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消耗品たちの八月十五日  作者: 河野靖征
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 十月も後半になると、満洲の北の涯は、一段と寒さを増した。粉雪から大粒の雪に変わりはじめ、十一月に入ると、それは本格的になり、吹雪となって、分哨間に設けられた四角い待避小屋の屋根を埋めた。

 その吹雪のさ中、昭和二十年の運命の年が明けた。

 部隊では、食糧難のなかでのささやかな正月を迎え、それが終わったころが初年兵の入隊時期である。連隊麾下の各部隊は、初年兵を迎える準備で大童となる。

 だが、肝心な初年兵は、十日過ぎても、二十日を算えても、なぜか来なかった。召集の遅れか、それとも各地区に割り当てる員数の都合か、軍隊の事情など兵隊にはわかるはずはないが、噂によると、どうやら延期になったらしいのである。

 その初年兵がやって来たのは二月の初旬であった。特別臨時召集の補充役初年兵たちが、かつて寿たちが雪に喘ぎながら歩いた、あの白銀の曠野を、白い息を吐きながらやって来た。七十万の強兵を誇る関東軍は、史上最強だと信じて疑わない彼らは、隙間だらけになって弱体化している関東軍の穴埋めの補充要員として、急遽、臨時召集されたことなど知るはずのないまま、刑務所のような塀を張り巡らせた軍隊の営門をくぐった。

 寿は、入営した初年兵を視て唸った。その姿は、老若を問わず、寿が応召したころよりも、著しく体躯が劣悪化しているのである。

 寿も、そろそろ三十路に手が届く年齢に達していたが、愕いたのは、この度の初年兵は寿のそれをはるかに上廻っている年齢層で、現役の若い兵隊が圧倒的に少ないことであった。つまり、その殆どが、所謂第二国民兵(二国)と呼ばれる乙種兵役の寄せ集めで、その大部分が、三十代半ばから四十代後半の老兵であった。

 寿は、それらを観念的嗤いを浮かべて迎えるしかなかったが、胸の内では、このような虚弱な(そう)()の老兵ばかり集めて、これをどのように鍛えればいいのかと、戸惑いさえも覚えた。

 現役の古参兵でさえ、過酷な演練には顎を出すのである。それでなくとも教育期間が短縮されているいま、厳しくて烈しい一連の教練にどれほど耐えられるかわかったものではなかった。ましてや、血気盛んな若い古兵たちに内務班でしごかれるだけで、それこそ三日を経たずして潰されそうであった。

 三装の乙(兵服には一裝用から三裝用まであって、三裝の乙とは、どうにか着るに耐えられる程度のもの)と称される貧相なボロ軍衣を纏った老兵を見れば、誰もが愕きすら忘れて、肌に寒気を覚えたにちがいない。そして、これら各中隊に配属された初年兵たちは、当然ながら有働の属する中隊にも入っていた。

 本来ならば、戦地へ動員されているはずの暴れ者の有働が残されたのは、転属の二日前に砲兵隊と乱闘を起こしたために、出発日のときには重営倉へ入っていて、有働の身替わりが出て行ったお蔭で残留となったのである。それも、どういうわけか、黄色い羅紗の星が一つ増えていた。

