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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第二部 世界から消えた勇者
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第98話

 鍵穴に銀溶液(シルバースライム)のペルペトゥアの触手を入れ回す。カチャリという音が解錠できたことを知らせる。


 軽装なディーターが、盗賊系のスキルを後継者に渡さないことから、ノアは自分で盗賊系スキルの代用方法を考えていたのだ。


「むふふっ。凄いですよ! ペルペトゥア!!」


 しかし、見事に空飛ぶ船へ潜入しただが、何故にこれほど複雑な通路の作りなのか? 【特定】スキルを使っても、上ったり下がったり、部屋を突き抜けたりと、船の構造の問題なのか? 侵入者を混乱させるためなのか? 兎に角、立体的な巨大迷路になって、把握が非常に困難なのだ。


 リオニーも船内に入ってきているが、別のルートを進んでいる模様。もうリオニーがノアの方向を補足するスキルを保有しているのは間違いないが、ノア同様にこの迷路に苦労しているみたいだ。


「駄目だ。焦って頭が働かない。えっと…。上がって、上がって、奥へ、隣の部屋で、また上がって、進んで、下がる?」


 かれこれ一時間以上も船内を行ったり来たり、しかもリオニー以外の追跡者まで入って来た。


 ズラッとレバーとかボタンとか沢山並んだ部屋を通り過ぎる。もしかしたら、ここが船を動かす部屋なのかな? 途中からここまで他のルートに接続する通路が無いことに嫌な予感を覚えながらも進む。


「駄目だ。鍵穴がない」この先に研究室があるのだが、開ける仕組みがわからない。


「別ルートから行くしかか…。へっ!?」


 【特定】スキルによると、リオニーが同じルートを使って、こちらに向かってきている!? 


「あわわっ! ど、どうしよう!?」


 リオニーの感情を【探知】スキルで調べても無感情だ。


 怖い!! 余計に怖い!!


(ノア。諦めなさい。そこで大人しく、待っていなさい!!)


 ひっ!? 念話だ!! しかも…口調が…滅茶苦茶怒ってるときのやつだ!!


 ノアは腰が抜けそうになりながら、船を動かす部屋かも知れない部屋まで辿り着く。


 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 【看破】スキル!! 


 ひぃぃぃぃぃっっ!!!!


 恐怖のあまり、後先考えずに…。船の動力装置を片っ端から操作する。しかし、これの手順は、研究者たちが数年掛かっても解読できなかった動力源の始動手順であった。


 『起動開始シーケンス移行……オペレーティングシステムチェック……ハードウェアチェック…』


 非常警報が、空飛ぶ船の内外から…そこかしこから響き渡る。


 しかし、ノアの頭の中は、リオニーから逃げることを処理するだけでいっぱいいっぱいであった。


「た、助けて!! こ、殺されるぅ!!」


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