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世界の果て  作者: にこぴ


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12

 バルトの街を一通り見てから夕食を食べ宿に戻った。ベッドで横になってバルトの街を思い返す。


 バルトの王城はヴィオラで見た王城と似ていた。切り出した石を積み上げ、隙間(すきま)漆喰(しっくい)で埋めるという方法で建てられていた。違ったところは壁と屋根の色ぐらいだ。屋根はヴィオラが青で、バルトが赤だった。ヴィオラの王城の壁は全体を漆喰で塗られていて城全体が白かったが、対照的(たいしょうてき)にバルトの王城の壁は石がそのまま見えていた。こうして見比べてみると、ヴィオラの王城はより豪華に仕立てられていて王の権力を感じる。


 「ふう」


 今日は1日中歩いていたのでさすがに疲れた。だがこの2日でバルトをかなり満喫(まんきつ)することができただろう。そしたら明日バルトを出ようか、あまり長居(ながい)しても宿代で手持ちを使ってしまうので、こまめに移動した方がいいだろう。そうと決まったら準備をしなければ。今は荷物がかばんにまとまっていないから、明日起きたら身支度(みじたく)だけで出られるようにしておいた方がいいだろう。


 そう思ったところで急に眠気(ねむけ)がきて(まぶた)が重くなった。今日の疲れにさっき夕食を食べたのが、今ベッドで横になったことで眠気になって一気(いっき)にきた。街を出る準備をしないといけないが、どうしても眠気に勝てそうにない。明日起きてから急いでやればいいかという考えもよぎったが、やはり今日のうちに済ませよう。と思ったが眠気に勝てず瞼が閉じ、俺の意識は暗闇に消えていった。




 幌馬車(ほろばしゃ)に揺られながら後ろに離れていく景色を眺めている。小さくなっていく街の外壁がもう戻らないだろうという気持ちから、思い入れはないはずだが少し寂しさが浮かんだ。この先で待っている景色は一体どんな景色なのだろうか、まだ見ぬ景色を見に行くのが楽しみだ。




 目が覚めたとき俺は(みょう)に落ち着いていた。昨日の疲れが取れてすっきりしたからだろうか。体を起こして伸びをした後に部屋の様子が目に入り、すぐに現実に引き戻された。


 急いでベッドから降りて荷物をかばんにまとめて入れる。時間が差し迫っているわけではないが、余裕を持って行動したいので急いでいる。荷物をまとめた後は俺の身支度を始める。寝癖(ねぐせ)を直して、寝間着(ねまき)から着替える。昨晩はほとんど意識を失うように寝てしまったが、しっかりと寝間着には着替えていたとは、我ながらちゃっかりしている。


 準備が終わり一息つく。宿を出る予定の時間よりも少し早く準備ができたので、最後に忘れ物がないか荷物を確認する。しっかりと忘れ物はなく、昨日買った本2冊と1番下に水晶のようなあの球体も入っている。


 最終確認も終わり部屋を出て、受付で3泊分の料金を払って宿を後にした。朝食を食べるために食堂に入り、料理を待つ間に地図で馬車の乗り場を確認する。料理が届き食べている間、俺はバルトを離れるのが名残(なごり)惜しくてずっとこの街にいたいと思った。まだこの先に3つ国があるためまだ時期尚早(じきしょうそう)な気がするが、この街に住みたいと思った。この街に来るまで気づかなかったのだが、どうやら俺は知識欲がかなりあるようだ。そのため、俺にとってこの街は知識欲を満たすのにこの上ない環境だと言える。


 やはりコロン樹海まで行った後はこの街に戻ってこようか。


 朝食を食べ終え乗り場に来た。周囲を見回してみると、掲示板(けいじばん)のようなものが見えたのでそこに行ってみる。それはやはり掲示板で乗合馬車の情報が張り出されていた。その中で次の目的地であるロウワ―の首都エルパムに行く馬車がないか探してみたが、直接エルパムに行く馬車はないようだ。そしたら途中の街で別の馬車を乗り継いで行こう。首都同士は距離があるだろうから、むしろその方が普通なのだろう。そう考えるとヨシアの馬車に乗れた俺は運が良かったな。


 掲示板で見つけた乗合馬車の中から、シアンとロウワ―の国境を越えたイリスまで行く馬車に乗ることにした。


 馬車は行き先ごとに乗り場が別れているので、自分の行き先の馬車が停まっているところへ行き、そこから好きな馬車を選べる。行き先で別れているのはわかりやすくてありがたい。


 俺はイリス行きの乗り場へ行った。イリス行きの馬車は少なく、他の国内の街へ行く馬車が圧倒的に多い。やはり国境を越えて移動することはあまりないようだ。どの馬車がいいかもわからないので、とりあえず近くで荷物を積み込んでいた人に声を掛けてみる。


 「すみません、イリスまで行きたいんてますけど」


 「乗ります?3ゴールドですね」


 陽気そうな青年は明るい笑顔で受け答えた。


 「はい、3ゴールドちょうどですね。この荷物を積み終わったら出ますんで、ちょっと待っててください」


 荷物の量からして積み終わるまではまだ少しかかるだろう。俺にも手伝えないだろうか。


 「俺にできることはありますか?」


 青年が(ひたい)(つた)う汗を(ぬぐ)いながら顔を上げた。


 「すみません、僕が荷台に積むので置いてある荷物を渡してもらっていいですか?」


 「わかりました」


 地面に置かれている荷物を青年に渡し、青年がその荷物を荷台に積み込む。その繰り返し。


 全ての荷物を積み終わり青年は腰に手を当てて伸びをしている。


 「ありがとうございました、おかげで予定よりも早く出発できます」


 青年がこちらを向き笑顔でお礼を言った。


 「いえ、俺も早く出発できるならそれに越したことはないので」


 「僕は商人をしているショーンって言います。あなたは?」


 「セガスです。今は世界を見て周る旅をしてます」


 「旅人さんですか。いいですね、僕みたいな仕入れを自分でする商人や輸送を生業(なりわい)にしている人でもなければ、生涯(しょうがい)生まれた国から出ることがないひとがほとんどですから。ここに集まる学生たちは別ですけどね」


 そうだったのか、それは知らなかった。俺は旅をすることの楽しさを知っているから、国から出ることがないというのは(いささ)かもったいないと思ってしまう。


 「それじゃあ出発しますんでセガスさん、乗ってください」


 「はい」


 ショーンに言われて馬車の荷台に乗り込む。またこの街に来られるといいな。出発してがたがたと揺れる馬車でまた思った。

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