 だがこの男、二つ星の一等兵に進級しても、素行は相変わらず改まらなかった。

 初年兵の一通りの入営手続きが終わったその日の午後、有働の内務班では、戸惑いと緊張で困惑した顔の初年兵を前に、初年兵掛が気勢を上げていた。

 この初年兵掛はぐうたらだが、学・術ともずば抜けて優秀で、しかも、他の古参兵の誰よりも、暴力にかけては人一倍気合いのかかった四年兵の上等兵であった。

 初年兵掛上等兵は、「気をつけ」「休め」を何度か繰り返しかけて、手にしている木銃を床に勢いよく突いた。

「注目」

 初年兵たちは、一斉に初年兵掛上等兵へ顔を向ける。

「これから俺が言うことをよく聞け!」

 と、これからが楽しみとばかりに、古参兵特有の陰険な眼を、初年兵に見据えた。

「今日からのお前たちは誰のものでもない。この連隊の営門をくぐった瞬間に、個人の人格を剥奪された国家の所有物となったのだ」

 初年兵掛は、木銃を床に一突きして、得意顔に言った。

「この意味がわかるか」

 初年兵たちは、初年兵掛の顔を見つめて黙っていた。

「ん。いまはわからんでいい。すぐにその意味がわかるときが来る。だから、今日と明日の二日間は特別扱いをしてやる。だが、それ以後は、特別な計らいなどないぞ。なぜなら、お前たちには覚えなければならんことが山積しておる。まず軍人の必須である軍人勅諭がある。これは、いわば兵隊の掟集のようなものだが、そのほかには、典範令然り、内務令然り、部隊内外における礼式及び学・術科等々然りだ。まだまだそのほかに、両手両足の指を折っても算えきれんほど覚えなければならんことが山ほどある。その軍隊の規則礼式を、お前たちの戦友殿によっく教えて貰え。内務班では、いいか、たとえ一日でも自分より古い兵隊には古兵殿と敬い、関東軍の光輝ある古兵殿に対しては絶対的服従をしなければならん。文句は一切許されんぞ。その上で、お前たちは、兵隊としての(おの)々(おの)の教練を一日も早く習得することだ」

 戦友とは、一般には、戦場での兵隊間を指して言う場合が多いが、本来の戦友とは、初年兵の右隣に起居する古兵のことである。

「いいか、俺は一度しか言わんからよく聞いておけ。あとで古兵に質問されて、わかりませんは一切通らんぞ。わかったな!」

 初年兵たちは佇立したまま黙っていた。

 初年兵掛の木銃が、怒声よりも先に、床板が割れんばかりの音を響かせた。

「返事をせんか!」

 初年兵たちは、一斉に声を張り上げて返事を返した。

「よし。古兵殿に声をかけられたら、いまのように明瞭な声で返事をしろ。気安く地方語を使ったり、甘い顔でヘラヘラと気を弛めると、眼の眩むようなビンタが飛んで来るぞ。軍隊では、何々であります、というように、すべて軍隊用語で対応しろ。わかったな!」

 初年兵たちは、また声を張り上げた。

「よし。今日と明日の二日間は、お前たちの戦友となる古年次兵がお前たちの世話をする。その要領と動作をよく視て、頭ではなく、肚で覚えるんだ。そのあとは、お前たちがすべてやらなければならん。少しでもヘマをすると、これもビンタを張られるぞ。今日は、お前たちはお客さんであるから、このくらいにしておく。尋ねたいことや、わからないことがあれば、いまのうちに、しっかりと戦友殿に教わっておけ。最後にもう一つ。各自寝台に装具を下ろす際には、必ず戦友殿に官姓名を名乗って、俺が教えたとおりの着任の申告をしろ。よし。それでは速やかに、各自の寝台に装具を下ろせ」

 初年兵たちは、自分の名前が記されている寝台を探し求めて、オロオロと散った。

 その動作を、ストーブにかじりついている古参兵たちが口々に嘲った。

「なんだ、ありゃァ。おっさんばっかじゃねえかよ」

「無敵関東軍もこりゃ危ねえぞォ」

「おい初年兵掛さんよ。そのおっさんたちをよろしく頼むぜ。俺たちの足手纏いにならねえように、こってりとした教育をして差し上げるんだぞ」

 初年兵掛は、ストーブの群れに向かって赤い舌をペロリと出した。

「前島四年兵殿、こいつらは二三日は大事なお客さんでありますから、鄭重なおもてなしをお願いしますよ。てーちょーなおもてなしをね。ちょっとでもチョッカイを出されると、あとで自分が班長殿に叱られますです」

