第68話
最安値の宿泊代は、1泊朝夕2食付きで銅貨10枚。つまり昼食を我慢すれば、この街ポートリムでの消費は銀貨4枚で済ませられる。
「いらっしゃい。あら、可愛いお客さんだこと」
宿屋に入ると人の良さそうなお婆ちゃんで安心する。
「次の船が来るまでの4泊お願いします」
「4泊ね、銀貨5枚だよ。朝食は5時から9時まで、夕食も5時から9時までで、そこの一階の食堂だよ。それと…部屋には鍵が付いているけど、貴重品は自分で管理するんだよ。責任は持てないよ。あーっとね。部屋は二階の205だよ」
鍵を受け取り部屋に入る。家具はベッドと小さなテーブルと椅子のみのシンプルな部屋だ。ズタ袋を置くと部屋を出て鍵をかける。
「さてと…」
【特定】スキルを発動して、銀溶液のペルペトゥアと白姫狐のカルメンシータの餌となる小動物を探す。
「街の中で使い魔たちに捕食をさせると問題がありそうだよね」
ノアは街の近くにある森で、こっそりとペルペトゥアとカルメンシータを放つ。そして、ノアは大きなノノラの実のなる木に寄りかかり、その様子を見守る。
ここまでの小さな冒険で、ペルペトゥアは予想以上に役に立った。つまり、もう一体、便利な使い魔を使役させるべきだ。
そんなことを考えていると、白姫狐のカルメンシータが不服そうな顔でこちらを見ている。不味い、心が…読まれたのかも…。
船内のハンモックで証明されたのだけれど、ノア自身が【隠密】スキルを使ったとき、使い魔も【隠密】スキルの効果が適用されるのだ。【呼魔】スキルで直ぐに呼び出せるけど、護衛として考えるならば、常時一緒にいる方が良いだろう。
【特定】スキルで見つけた魔物の中から、白浮霊と灰刃狼に目を付ける。白浮霊は霊体であり精神魔法が得意。灰刃狼には、カルメンシータと同じく護衛役となってもらいたい。
問題は2体とも【従属】スキルを黙って受け続けてくれないということだ。
小動物の捕食を終え帰って来た銀溶液のペルペトゥアに【隠密】スキルをかけて、灰刃狼を触手で絡め取らせた。
【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル!
【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル!
【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル! 【従属】スキル!
全く従属できる気がしない!!
やっぱり魔物の中でも最低ランクの銀溶液と違い、【従属】スキルが効果ないというのは、魔力が少ないとか、魔物がダメージを受けてないとか、魔物が怯えていないとか、何かしら条件があるのでしょうか!?
埒が明かない! 【従属】スキルを勇者の【拡張】スキルで、上位スキル【支配】に拡張し、灰刃狼へ発動すると従属は簡単に成功する。




