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世界の果て  作者: にこぴ


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 「お待たせしました、ほんとにすぐでしたね」


 ドアが開きハリアが部屋に入ってきた。リラックスして崩れていた姿勢(しせい)を正して椅子に座りなおす。ハリアは高級店に相応(ふさわ)しいパリッとしたスーツを着ている。


 「はい、商店街を散策してたので来ちゃいました。スーツ似合ってますね」


 「ありがとうございます。これも仕事道具みたいなものなんでけっこうこだわってるんですよ」


 ハリアはネクタイピンやブローチを付けていて主張は強くないがこだわりを感じ、それがより高級感を出していてとても似合っている。


 「自分から来てくれと言っておいて申し訳ないんですけど、この後約束があってあまり時間を取れなくて」


 「むしろ俺が急に来たのが悪いので気にしないでください」


 「すみません。じゃあ時間もないのでどうします?店を見てみます?」


 「そうですね、せっかく来たので何か記念になるようなものでも買っていこうかな」


 「じゃあ早速(さっそく)見に行きましょうか」


 ハリアと一緒に部屋を出て商品が並んでいる店内へと戻る。店内にいた客は減っていて1人だけだった。


 「セガスさんは旅の途中ですから、インテリアじゃなくてアクセサリーがいいですよね。好きなデザインはありますか?あれば予算内でいくつか見繕いますので」


 「アクセサリーを買ったことがないので特に好きなデザインとかはないんですけど、あまり派手じゃないのがいいですね」


 「なるほど、予算はどのくらいで考えてますか?」


 予算か、手持ちに余裕はあるがこの先どのくらいあれば安心かわからないので、あまり高くない方がいいだろう。


 「そうですね、高くても金貨10枚ですかね」


 確か残り金貨120か30枚くらいあったと思うので、ここまでにかかった金額と帰りのことを考えると、そのくらいだろう。


 「わかりました、いくつか持ってくるので少し待っててください」


 ハリアは迷うことなくガラスケースの中からアクセサリーを取り出している。俺が提示した予算に驚かなかったということは、この店ではそのくらいは普通の金額なのだろう。


 「とりあえずこんな感じですね、この中に気に入るものがなければまた別のを持ってくるので遠慮なく言ってくださいね」


 「ありがとうございます」


 ハリアは4つのアクセサリーを持ってきてくれた。ゴールドのリング、シルバーのリング、ゴールドのブレスレット、そしてシルバーのブレスレットだ。今までしっかりとアクセサリーを見たことがなかったが、ゴールドは俺の好みではなかった。


 シルバーのリングとブレスレットの2択だが、俺はブレスレットの方に強く惹かれた。そのブレスレットは細いチェーンのデザインで、真ん中に青い宝石が3つ並べて付けられている。俺の希望通りシンプルなデザインだが、(きら)びやかで優美な魅力をまとっている。


 「これにします」


 シルバーのブレスレットを指してハリアに言った。


 「決まりましたか、早かったですね」


 「はい、このブレスレットのデザインがすごくよかったので」


 「わかります、俺もこれはいい商品だと思います。でもお客さんはあんまりシンプルなものは好まない人が多いので売れ残ってたんですよね」


 「そうなんですか?シンプルなのもいいと思うんですけどね」


 「残念ながら。じゃあ会計しますのでこちらにどうぞ」


 会計を済ませて店を出る。ハリアは店の前まで見送りしてくれた


 「いつエルパムを出るか決めてるんですか?」


 「明日か明後日に出ようと思ってます」


 「そんなに早く行っちゃうんですね。またエルパムに来ることがあったら、ぜひうちの店に寄ってくださいね」


 「はい、また会いましょう」


 手を振ってハリアと別れた。今までで一番深い関係性になったと思う、この街から離れるのが寂しくなった。ハリアとの別れをひっそりと惜しみながら商店街で必要なものを買って宿に戻った。


 ベッドに座りハリアの店で買ったシルバーのブレスレットを着けてみる。シンプルで主張をしてこないが、存在感が弱いわけではなくワンポイントとしての意匠(いしょう)が美しい。値段は安くなかったがいい買い物をしたと思う。


 そろそろ寝ようと思い一度ブレスレットを外してベッドから立つ。カーテンが開けたままになっていたので閉めようとして窓の前に立った。その時に外を見ると、宿の前の通りに誰か、恐らく男が立ち止まっていた。なぜあんなところで立ち尽くしているいるのだろうか。ついじっと見てしまいはっとしてカーテンを閉めようとしたとき、突然男の顔がこちらを向いた。


 目が合っている。暗くて顔は見えないが男は確実にこちらを見ていて、俺と目が合っている。俺の身体に緊張感が走り息が詰まって体を動かせなくなってしまった。顔すら動かすことができず、目をそらしたくてもそらせない。通りを歩いている人たちはまるで見えていないかのように謎の男を見向きもしない、誰もあの男があんなところで立ち止まっていることを不思議に思わないのか。


 男はしばらくこちらを見てから通りを歩いてどこかへ行った。一体何だったんだあの男は、なぜこちらを見ていたのだ。もしかしてあの男がリアンの宿で聞いた足音やバルトで感じた視線はあの男だったのか。2ヶ月前にイリスで記憶を失う前の俺を追いかけていたというのも、全てあの男なのか。


 カーテンを閉めて窓から離れる。なぜかわからないが俺の居場所は常にばれていると思っていいだろう。あの男がどこに行ったかわからないが、この街は早く出た方がいいだろう。同じ場所に長居せず移動していればどこかで()けるかもしれない。ここまでついてきてる以上その望みは薄そうだが、可能性に掛けるしかない。


 明日エルパムを出ることに決めてベッドに入った。しかしあの男はどうやって俺の居場所を突き止めたんだ。そもそもどうやってここまで追ってきたのだろうか。顔は見えなかったが体格や立ち姿を見た限りでは今まで乗ってきた馬車で一緒になった誰かではない。だとすると別の馬車で来たはずだが、それでは到着のタイミングがずれるためどこかで俺を見失うはずだ。それでもあの男は俺を見失うことなく俺を尾行している。一体どうやっているのだ。


 ひとまず宿の中は安全だろうから寝ることに集中しよう、そして明日は朝一でこの街から出る。とにかくあの男に追いつかれないように移動し続けるしか俺にはできない。なぜあの男が俺を追い続けるのかも失った俺の記憶に答えがあるだろう。

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