 同年兵の前島にニヤリと笑うと、手にしている木銃で床板をしたたかに突いた。

「いいかてめえら、今日と明日はおとなしくしてろよ。お客人にちょっとでも手を出しやがったら、この(ばん)(ごく)上等兵さまが黙っちゃいねえからな!」

 初年兵掛は、得意気に、また赤い舌をペロリと出した。

「ええぞ、ええぞ、板石班長、その調子でな、俺たちの分までそいつらをうーんと可愛がってやれ!」

 同年兵の朝倉上等兵が囃し立てると、ストーブを囲んでいる古兵たちがゲラゲラと笑った。

 有働は、そんなことなど無関心に、大鼾で寝ていた。

 その横へ装具がドサリと下ろされて、

「陸軍二等兵有島忠吾であります。古兵殿、よろしくお願いします!」

 と、破れ上がった声が落ちて来たから、愕いた有働は、眼を丸めて跳ね起きた。

「あァビックリした。お前、いきなりでかい声出すんじゃねえよ」

「すみません」

 初年兵は、不動の姿勢でぼそりと答えた。

「お前、有島って言うのかい」

「そうであります」

 有働は、「ふーん」と、珍しいものでも見るように初年兵をしげしげと見つめた。

「それにしても、随分老けた(つら)だな。お前、何歳だ?」

「三十六歳であります」

「三……そうか……まァかけろよ」

 そう言って、有働は寝台に顎をしゃくったが、初年兵は、板石上等兵の視線を気にして、素直に従っていいものかどうか迷って立ちつくした。

「遠慮なんか要らねえよ。俺もお前と同じ補充兵で、お前よりたった一年古いだけだ。あのお方のように、兵隊の神様っていうほどのものじゃねえよ。俺は有働ってんだ。ま、よろしく頼むわ、と言いたいところだが、年上じゃどうしようもねえな」

 と、眼玉をギョロリと剝いて、(くすぐ)るように笑った。

「俺はあの初年兵掛上等兵殿みてえに、人に教えるほど物知りじゃねえんだ。わからねえことがあったら、お前の隣の古兵殿に教えて貰ってくれや」

 と、板石上等兵にわざと聞えよがしに言って、一つ離れた寝台で初年兵の世話を焼いている上等兵に顎をしゃくって声をかけた。

「おい美島、こいつはお前に預けるぜ」

 と、右翼の一選抜で上等兵に進級したばかりの美島に言いつけて、寝台を下りた。

「あの上等殿は、大学出のインテリ様で博学だからな。なんでも教えてくれるよ。ま、適当に仲良くやるんだな」

 と、無責任に同僚に押しつけて防寒外套を羽織った。

 それを美島が呼び制めた。

「おい、どこへ行くんだ?」

「風呂だよ、おふろ。にゅーよく」

 美島が、寝台から飛び降りて、慌てて有働の袖を曳いた。

「今日はお前、うちの入浴日じゃないだろ」

 有働の口髯がニタリと歪んだ。

「だから行くんじゃねえか。それに、この時間帯は空いてるんだよ」

「馬鹿、街の銭湯に行くのとはわけがちがうんだぞ。もし将校や下士官が入っていたらどうするんだ」

「そのときはそのときだ。裸になりゃお前、天皇だろうと陸軍大臣だろうと同じだ。このツラで黙ってりゃわかりっこねえさ」

 有働は、髯面を撫でて声を上げて笑った。

 その有働に、ストーブを陣取っている古参兵たちの輪から、怒声が飛んで来た。

「おい有働。貴様、軍隊の規則をなんだと思っているんだ!」

 ストーブの熱気で、顔を真赤に染めて怒鳴ったのは、先程初年兵掛の板石を囃した朝倉上等兵である。

「また営倉にぶちこまれたいのか、貴様」

 有働は、眼玉をギョロリと朝倉に向けた。

「規則は破るためにあるって言ってたのは、いったいどこの誰だったですかね。ふん、ムショや営倉が怖くて風呂に行けるかてんだ」

「ち、勝手にしろ! やられるのは、どうせお前だ」

 朝倉も、板石も、他の古兵たちも、口を歪めて互いの顔を見合わせて黙ってしまった。こいつに関係すると、いつもろくなことはねえ!

