第97話
タムリンが予測する運命の時間まで、残り3時間を切る…。
午前0時。レナータが地下30層で消えてしまった原因を突き止めるために、ノアは冒険者ギルドを抜け出そうと考えていた。
ノアは全スキルの使用も辞さない考えだ。【巣魔】スキルで、灰刃狼のアウギュスタを封印すると、ランクAの【隠密】スキル発動する。
【特定】スキルにより、冒険者ギルドの周囲は、複数の何者かに囲まれていたことは把握済みだ。そして、その中にリオニーがいたことも。
ノアの気配が突然消えたため、敵の動揺が【特定】スキルに色濃く反映される。集団でいた者たちは四方に散り、単独でいた者は過去の情報を元に一か八か己の信じた方向へ移動していく。しかし、リオニーは、真っ直ぐに空飛ぶ船…つまりノアの目的地へ走り出していた。
多くの組織がノアが逃亡したと考えているが、リオニーは…レナータの事件を知り、ノアが調査しに行くと考えたのだろう。
うっ…。リオニー…ノアの事を信じ過ぎだよ。
ランクAの【隠密】スキルを看破できるのは、同等以上のランクを持った索敵系や認識系のスキルだけだ。流石のリオニーでも、例え目の前にいようが、ノアを見つけることは出来ないはずだ。
途中で体力回復用の薬草ポーションを何本かがぶ飲みしながら、最短距離で走り続けるノア。しかし、気になるのはリオニー。リオニーもノア目掛けて真っ直ぐに進んでくる。しかも、ノアよりも足が早く、徐々に距離が縮まってきた。
他の組織からも、リオニー専属の尾行者がいるのだろうか? リオニーと同じルートを進んでくる。
20分後、空飛ぶ船へ通じる門に到着する。ここからは複数の門を乗り越えなければならない。
【呼魔】スキルで、銀溶液のペルペトゥアを呼び出す。グルグルとペルペトゥアを腕ごと回し、門の上部へ放り投げた。
ペルペトゥアは、触手を伸ばし門とノアを掴み体を縮める。ノアはその勢いで、門の反対側まで飛び、今度はゆっくりと触手を伸ばして、見事に着地する。
そして走り出しながら、「ふっふ〜ん。流石のリオニーも門を壊すとか出来ないし、追跡もここまでよね?」勝ち誇るように呟くと、リオニーは堂々と通用門から中に入ってきた!?
「ひっ!? やばい!!」
何度か門を突破する。流石に通用門の門番に説明する時間がかかるためか、徐々にリオニーとの距離は離れていく。
が、しかし…。地下30層の研究室へ繋がる建屋が…更地になっていた。こんな短期間に建物を撤去しなければならない程…隠蔽しなければならない程…大きな問題が!? レナータの安否がますます心配になる。
【特定】スキルで地下30層へのルートを探る。驚くべきことに研究室は、そのまま空飛ぶ船の一部として組み込まれていた。そして、地下30層があった場所は完全に埋もれていた。
レナータ失踪の鍵は、あの場所なのか、研究室なのか…。
迷っていても仕方がない。今行ける場所は、空飛ぶ船!!
ノアは再び走り出す。




