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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第一部 使い魔店の看板娘
65/243

第65話

「あっ、そうよ、古代の禁忌魔術で勇者から奪ったって言ってたわ。なら、ノアから奪って貰えばいいのよ」


 その回答からノアが勇者スキル持ちだと決定的になる。そして、聖女は首を横に振った。


「その魔術は、約40,000人の魂が必用だった。都市が一つ滅んだのよ。逆に言えば、それだけの犠牲者で済んだの。当時の彼らはとても優秀だったわ。そして、今では再現不可能な術でもあり、使えばノアも死ぬことになるわ」


 ノアはテーブルの上の聖女の手を握った。


「ノアは…どうすればいいの?」

「隠せば…国が…世界が…世界に勇者の存在が知れる前に、ノアを殺そうとするわ。だから、公表するのよ。勇者の復活を…ね。今なら、塔の住民が協力してくれるわ。だから選んで、生きて操り人形となるか、死んで全てを終わらせるか、世界を手に入れるか、世界を滅ぼすか…」


 聖女の目を見たノアは、冗談でないことを知る。そして、泣き崩れるノアを優しく抱きしめる聖女。


「ノア…私は…生きて操り人形を選んだのよ。聖女なら…誰かを助けられると信じていたのに、同じ数までとは言わないけど、誰かが死んでいくのよ。平和を守るために…。辛い、辛いの。だけど…もしもノアが同じ苦しみを…選んでくれたのなら、心に支えが出来るかも知れない。そんな理由で、それを実現させるために、私は幾人もの護衛を犠牲にして…ノアに会いに来たの。酷い女でしょ? 何が聖女よ…」


 きっと聖女様は想像を絶するような世界を見てきているのだろう。そんな世界に…ノアは耐えられるのか…。


「聖女様…時間をください」

「わかりました。ですが…時間がありません。既に塔から漏れた情報が国に伝わっています。白角馬(ユニコーン)の件は、ノアをおびき寄せるために用意された嘘の依頼です。誰も信じないでください。明日の朝までに…。どうか…共に歩む道を選んでください…」


 ノアの泣き顔に優しく手を触れた聖女は、回復魔法をかける。

 優しく温かい魔法のおかげで、充血した目も治り、乱れた心も落ち着きを取り戻した。


 ◆◇◇◇◇


 部屋に戻ったノアは、リオニーと当たり障りのない会話をして、就寝時間まで過ごす。


 ベッドに潜り込んだノアは、屋敷が眠りに包まれるのを待っていた。


 そして、勇者の【拡張】スキルを発動させると、続けて【隠密】スキルを発動する。昔、白姫狐(クィーンフォックス)の寝顔を見ようと頑張ったけど、この方法を使えば余裕だったんじゃないの!? と今更後悔する。【隠密】スキルは【絶界】スキルという上位スキルで発動した。


 スキルブックには上位スキルは掲載されてなかったけど、この方法なら誰も気が付かないだろうという自信があった。多分、今のノアは、誰からも認識されない…はずなのです!!


 護衛たちが見張りをする眼の前で、堂々と下着姿になり寝間着からボロの古着に着替える。それから、誰にも見つかること無く、屋敷を…工業都市ヨレンテを脱出することに成功した。


 最後にリオニーと念話をしたかったけど、「一緒に行く」って言いそうだもん。リオニーを巻き込むわけにも行かない。


 【暗視】スキルにより夜でも安心だし、【絶界】スキルで無敵! と思ったけど、【絶界】スキルは1時間前後で効果を失うみたい。その後は、通常の【隠密】スキルで頑張る。


 街道沿いをテクテクと歩く。しばらくは追跡されることを考えて、街に入らない方が良いかな。だけど、問題は食事だよね。【隠密】を使って、盗むことも出来るけど、「泥棒するぐらいなら死になさい」とか両親に言われそうだよね…。


 【隠密】スキルの効果が切れたとき、ジャラッと金属が擦れる音がした。ポケットに手を突っ込むと、金貨5枚と手紙が入っていた。


 手紙はリオニーからだ。ノアが聖女様に話があると言われた時点で、逃げ出すことを予測していたらしい。ありがとう、リオニー。


 リオニーも異端審問官であり、塔から情報を少なからず聞いていたのかも知れない。きっとノアの事で悩んでたのだろう。ごめんね、リオニー。


第一部 完です!!


第二部からは、温室育ちのノアが大自然や知らない街を一人で冒険します。

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― 新着の感想 ―
[一言] そもそも論として普通なら手に入らない物を手に入れた時点で違法だよね。
2021/05/21 09:38 退会済み
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