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世界の果て  作者: にこぴ


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 目が覚めて伸びをする。昨日は一日中図書館にこもった後宿まで走って戻ったが、思いのほか疲れは取れている。今日は書店巡りをするから準備して出かけよう。尾行のこともあり外に出るのは少し怖いが、あまり怖がっていては旅も続けられないので、今日試しで行ってみる。


 書店街は国立学園のものであろう制服を着た学生や、見た目からして研究者だろう人が多く歩いてる。図書館だけでなく書店街も、勉強する人に人気のようだ。俺もその中に混ざって書店の並びを歩く。どの店に入っても色々な本があり楽しめそうだ。とりあえず適当な店に入り本を物色する。図書館ほどの種類はないが、それでも店の中は図書館とはまた違った空気で満ちていて面白い。大賢者や世界の知恵など関係なく気になったタイトルの本を買いたくなるが、荷物になってしまうのでよく考えてから買わなければいけない。(あふ)れる購買(こうばい)意欲(いよく)に一度ブレーキをかけなければ、10冊も20冊も買ってしまいそうだ。


 どの本を買うか決めあぐねてもう昼になってしまう。もう一軒見たら一度昼食を食べに行こう。


 次はどこに入るか考えながら歩いていると、一際(ひときわ)目を引く店があった。看板(かんばん)には古書店(こしょてん)と書かれている。外から店内の様子が見えるが、中に客は入っていないようだが、何か()きつけられる魅力が俺の足を古書店へと導いた。


 古書店の中は客がいないことから生まれる静寂(せいじゃく)で神秘感に包まれていた。その静寂を切り裂くように木製の床を鳴らす俺の足音が店内に響く。古書店というだけあって、棚に並んでいる本はどれも図書館で見たものよりも古く、ものによってはカバーが劣化(れっか)で少し破れているものもある。だがむしろその劣化に不思議な魅力を感じて、手に取りたくなる。


 店は2階建てになっていて、その中に本棚があり古書が整然(せいぜん)と並んでいる。はずだが、本棚がフロアの中心にもあり、店内の本棚がまっすぐ均一(きんいつ)に並んでないのに重ね、棚の中の本の大きさが様々だからだろうか。だがそれもわくわくさせられる。


 古書の並びに心(おど)りながら物色していると、ふと1冊の古書に目が止まった。この店にある古書は、古書に限らず図書館や他の書店にある本は固いカバーが装丁(そうてい)されているのだが、その本はカバーがなく紙を糸でまとめているだけなのだ。他の古書よりも薄いため、本が大量に並んでいると埋もれてしまって見つけづらい。気になったのでその古書を本棚から出してみる。表紙らしい表紙ではないが、一応表紙のようになっている最初のページには「帝国技術総覧」とタイトルが書かれていた。ぱらぱらとページをめくり、内容に目を通す。


 帝国技術総覧の中身は、その名の通り現在では見られない技術についての本で、帝国時代に存在したとされる技術を使用して造られた製品の構造について図解(ずかい)されている。蒸気機関やそれを応用して造られた蒸気鉄道に蒸気船、大量に印刷できる印刷機など便利なものが多く書かれていた。その中に時計の構造についてもあったため、この本は信憑性(しんぴょうせい)が高いかもしれない。この本を買おう。今全部読むことはできないので、買ってゆっくり読むとしよう。


 帝国技術総覧を持ってもう少し本棚を物色してから、もう1冊歴史書を本棚から取って、出入り口前で机に向かって本を読んでいる店員のところへ行き、代金を支払って古書店を後にする。予定通りここで昼食を食べに行こう。そしたら買った本を置きに一度宿へ戻ろうか。


 昼食を食べ買った本を置きに宿に戻った。ベッドに座って休憩(きゅうけい)しながら午後のことを考える。元々今日は1日書店巡りをするつもりだったが、荷物になることを考えるとこれ以上は買わない方がいいだろう。となるとこれ以上書店巡りをしても、あまり意味がない。意味がないからしてはいけないというわけではないが、本を見ていると購買意欲をそそられるだけというのも、なかなかに苦しいのでやめておく。さてどうしたものか、滞在3日目にしてやることが無くなってしまったかもしれない。一昨日(おととい)の夕方に着いて、昨日は1日中図書館にこもっていた。今日は書店巡りをする予定だったが、それも済んでしまった。こんなに早く終わるつもりじゃなかったからこの後のことを全く考えていなかった。いっそ夕食まで宿で休むのもありか、午前中ずっと歩いていたからさすがに疲れた。と思ったが、そういえばまだバルトの街を見て周っていない。せっかく時間があるのなら見て周りたい。疲れてはいるが今少し休んだおかげで体力が回復してきている。これなら午後もずっと歩けそうだ。


 そうと決まったらもう行こう。地図で見たから知っているが、この街は王都なため通ってきた他の街よりも一回り大きい。午後だけでどれだけ見られるかわからないが、昨日と今日で国立学園と図書館、書店街は見たから、そこは省略(しょうりゃく)できる。どこを見るかも決めていないが、王城は見るとしてそこから考えよう。


 ベッドから立ち上がり散策に出る。ひとまず王城に向かって最短ルートで歩く。午前中は書店に興奮していて忘れていたが、尾行はどうなったのだろうか。正直書店巡りしているときは視線を感じなかったが、というよりも興奮していたせいでそれどころではなかったが、周囲を気にしても特に何も感じない。むしろそちらの方が正常ではあるのだが、昨日視線を感じたのは確かだ。ただ今日ここまで何もないとなると、やはり勘違いだったの可能性も高い。実際に誰かが俺のことを尾行していたとして、何もせずにただ見ているだけなら害はないし、勘違いならそれでいい。どちらにせよ俺に害になることはないだろうから(ほう)っておいていいだろう。尾行を気にしていては何も楽しめないので、何もしてこないならありがたい。他の街に行っても視線を感じるようならまた話が変わってくるが、現状は放置しておこう。


 そんな事より今はバルトを楽しまねば、また来れるかもわからないから、今のうちにできるだけ満喫(まんきつ)しておかねば損だ。

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