第62話
異端審問官の父親とタムリンにガチンコで鍛えられたリオニーの戦闘力は異常なほど高い。
雷を纏う死神の鎌で、ランクBに近い暗殺者を二人ほど瞬殺していた。
「ローガンは聖女様を死守して!!」
リオニーが【聖歌】スキルを発動すると、聖女様も同調するように【聖歌】スキルを発動する。ノアのチートスキルランクに匹敵する聖女様の【聖歌】スキルは、リオニーの力を何倍にも高めた。
「負ける気がしません!! 【糾弾】!!」
【糾弾】スキルにより、背後に隠れていた相手の精神を簡単に破壊する。索敵関連のスキルを持っていないリオニーに、ノアが【特定】スキルで調べ上げた敵の位置や情報を【念話】スキルで送っているのだ。
死神の鎌を持つ右手が動けば【斬首】スキルが発動し、【聖火】スキルで鞭のように炎を操る左手が動けば確実に相手を焼死させた。
聖女様のノアのダブルチートに支援されたリオニーは、護衛三名が加勢に来る前に、暗殺者集団を一人残らず蹴散らしてしまったのだ。
(ノア!?)
(大丈夫よ。2,000m以内に聖女様の命を狙う敵はいないわ)
サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムは、魔法都市ヴェラゼンの学園の出身者で、セレスティーヌ・ヴェラーとタムリンの同級生だ。勿論、セレスの実妹のリオニーのことも覚えていた。
ケルヒェンシュタイナー様は聖女様から事情を聞き、このまま一緒に領都ヴェラーを目指すことになった。
「はじめまして、今は単なる個人として名乗らせて頂きます。レーヴェンヒェルムと申します」
金糸で教会の文様の刺繍が入った真っ白な法衣を纏った聖女様のオーラに、ノアとヒノデリカは生きた心地がしなかった。
聖女様の地位は、国の枠を越えた存在であるため、場合にもよるがアンブロス王国の国王よりも上なのだから…。
ノアは安心する。リオニーがいてよかった。聖女様の相手はリオニーがしてくれている。
リオニーからしても、ノアやヒノデリカに任せてられないと思っていた。
「ならば王都までご一緒させてください。勿論、領都で護衛の増援も必用になりますが」
はい? どーゆーこと!? リオニーに聞きたいが聞けない。会話に入っては駄目なオーラをリオニーが出している…。
(もう、念話使いなさいよ。ノア、完全にパニックになってるわね…)
(ご、ごめん…。で、聖女様と一緒に王都行くの?)
(それがね。聖女様も白角馬の件なのよ)
「今日は工業都市ヨレンテを治める貴族様にお屋敷に泊まるわよ」
「えっ!? 心が休まらない…」ヒノデリカが泣きそうな声で言う。
「敵の標的がノアにも及ぶ可能性があるのよ。情報が少なすぎるの!!」
「それは…リオニーが…ねぇ…」
「な、何よ、後先考えずに斬り伏せたとでも言いたいの!?」
「その通りじゃない…」




