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へ、へんたいだぁあああああああああ! 史料通り

 アウは口をあわあわと動かし、目を丸くして、次の瞬間。


「いやぁああああああああああああああああああああああ!」


 絹を引き裂くような悲鳴を上げて、アウは一歩下がってしまう。

 対する陸胤は目をギラつかせ、手をわきわきさせ、がにまたで腰を前後に動かしながらアウににじりよっていく。


「さぁアウよ。俺と正々堂々真剣勝負をするのだ! さぁ! さぁ! さぁさぁさぁ!」

「いやぁっー! いやぁっー! いやぁっー!」


 顔を首から耳まで真っ赤にして、悲鳴を上げながら後ろに下がるアウは石に躓き、尻餅をついてしまう。

 アウの、鎧に収まりきらない肉厚で扇情的な臀部が地面の上でやわらかく潰れた。


「ほれほれ何をしているアウ。今は大事な決闘の時だぞ?」

陸胤は腰を円運動させながらさらに接近。


「イヤァアアアアアアアアアアアアアア! はははは、早くしまえ! それをしまえぇえええええええええええええ!」


 涙をぼろぼろながしながらアウは懇願するも、陸胤は不思議そうな顔でアウを見下ろす。


「おいおい何を言っている。人は生まれながらに皆裸。人本来の姿を何故隠す必要がある? それに裸こそ一切の武器を持たず、鍛え抜いた己が肉体のみで戦うという誇らしき姿。俺の格好のどこに問題があるのか、その口で具体的にちゃんと詳しく説明してみろ」

「そ、それはぁ……うぅ、それはぁ…………」

「それはなんなのかなぁ?」

「うぅ……ええっと」


 今のアウは尻餅をついて、お尻をむちっと潰したまま足をМ字に広げている。

全身の肌を桃色に、首から上は朱色に染めて、グスングスンと涙を流す。


 子犬のように震えるものだから、アウの鎧に収まらないスイカ大の超乳が大きく跳ね弾んで、今にも鎧をハチ切れさせてしまいそうだ。


 その姿を全裸で見下ろす陸胤は言いようの無い興奮と高揚感に包まれる。


「そ、それはだな! つまり――!?」


 そんな姿で、アウは気をしっかり持とうと心の中で自らを叱咤して、本来の自分を取り戻そうとする。


 だがその瞬間、目の前のモノが、アウの知識外想定外常識外、まさしく埒外の変貌を遂げる。


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼」


 断末魔のような悲鳴を上げてアウは腰を抜かす。

 すでに尻餅をついているが、腰から下にまるで力が入らない。


「いやぁああああああああ! なんだなんなんだそれはぁああああああああ!?」

「貴様との死闘に昂っているのだ。ぐはははは、さっきまでの威勢はどうした?」

「いやぁん! やめてぇ! やめてぇ! お願いだからもう、もうやめてぇ!」


 涙ながらに顔を歪めて子供のように泣きじゃくるアウ。陸胤はますます気を良くする。


「ふふふ、どうやら処女に俺の槍は刺激が――」

「そのミミズみたいなのしまって気持ち悪いぃいいいいいいいい!」

「射殺せぇええええええええ!」


 陸胤の命令で、周囲の呉兵が一斉に弓矢を射かけ、アウは全身を矢で貫かれた。


「がっ……っ……」


 アウは後ろに倒れ、事切れた。

 幸か不幸か、全身を矢に貫かれた体は呉兵の男達に辱められる事は無かった。

 が、ベトナム最強の戦乙女が見せた怒涛の快進撃はこれで終わりだった。


 ベトナムの英雄チュウ・アウ。


 後世において彼女の死は、河に身投げをしたとか、象に踏まれて死んだなど複数語られるが、それと同じく語り継がれるのがこれ……


 『アウが処女である事を知った陸胤は、アウの前で全裸になり、アウが恥ずかしがっている間に殺した』だ。


 陸胤を変態と罵るか、男の裸程度でパニックになってしまうアウを情けないと批判するか、それは人によるだろうが、ともかく、これがアウの最期であった。


 以後、アウは男性が苦手になってしまった。


 ヴァルハラに来たアウは、話したり戦ったりはいいが、必要以上に男の肌を見たり、例え手や腕だけでも男に触られると、恥ずかしくなってしまうのだ。


 そして最後のギルドをやめた理由は『男の英雄が多数所属しているから』だった。



「はうぅ……はずかしい……」


  

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