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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第二部 世界から消えた勇者
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第91話

「ありがとう…。助かった」


 冒険者ギルドから要請された巡回要員というのが、マルティンたちだった。マルティンたちパーティーは、個々の腕前もそうだが、連携が見事なぐらい上手くなっていた。日々、訓練と実践を繰り返すマルティンたちを相手にしては、ならず者程度では戦いにすらならなかった。


「どうした? 今日はやけに素直じゃないか? …おい?」


 マルティンと喧嘩する気力もなかった。そして、指定の場所までマルティンたちに護衛されながら到着する。


「お兄ちゃん、ありがとうね。巡回気を付けてね」

「あぁ。今度、ゆっくり飯でも食おうぜ!」


 ふとノアが視線を上げると、建設中の建物だと思っていたものが、巨大な船の船底であることに気付く。しっかりと組まれた足場には、落ちたお菓子に群がる蟻のように、作業者で溢れかえっていた。


「あれは発掘された船で、どうやら空を飛ぶ巨大な魔道具らしいんだ。地上に持ち出すだけで、5年もかかったらしい」マルティンが教えてくれた。


「あそこを見てください。ここは特に警備が厳しく、共和国の騎士団が常駐しています。近づいただけで斬り付けられますから、十分ご注意ください」アルテシアさんから注意を受けていると、その騎士団の数人が近づいてきた。


「お前ら!! ここで何をしている!!」


 空飛ぶ船が運用できれば共和国の軍事力は、周辺諸国の中でも群を抜くことになるだろう。だったら人目につかないようにもっと遠くから検問所を設ければいいのに…と、横柄な騎士団に腹を立てたが、ノアは挨拶もそこそこにヴィルヘルム先輩から受けっ取った指示書を騎士団に見せた。


「冒険者ギルドの職員か…。で、後ろの武装した者は?」

「はい。暴漢に襲われていたところを、この冒険者たちに助けられ、ここまで護衛してもらったのです」ぶっきらぼうなノアに変わり、笑顔でレナータが答える。


「では、我らが案内と護衛を引き継ぐ、お前らは帰れ」と、騎士団はマルティンに命令した。


 下心ミエミエの騎士団に護衛されながら、指示書にある現場に到着した。何度も食事に誘われたレナータだが、最後は断りきれなくて困っていると、再調査の依頼主である小太りの紳士マチューに見つかり、こっ酷く騎士団の連中は怒られる。


「君も君だ。男なら…彼女、いや仲間だとしても、助けてやらんと!!」


 ノアも説教に巻き込まれた!? こういうタイプは下手に反抗すると長引く。素直に自分を卑下しながら謝るに限る。それでも30分以上、こっ酷く怒られ、ようやく仕事の話に変わった。


「まったく近頃の若者ときたら…。まぁ、時間もない。話を始めようか。地下30層の研究室に出没していた悪霊を冒険者たちに討伐させたのだが、どうも完全に討伐できていないようなのだ。これはギルド瑕疵担保責任の範囲に相当する。しかるべき対応を迅速に実施してもらわないと、研究が大幅に遅れ、計画の見直しが必用となる。すなわち…莫大な損害が発生する。これ以上言わなくてもわかるね?」

「まずは調査しないことには何も言えません」


 ここからは仕事だ。相手のペースに乗る必用などない。


「むぅ? 助けた礼もそこそこに、よく言えたもんだな。使い魔を従える程度の男に、悪霊を退治した冒険者以上の仕事ができるとは思えんが…。精々頑張ることだ」


 灰刃狼(ブレイドウルフ)のアウギュスタを忌々しげに見つめながら、再調査の依頼主である小太りの紳士マチューは言い放った。

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