第84話
「使い魔を人殺しの道具に使わないせないでください!!」
ノアは叫ぶと同時に、Bランクの【結界】スキルを魔法使いのレナータと剣士のマルティンが入るように発動する。
警告を無視して、切り付けてきた剣士に、灰刃狼のアウギュスタが反応する。低く構えたアウギュスタは、前後の足を使って力を蓄え、剣士に対して体当たりをかました。
剣士は予想以上に吹っ飛び、相手側のメンバーは顔面蒼白になる。
「ここで引っ込んでも、殺人未遂で…鉱山送りだ! やるしかねぇ!!」
それでも引かない新人だが学校を卒業した六人組パーティー。
「すまない。ノア。リーダーの俺が…こんな調子で…」剣士のマルティンが、火蜥蜴の恐怖から復帰すると、魔法使いのレナータも立ち上がる。
火蜥蜴に精神状態を恐怖にするスキルでもあったのだろうか? 今は、そんなことよりも、二人が参戦してくれたことがありがたい。
灰刃狼のアウギュスタは、その名の通り、先程の剣士が落とした剣を咥える。剣を持ったアウギュスタの前では、Gランクの冒険者など赤子も同然だ。
「最後通告だ。武器を捨てて投稿しろ。お前らは学校出てるんだろ? なら、剣を持った灰刃狼の強さは知ってるはずだ!」マルティンは相手の出方を伺いながら慎重に伝えた。
「煩いっ!! やるしかねぇんだよ!!」
斧を持った戦死の少年が、マルティンに斬り掛かる。マルティンは冷静に斧の軌道を読み左へ回避しながら、少年の脇腹を斬り裂いた。
「レナータ!!」とマルティンが叫ぶ。このパターンは、何度も練習していた。レナータの魔法の矢が後衛職の胸に突き刺さる。
「アウギュスタ!! 殲滅!!」ノアもアウギュスタに指示を出す。
練習の成果もあり、敵を圧倒した魔法使いのレナータと剣士のマルティンは、その場に座り込む。
「結局、あいつらの生き残りって、最初にアウギュスタが体当りした奴だけか?」
ノアは首を横に振った。
「体当たりが強力過ぎて、多分…内蔵破裂で死んでる」
「しかし…これ…どうやって説明するんだ? てか、ノアは…どうやって、火蜥蜴を消したんだよ?」
「消してない。勝手に消えた。多分、魔道具の魔力が無くなったんだと思う」
「そっか…。そうだよな」
その後、農村が青子鬼の襲撃により全壊してしまったため、街に帰還して冒険者ギルドに報告した。
青子鬼の緊クエスト発動、農村の壊滅、複数のパーティーが全滅、火蜥蜴の出現、男爵の子息が死亡、そして、報告者がGランク冒険者二名と付き添いの少年。
あり得ないことだらけで、臨時の調査団まで、冒険者ギルドの本部から派遣された。調査結果によれば、ほぼマルティンの報告通りにであったが、火蜥蜴の召喚に使ったペンダントだけは見つけることが出来なかったという。
しかし、現場の残留魔力や状況から見て、火蜥蜴の出現は間違いないと断定された。