表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

10 顛末

 聖クラネス医院の病院長が逮捕された。片桐の主治医であった、あの男である。


 警察の調べによれば、彼は『星の智慧派教会』なる国際的カルトのメンバーであり、院内に勤務する他の信者らと結託。彼らが崇拝する神に生贄を捧げるためだとして、医療認可のない薬物を多数、実態を偽りながら患者に処方していたのである。


 曰くその神とは、人類の夢の奥深くに鎮座する千なる貌を持つもの、外の世界から訪れし邪なるもの、ということだったが警察はおろか世間の大半は、夢現の区別がつかない狂人どもの戯言であるとして殆んど相手にしていない。


 それどころか彼らによって処方されていた薬の大半は、化学的成分がデタラメで睡眠導入剤としてはおろか、向精神薬としてすら機能しない、薬効が皆無に等しい代物であることが後に判明した。


 片桐を含む被害者たちには、事件の全容解明に向けて警察から出頭要請、および精密検査の受診が呼びかけられたが、片桐はこの呼びかけを黙殺した。ならば、夢の中で片桐との逢瀬を重ねたあの少女は、サヤカとは一体何だったというのか。夢に現れる願望の化身、死に別れた猫の生まれ変わり、千の貌を持つという邪の神、あるいは単なる……。


 片桐はそれ以上、何も考えたくなかった。

 また報じられたところによれば、あの医師の主たる逮捕容疑は詐欺罪、私文書偽造、そして動物愛護法への違反であった。


 他ならぬあの医師こそ、野良猫のサヤを殺害した張本人だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