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世界の果て  作者: にこぴ


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 バルトを出発して2日でカイスに着いた。ここまで来るのに1ヶ月ほど、最初はずっと馬車に乗っていたり野営だったりが初めてで大変だったが、今となってはだいぶ慣れたものだ。


 「そしたら僕は馬車を停めに行くので、セガスさんは宿で休んでください。出発は明日の10時頃を予定してるのでしっかりと休んでおいてくださいね」


 「はい、ありがとうございます」


 ショーンはそのまま馬車を引いて待ちの中へ消えていった。俺もひとまず宿を探しに行こう。


 見つけた宿の部屋でベッドに座り一息つく。バルトからカイスまでの馬車の中ではずっと帝国技術総覧を読んでいた。その中で気になるものがあった。それは名前が書かれていなくて、内部構造についての図解がなくただ球体の形に線を引いて文字で解説されているだけだった。


 その解説によるとそれは他のものを作ろうとしていた最中(さいちゅう)に偶然できたもので、作成者も内部構造についてわからないことが多いらしい。さらにはその使い方についても全てわかっているわけではないと書いたあった。わかっていることは、それは今まで見たことのない素材でできていて、見た目はガラスや水晶に似ているが触ると金属のような質感をしていて、落としてしまったことがあるがが傷一つ付かなかった。使い方はそれに手を当ててほしいものを強くイメージすると、それがどこからともなく現れる。だが同じように手を当て言葉を言っても現れないこともあり、その条件はわかっていない。また、それ以外にもその球体は不思議な現象を起こすことがあるが、それらが起こったときと同じようにしても同じ現象は起こらず、その条件はわかっていない。それが不思議な現象を起こす条件は1つ、それも不確実とはいえそれが持つ(ちから)は個人、ましてや貴族や王といった権力のある者が使うとろくなことにならないと思った作成者は、それを誰にも見つからないように隠すことにした。


 帝国技術総覧にはそのように書かれていた。そこで俺は一度荷物を全て出し、1番下に入っているものを取り出した。見た目はガラスや水晶に似ているが、触った質感は金属に近い。今俺が手に持っているものも同じだ。もしかするとこの俺の手元にあるものは本物なのかもしれない。帝国技術総覧が疑わしいという考えもあったが、帝国時代の技術である時計の構造が載っていたことから、この本の信憑性(しんぴょうせい)は高いだろう。


 だとするとなぜこんな貴重(きちょう)なはずのこの本が、ただの街の古書店にあったのか。また新たな疑問が生まれた。帝国が分裂したときにそのほとんどが失われたと思われている帝国の技術が、この本には多く書かれている。こんな本があったら学者が黙っていないはずだ。何なら国が欲しがる代物(しろもの)のはずだ。それがなぜあんなところで眠っていたのか。世界中から学生が集まり学者が大勢いるバルトで誰も手に取らなかったのかもわからない。


 散らかった荷物をかばんの中に戻す。ひとまず今いくら考えてもそれらの答えは出ないので、考えるのは一旦(いったん)止めよう。この旅の目的地であるコロン樹海まで行ったらその答えもわかるかもしれない。この街は明日すぐに出るため今日は夕食を食べてもう寝よう。


 夜が明けて宿を後にし馬車乗り場へ来た。この街も行き先ごとに馬車の乗り場が別れていて、イリス行きの乗り場へ行く。シアン内の街は全てこのように乗り場が分かれていてわかりやすくなっているのは、とてもいい発想だと思った。


 イリス行きの乗り場はやはり馬車が少なく、ショーンの姿をすぐに見つけることができた。どうやらもう出発する準備ができているようだ。これ以上待たせてしまっては悪いと思い、早足でショーンのところへと歩く。


 「おはようございます、お待たせしてはすみません」


 「おはようございます、全然待ってないので大丈夫ですよ。まだ出発予定よりも前ですしね」


 ショーンはそう言ってくれたが、待たせるというのはあまり気分が良くない。次からはもう少し早めに来れるようにしよう。


 「それじゃあセガスさん、忘れ物はないですか?出発しますよ」


 御者台に座ったショーンに(うなが)され俺も荷台に乗った。ショーンが馬車を出し街の出口へと進んで行く。次の街はロウワ―の領内(りょうない)に入ったイリスか。ロウワ―は商業大国のため、その領内にあるイリスも商業が盛んなのだろうか。また街の雰囲気(ふんいき)の変わるだろうから楽しみだ。


 イリスから馬車に揺られて2日が経った。その間俺はバルトの古書店で買った歴史書を読んでいた。これは帝国が分裂した直後にバルトで書かれたもののようで、ヒストに借りたものや図書館で読んだものよりも、分裂を直接経験した者にしかわからない悲惨(ひさん)さが生々しく書かれていた。


 「セガスさん国境が見えましたよ」


 ショーンがこちらに向かって声を掛けた。それに反応して俺も荷台から顔を出して前を見る。今馬車が走っている場所は山間(やまあい)の低くなっている渓谷(けいこく)で、道を外れた茂みの向こうには川が流れている。前方に見えている国境の検問所はそこを通っている狭い街道を完全に(ふさ)げるようなかたちで建てられている。


 そのまま何事もなく検問所を通過し、ロウワ―の領内へと入った。この先もしばらく山間の道が続くが、そこを抜けたらイリスまではもうすぐだとショーンが言っていた。恐らくイリスからはロウワ―の首都であるエルパムまで直接馬車に乗っていけるだろう。ヴィオラから旅を始めて1ヶ月ほど、コロン樹海までの半分ほどまで来たということか。ヴィオラを出るときはコロン樹海まで半年ぐらいかかると思っていたが、当初の想定よりもだいぶ早く着けるかもしれない。


 カイスを出てから2日、国境を越えてから1日が経った。ロウワ―の一つ目の街であるイリスに到着にした。馬車から降りて周りを見る。これまでの街は賑わっているという言葉が当てはまったが、ここは栄えているという言葉がしっくりとくる。まだ乗り場からだが、すぐそこに商店街があり行き交う人々の喧噪(けんそう)で耳が休まらない。


 「僕の仕事はここまでですが、ここを拠点に行商しているのでこの街にいる間に困ったことがあったらここに来てください。僕の店です」


 「ありがとうございます」


 ショーンは俺にメモを渡して商店街とは違う方へ去って行った。ヒストもそうだが、今まで泊まった宿の人やギルドの受付の人も皆とても親切にしてくれる。記憶を失って全てのことが初めて体験するのに等しい俺にとって、その優しさは心に()みる。


 俺もその人達みたいに優しさを人に与えられるようになろうと思った。

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