 有働は、古参兵たちの白い視線を気にも掛けずに、

「今日はやけに冷えるな。こりゃまた一積もりするぜ。雪達磨になる前に、早いとこ済ますとするか」

 と、手拭いを肩にかけて勝手に出て行ってしまった。

「いい気なもんだぜ、あの野郎」

 有働の出て行ったあとを睨みつけて、板石が舌を打った。

「放っておけ。へたにかかわると、お前、今度は腕だけでは済まんぞ。いったん暴れ出すと、あの野郎、上官もなにもあったもんじゃねえ。狂った野獣のように兇暴になるからな。おい美島、有働の初年兵の面倒はお前がみてやれ」

 内務掛兵長から言いつけられた美島は、仕方なく、二人の初年兵を引き受ける羽目になってしまった。

 他の初年兵たちは、それぞれの「戦友殿」から内務班の礼式を教わっていたが、当の初年兵掛の板石はというと、これが初年兵教育そっちのけで、仲間とストーブにかじりついていて、素知らぬ顔で談笑していた。

 やがて、初年兵たちの不得要領の慌ただしい一日も終わりに近づき、夕食の飯上げ時限が訪れた。

 二年兵になりたての炊事当番に当たっている先任上等兵の美島が、七名の初年兵を舎前へ集めて、飯上げの要領と心得を説いて聞かせた。

「いま言った要領をよく憶えておくんだぞ。初年兵掛の板石上等兵殿も言ったが、今日と明日は、お前らはなにもしなくていいからな。その代り、俺たちがやることを、細大漏らさずによく見て、肚で憶えるんだぞ。これから一年間、お前たちの後釜が来るまでは、厭でもやらなきゃならんことだからな」

 と、まず言いおいて、

「炊事場では特に気をつけろ。炊事場で、少しでもヘマをやらかしてドジな奴だと睨まれたら、そこへ行くたびにオマンマが喉を通らなくなるほどヤキを入れられるぞ。それから、班に飯を上げたら、今日はお前たちは客人だから特別扱いだが、古参兵の飯は真っ先に盛って、大盛りにしろ。初年兵のお前たちの分は少なくなるが、我慢しろ。少しでも古参兵に不満が洩れたりすると、お前たち全員が一斉ビンタを喰らうぞ。それから、バック返納時には、バックを鏡のように磨いて隅々まで徹底的に点検しろ。米粒一つ、虱の糞ほども汚れを残したりすると、いま俺が言ったとおりだ。炊事場のビンタは内務班とは桁違いに荒いぞ」

 美島の言ったバックとは、飯を入れる容器、つまり、軍隊で謂う食罐の(しよくかん)ことである。兵隊は、階級よりもこのバックの数を何本食ったかで、権力の序列がきまるのである。

 美島がニタリと笑った。

「今日は特別給与だそうだ。お前たちが来てくれたお蔭で、滅多に食えん珍しいものが食えるらしいぞ。よし、いまか飯上げをする」

 言い渡して、初年兵たちを炊事場へ引き連れて行った。


 やがて、内務班の飯台に飯が上がった。

 本来なら、新兵を迎える当日は、赤飯に、尾頭つきの煮魚か焼き魚が給与されて新兵を迎えるのが慣習だが、これは、まだ日本の戦勢が逼迫する以前のことで、戦局非勢となったいまは、糧秣の著しい欠乏事情もあって、このような待遇はなくなっていた。

