贅沢彼女
僕には、もったいなすぎるくらい良い彼女がいる。
そんな彼女と僕の間では、とある日課が存在する。それは彼女のビデオ通話によるモーニングコールだ。
ある冬の朝、「ヴッヴー」という携帯のバイブ音でふと目覚める。と言ってもぶっちゃけ音に気がついた程度で目覚めは良くない。それに寒いし。動きたくない。
ちなみにこれは、彼女が何かしらの理由でモーニングコールができない時の保険の目覚ましだ。
僕は咄嗟に頭の上の棚に手を伸ばし、手探りで乗せてあるスマホを見つけ画面をタップ。その後すかさず布団へ手をシュッ。目覚ましを止めた。
「うー寒。もうちょい寝るかな」
すると直後、日課のモーニングコールの着信。何度も聞きなれた音なので朧気な意識の中でも間違えるはずがない。彼女だ。
もちろん出る。先程と同じ動きで画面をタップ。頭の上の方から心地よい声がする。
「おはよー。遅れちゃった」
「おはよう。今日もありがとね。」
「いいよ、毎日楽しいし。」
「うーん、、、、ありが、と」
「ねぇ、なんで寝るの!朝だよ!ほら起きな いと!」
「あと5分だけ」
「ダメ!今日は私の電話も遅れちゃったし
5分も寝てたら間に合わないよ!」
「んー、、、わかったよ、、」
「いや、寝そうじゃん!あーあーあー、寝癖もすごいし、メガネつけたまま寝てるじゃん。壊れちゃうって!」
「んー。じゃ起きますか」
「ん!」
彼女の説得と心地良さに、結局毎朝目覚めは良い。その後は出勤時間に遅れることも無く一日が過ぎた。
やはり、身だしなみから何まで気にかけてくれる彼女は僕にはもったいなすぎるくらい良い彼女だ。