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まどか

「よっ」

「あっ、先輩」

 茉莉は帰り道、例の少女に後ろから声をかけた。

「なんか分かったか?仕事人のこと」

「いえ・・」

 少女は顔を曇らす。

「お前、名前は?」

「私の名前は、小橋まどかです。中等部二年です」

「何で仕事人なんか探してんだい」

「・・・」

 まどかは表情を曇らせる。

「どうしても許せない奴がいるんです」

「許せない奴?」

「はい、許せない奴です」

「きゃ~、静香様よ」

 その時、女生徒たちの鋭い黄色い声が、二人が通りがかった校門前に響き渡った。静香が、学校前に横づけした、迎えに来た豪華巨大リムジンで帰宅するところだった。

「さすがねぇ」

「静香様ステキ♡」

 女生徒たちがその光景を見て、興奮気味に黄色い声を上げる。この学校の風物詩になっているいつもの光景だが、いつ見てもそれは生徒の視線を集めた。

 静香は、じいやが開けたリムジンのドアから、颯爽と乗り込んでいく。

「ちぇっ、金持ちはいいよな」

 そこにちょうど居合わせたギターを背負ったお京が、それを横目に見て舌打ちをする。静香の家は、超がつくほどのお金持ちだった。よく生徒たちの間では、うる星やつらに出てくるお金持ちキャラクター、面堂終太郎と比較されるほど、そのお屋敷はデカかった。

「ところで、前に殺しの場面を見たって言ってたよな」

 静香のリムジンが去り、校門前の騒ぎが落ち着くと、茉莉が、まどかに話しかけた。その時、その横をお京が通り過ぎる。お京と茉莉の二人は一瞬目を合わせるが、何も言わずそのまま通り過ぎる。五人は普段、絶対に表立って口を利くことはなかったし、一緒にいることもなかった。五人が知り合いであるということは、学校の人間は誰も知らなかった。

「はい、見ました。私見たんです。本当なんです」

 まどかが訴えるように言った。

「顔は見たのか?」

「いえ・・、顔は暗くてよく見えませんでした・・。でも、本当なんです。本当に見たんです」

「そうか・・」

 内心ホッとする茉莉だった。

「分かった信じるよ」

 そして、茉莉はまどかを見て言った。

「ありがとうございます」

「でも、他の人間には言うなよ。頭おかしいと思われるぞ」

「はい」

 まどかは、素直でいい子だった。

「よしっ、あたしも一緒に探してやるよ」

 茉莉が言った。まどかのことをもっと探るためでもあったが、個人的に好感を持ったからでもあった。

「えっ、本当ですか」

 まどかが、目を輝かせてうれしそうに茉莉を見る。

「ああ、だから事情を言いなよ。なんで仕事人を探してんだよ」

「はい・・」

 まどかは、少しためらった後、うつむき加減に語り出した。


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