だけだった。
「すみません、ラバイまで行きたいんですけど」
「5ゴールドですね。すぐに出発するので用意してください」
5ゴールドを手渡して荷台に乗り込むと、先に乗っていた冒険者であろう男が話しかけてきた。
「よお、俺はテリーサ。見ての通り冒険者でこの馬車の護衛だ」
「はじめまして、セガスです」
挨拶を交わして握手をしていると、がたがたと馬車が揺れた。
「それじゃあ出発しますね~」
御者が声を掛けて、後ろに見えているトラビの景色がだんだんと離れていく。地図で見た限りでは、トラビからラバイまでもかなり距離があり、到着までにそれなりに時間が掛かりそうだ。
通りには屋台が並び、人々は熱気に包まれている。しかし、その熱気の奥に不信感のようなものが見え、心の底からこの祭りのような街の空気を楽しんでいるようには思えない。表情は明るく活気があるため、その差がどこか不気味さを生み出していて居心地が悪い。あまりここに長居をしたいとは思えない、そんな街だ。
「起きたか、もうラバイが見えてきてたぞ」
西日になり始めた日差しが馬車の前から差し込み、目を細めて前方を見やる。先の方に小さく街壁が見える、あれがコロン樹海までの最後の街ラバイか。当然ではあるが、いたって普通の街だ。
ラバイからコロン樹海まで歩いて行くが、距離は近いとは言えない距離なので、ラバイで食料などの消耗品を買い揃えて、休んだらコロン樹海に出発だ。とうとうここまで来たという感じがするが、ここからコロン樹海まで行って記憶を探すのにどれぐらい時間が掛かるのかわからないので、まだまだこれからとも言える。
「ここまでありがとうございました」
御者のサンアンと護衛をしてくれたテリーサにお礼を言った。
「いえ、これも仕事ですから」
「俺も移動のついでに護衛依頼を受けただけだしな」
2人は笑いながら答えた。
「それじゃあ失礼します」
「俺はこの街を拠点にしてるから、暇な時に飯誘ってくれよ」
別れ際にテリーサに言われ、笑って会釈を返した。ここまで様々な人と出会ったが、全員いい人だった。こんな素敵な出会いに恵まれて、俺は感謝が胸に溢れてこぼれそうだ。
宿に入りベッドで横になる。遂にコロン樹海に届くところまで来た。あとは俺の記憶を探すだけだが、手がかりはこのかばんの中に入っている謎の球体だけ。だが俺はどんなに細い可能性でも、0じゃないならその可能性を追い続けるだけだ。記憶を取り戻すにはそれしかないのだから。
宿までの道中に、あの男が離れた所に立っているのを見たが、今はもうそんなこを気にする俺ではない。ここまで来たら俺が先に記憶を見つけるか、あの男が俺を捕まえるかの勝負だ、怯えている場合ではない。
2日準備をして体を休め、コロン樹海の探索へ向かう。昨夜テリーサと夕食を食べた。サンアンも誘おうとしたが、またトラビに向かったためすでにこの街にはいなかった。今日から当分は1人での移動と探索になるため、最後にテリーサとゆっくりと話せてよかった。これで思い残すことなく出発することができる。
衛兵に依頼証を見せて街の外へ出た。ここまで来た道とは反対、馬車が1台も走っていない方へと足を向ける。普段使うことが少ないからか、この道は草が生い茂り道の境目がわかりづらくなっている。歩きづらいが文句など言っていられない。ただ歩き続けるだけだ、俺の記憶を見つけるまで。




