表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第二部 世界から消えた勇者
73/243

第73話

 山岳地帯を抜けた先には、故郷のレレ村や商業都市サナーセルがあるため、大森林を抜ける事を選択した。大森林は、王都があるロンゴリア領地の南方を覆い尽くし、隣国のペラルタ王国まで繋がっている。


「だが…大森林の全容は誰も知らない。大森林の奥には複数の守護者がいる。そいつらの縄張りへ入った瞬間に禁忌の聖域だと感じるらしい」と、森の狩人コンラートさんが説明する。


 体力の少ないノアに合わせて、本日5度目の休憩となった。


 ノアは大森林に挑み始めて、何回も救ってくれたダンディーなおじ様たちに感謝してた。

 樹皮に偽装していた猛毒の蛇に気付かず、不意に手を付こうとしたこと。

 列から横にズレてしまったため天然の落とし穴に落下し…運良く腕を掴まれたこと。

 お尻の穴などから体内に侵入する蟻に気付かず…用を足そうとしたこと。


 これだけじゃない。方向感覚の狂う大森林を迷わず進めることや、安全な休憩場所と周囲の監視など…ノア一人では確実に死んでいただろう…。


 そして、1度目の休憩時にブリジットさんが、加工してくれた外套は、大森林の中とても役に立っている。棘のある蔦、不快な害虫、ポタポタと頭上の遥か上から溢れる樹液から身を守ってくれるのだ。


 軽装なディーターおじ様が、羊皮紙の地図を広げる。


「このジメジメとした大森林は、疫病の森と呼ばれ、あと…そうだなノアの歩調に合わせれば、7日程で抜ける事が出来る。だが、病魔の森を抜けたからと言って、厳しい行程は何も変わらない。次の大森林は、魔獣の森と呼ばれ、絶えず魔物たちに襲われることになる。しかし、これでも守護者達の守る奥の禁忌の聖域と比べれば、子供だましみたいなもんだ」


「おい、ディーター? お前、禁忌の聖域へ足を踏み入れたことがあるのか?」と森の狩人コンラートさん。


「あぁ、お前らと出会う前にな」


 二人の話を聞きながら、たった数日の冒険の日々を振り返る。経験や知識は力だ。ノアがこれから生きていく上で何よりも必用な冒険力。


 そして、ノアは決意を口にする。


「お願いします!! ノアを…ノアに冒険の技術を教えてください!! ノアを大森林を出るまででもかまいません。どうか…お願いします…」

 

 ◆◇◇◇◇


 タムリンはハッと我に返った。危うく…リオニーを殺しかけてしまったのだ。


(すまない…リオニー。お前もノアと同じくらい…今の私にとって大切な妹なのに…。私は…何も変わっていない。どうしようもない…屑な人間なのだ…)


「そんな事ないです。私がタムリンの立場なら…同じことをしていました…。私こそ…また友達を守りきれなかった…」


 Cランクの【隠密】スキルを保有し、さらに上位のスキル【絶界】まで使えるノアを探すためには、最低でもCランクの【索敵】スキルが必用なのだ。Cランクでさえ5割程度、可能ならばBランクの【索敵】スキル持ちの手助けがいる。


 しかし、Cランクの範囲は、遮蔽物の有無に関わらず500m以内で魔物の有無が、300m以内なら魔物の種別がわかる程度だ。全く手がかりのない状態では役に立たない。せめてどの街にいるかさえわかれば…。

 

 怒りと焦りがタムリンの心を静かに蝕んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