 しかし、赤飯や尾頭つきの魚は給与されなかったものの、美島の言った滅多に口にできないものが給与された。地方でも口にすることのないノロジカの肉であった。

 不足がちな糧秣を憂慮した連隊長が、新兵の歓迎のためと称して、大々的な狩猟中隊を編成して、ノロジカ狩りを命じた結果であった。

 だが、その給与の大半は、連隊長以下将校の胃袋に納まり、それから炊事場に掠り取られ、中隊では将校以下の下士官と古参兵に掠り取られて、主賓であるはずの肝腎な初年兵には、珍しい肉を味わうほどの量は渡らなかった。初年兵のおかずの食器には、煮崩れたジャガ芋の欠片と、角砂糖ほどに切り刻まれた一人頭三切れ程度の肉片が、出し汁のなかに転がっているだけであった。

 その食器に、初年兵が箸をつけようとしたとき、突然、内務掛兵長の声がかかった。

「二年兵は箸をつけてはならん!」

 と、()めた声に、二年兵以下の兵隊は水を打ったように鎮まり返った。

 内務掛兵長の芝田が、顔色を変えて二年兵の飯台に歩み寄った。

「初年兵はそのまま(きっ)飯(ぱん)してよし」

 芝田兵長はそう命じたが、しかし、初年兵たちは、自分たちの先輩兵の手前、箸をつけずに姿勢を正した。

「おい美島、そこの馬鹿はどうした?」

 芝田兵長が、二つ分の尻がきっかり空いている席を、顎で指して訊いた。

 美島は、その場所を見て、首を捻った。

 その席は、いつもなら、誰よりも先に飯台についているはずの有働の席であった。その有働が、入浴に行くと内務班を勝手に抜け出したまま、どうしたわけか、夕食時限になっても内務班に戻っていないのである。

「お前知らんか?」

 今度は隣の兵隊に訊いた。

「そう言えば、あれから姿を見ていません」

 と、これも顔を横に振った。

「阿呆ったれ! てめえの仲間が帰ってねえってのに、誰も気づかなかったのか!」

 芝田が呶鳴りつけた。

「あの野郎、浴場へ行ったはいいが、それからどこへ消えやがったんだ。誰か、そのあとのあいつを見たものはおらんか」

 二年兵の全員が顔を横に振った。

「あの馬鹿野郎、酒保で、まだ大酒をかっ食らってるんじゃねえか?」

 と、朝倉が口を出すと、

「飯のこんな時間に、酒保には行かねえだろうよ。もしかしてあの野郎、班長に無断で、街に出向いたんじゃねえだろうな? あの野郎のことだ、酒を呑むと、なにをやらかすかわかったもんじゃねえぞ」

 と、前島が横から口を出した。

「まさか、それはないだろうよ」

 芝田が返した。

「あいつは脱柵してまで街に行く奴じゃねえ。やるときゃ俺たちに堂々と宣言して行くよ。それにだ、脱柵しようたって、衛兵の眼があるし、陣地の塀を越えようにも、あいつの体じゃ身軽に越えられねえからな」

「それじゃ、どこへ消えたんだ?」

「それがわかりゃ、苦労なんかするもんか!」

 芝田は、声を吐き飛ばすように言った。

「班長に報せるか?」

 と、前島が、口許を青くした。

「いや、待て。今日は初年兵の歓迎日だ。いま班長に報せると、却って面倒なことになる。それに、あの大食漢が飯を忘れるとは考えられん。仕方がない、もう少し待って様子を見よう。それまでにあいつが戻らなかったら、そのときは……」

「どうする?」

 前島が、芝田の顔を窺った。

「……とにかく、まず飯を食おう。それまでには戻って来るだろうぜ。もし戻って来なけりゃ、日夕点呼までに徹底的に捜すしかあるまい。班長には、それからだ」

 芝田は、自分の飯台に戻りかけて、振り返った。

「喫飯してよし」

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