3. 銀の瞳に降る星は。
青い小さな花が歌うようにそよいで咲き乱れる朽ち果てた神殿の、固く閉じられた扉を見つめながら青玉色の瞳の少女は小首を傾げた。
誰かが自分の名前を呼んだ気がしたのだ。
明るい陽だまりのような淡い金の髪を日差しが彩っていく。
「気のせいね」
首を軽く横に振って気を取り直すと、再び足元の花を摘み取り始める。
数百年も昔に建てられたと言われる古の建物の前にしか咲かない不思議な花。
だが、この遺跡が一体何なのか誰も知らない。
「わっ」
びゅぉ、と風が吹き、驚いてせっかく摘み取ったばかりの花を足元に落としてしまった。
「もう、意地悪な風ね」
笑いながら屈み込んで摘み取ったばかりの花たちを一本ずつ拾っていくと、すぐ近くから、かさ、かさりと音を立てながら何かが歩み寄ってくる音がして、ぎょっとして立ち上がる。
「あ」
視線を上げれば、銀色の美しい瞳をした青年が、呆けたように立ち尽くしこちらをまっすぐに見つめている。精悍な面立ちにほんの少しだけ幼さを残した印象の青年は、戸惑ったかと思えば、迷いなくこちらに歩みを進めはじめた。
自分の目の前にあっという間に到着した彼の、その銀色の瞳に間抜けな顔をした自分の顔が映っていた。
(Fin)
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ごく短い短編小説をお読みいただき、誠にありがとうございました。
袖振り合うも他生の縁と申しますが、日常ですれ違うたくさんの人たちとも、どこかの時代のいずれかの人生で縁があったのかもしれない、と思うとありがたいなぁと思う毎日です。
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